MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.05.28
NURSING LIBRARY 書評・新刊案内
北浦 暁子,渋谷 美香 著
《評 者》竹股 喜代子(亀田総合病院看護部長)
“ほめるプリセプターシップ”がわかる
いつ頃からか,就職説明会の会場で学生さんから「プリセプター,やっていますか」と質問されることが多くなった。「どのような(内容の)新人教育をしていますか」ではなく,「どのように教えてくれるのですか」ということのほうが関心事なのだなと当初思った覚えがある。新人のナースは不安でたまらない。臨床に立った時,自分が何もできないことを知っているからだろう。それにしてもそのような認識を持つのはある意味エライと思う。自分のことを振り返ると,「できなくて当たり前」と思っていた。いや,もしかしたら,「何かはできる」と信じていたフシがある。この根拠もなき自信がどこから出てきたのかわからないが,学生時代,あるいは新人時代にあまり否定されないで過ごしてきたからかもしれない。このことがいいのか悪いのか,少なくとも自分の新人時代に「ナースの脱落」が問題になった覚えがない。今の新人が自分の現在の力に不安を感じ,必要以上に自信がない状態で初めての臨床の場で適応できずに脱落すること,それと同時に一生懸命「指導した」先輩ナースがこの「失敗」に責任を感じ自信を失ってしまうこと。この両方ともが理不尽に思う。
このような現実の問題を前にして,本書は「どう行動したらよいか」というきわめて実践的な「解答」を示してくれた。著者が看護管理・継続教育研修などでインストラクターとしてあるいはコンサルタントとして関わった経験から,プリセプターシップの実践現場での実際の悩み,問題をとりあげて,「どう考えるか」からさらに「どう行動するか」というところまで示しているところが本書の特徴だ。悩めるプリセプターを支援しながらプリセプティを職場に適応させるプロセスを具体的な事例を通して考えさせてくれる。「信頼関係」と「承認」という,いかなるサポーターが普遍的に必要とする条件は簡単な実践ではない。しかし,これらの事例を読み込んでゆくとそれがどのような言動で培われるのかが自然にわかってくる。実践を裏付ける根拠・理論がコラム欄に解説されていたり,文献を紹介してくれたりと,理解を深めるための情報が付け加えられているのもありがたい。臨床で学習サポートに悩むナースたちに読んでもらう価値がある。
全編を通じて,プリセプティに対してこんなに「ほめること」が必要なのかと思ったが,新人ができないことを1日10回指摘されると,はじめの6か月の間に「あなたは……できない」と1200回も繰り返し言われることになる,との指摘に妙に納得してしまった。1200回以上もほめることはないだろうから。
B5・頁116 定価2,310円(税5%込)医学書院
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