医学界新聞

2007.05.21

 

MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内


イラストで学ぶ
心臓ペースメーカーStep by Step

庄田 守男,小林 義典,新田 隆 訳

《評 者》石川 利之(横浜市立大准教授・循環器内科)

難解な知識をわかりやすく図で説明

 これは,今までにないペースメーカーの教科書である。図を用いることにより,ペースメーカーを理解するうえで必要な事項がきわめてわかりやすく解説されている。

 最近はペースメーカーの進歩により,十分に理解していなくともペースメーカー治療を何とか行えてしまうようになってきている。しかし,これはきわめて危険な状態であるとも言える。トラブルに対応できないばかりでなく,知らないうちに危険な治療を行って,しかもその自覚すらないということも起こりえる。ペースメーカー治療の習得がむしろおろそかになってきていることを危惧している。しかし,「ペースメーカーの基礎」は決して「やさしいペースメーカーの知識」ということではない。そして,ペースメーカーの基礎をわかりやすく説明することは決して容易なことではない。

 本書の内容は基礎的だが,高度であり妥協はない。しかし,実にわかりやすく書かれている。基本的には1頁に1項目で,図が中心に据えられている。この図が非常に優れており,難解な事項も容易に理解できるようになっている。解説の文章は補足的なものであるが,これも読みやすく短い文章で端的に解説されている。読者はストレスを感じることなく,短い時間でペースメーカーについて習得できるようになっている。

 アメリカで行われた不整脈学会(Heart Rhythm Society)の会場の書籍展示売り場で本書(Cardiac Pacemakers Step by Step,An Illustrated Guide)を初めて見た時に,その斬新さに驚きを感じたのであるが,今回待望の日本語版が完成した。書籍展示売り場で,著者の1人であるS. Serge Barold先生が購入した人たちの一人ひとりの本にサインをしており,人だかりができていたことを思い出す(それで,原書を手に取って見た次第である)。訳者の序において,東京女子医大循環器内科の庄田守男先生が,同じくアメリカの会場の書籍売り場で本書を購入し,日本語版作成を思い立った経緯について書かれているが,私も同じことを感じていた。そして,ペースメーカー治療について精通した東京女子医大と日本医大を中心としたスタッフにより,本書の価値を損なうことのない翻訳がなされ,すばらしい日本語の教科書ができた。翻訳にあたられたスタッフの努力に敬意を表したいと思う。

 「本書がペースメーカーアレルギーのよき治療薬になることを祈っています」と,訳者の序は結んでいるが,本書は,ペースメーカーを苦手としている人だけのための本ではない。これからペースメーカー治療をはじめようとしている人から,すでにかなりの知識と経験を持った人まで多くの人に役立つ稀な教科書である。若いスタッフやコメディカルの人たちに難解な理論を説明するのに手間取っていたベテランにも救世主となるであろうと思われる。ペースメーカー治療に携わる多くの人たちに本書を推薦したい。

A4変・頁352 定価8,400円(税5%込)医学書院


臨床と病理よりみた
膵癌類似病変アトラス CD-ROM付

山口 幸二,田中 雅夫 著

《評 者》中尾 昭公(名大大学院教授・消化器外科学)

症例の診断・治療・最近の知見を深く検討

 このたび,医学書院より出版された,山口幸二先生・田中雅夫先生共著の『臨床と病理よりみた 膵癌類似病変アトラス』を一読する機会に恵まれた。前著『外科臨床と病理よりみた 小膵癌アトラス』に引き続きその姉妹編として出版されたものである。近年,各種画像診断の進歩によって膵腫瘍が発見される機会が増加している。もちろん,いかに膵癌を早く発見,診断し,治療に結びつけるかが最重要課題であるが,膵癌の早期発見をめざす場合,時として膵癌との鑑別診断に難渋する症例も経験される。

 本書では膵腫瘍としては稀な腫瘍も含めて,これらの病変を体系的にまとめたアトラスとして完成されている。一般に外科医は手術に対しては興味を持つが,画像診断や地味な切除標本の取り扱い,整理,病理診断に対してはその結果をうのみにするだけで興味が薄いといえるかもしれない。しかし本書においては,九州大学臨床・腫瘍外科学(旧第一外科)教室の,初期診断から最終病理診断そして治療に至るまで,臨床外科医として一貫した診療姿勢に徹すべきであるというポリシーが窺われる。

 本書は各種画像診断や病理所見がカラフルに掲載されており,非常に読みやすく構成されている。そして,それぞれの症例に対して診断・治療・最近の知見も含めて深く検討がなされている。また,図の説明は英文で記述され,症例一例ごとに英文抄録も掲載されており,外国人留学生の参考書としても利用可能と思われる。膵疾患の診断と治療を志す医師にとっては必読の書といえるが,消化器内科・外科の医局・研究室ではぜひとも本書を蔵書とされることを推薦する次第である。

A4・頁168 定価17,850円(税5%込)医学書院


骨・関節X線写真の撮りかたと見かた
第7版

堀尾 重治 著

《評 者》鳥巣 岳彦(九州労災病院長/大分大名誉教授)

600点を超える画像の細密画を収載

 この本は1986年の初版出版以来好評で,改訂作業が重ねられ,今回第7版が上梓された。X線検査の方法とその意義,それに画像の読み方に重点がおかれている。身体の各部位ごとに,新たに書き下ろされた約180点を含む600点以上の著者自筆の細密画が挿入されており,視覚的にも理解しやすい。

 まず,20年にわたり貴重な執筆を継続され,臨床医や放射線技師の育成に力を注がれた著者の堀尾重治氏の熱意とご努力に,敬意を表したい。

 骨・関節疾患の画像検査の中で,X線撮影は必須のしかも最も基本的な検査であることは医師であれば誰にでも理解できる。しかし,日常診療で頻繁に行われる検査で...

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