スーパーローテート時代の研修医当直事情
初期研修の当直で何を学ぶか
寄稿
2007.03.12
【特集】
スーパーローテート時代の研修医当直事情 |
初期研修の当直で何を学ぶか |
2004年の新しい臨床研修制度導入に伴い,研修医のアルバイト当直は原則禁止となり,少なくとも制度面では,研修医にとっての当直は研修プログラムの一貫として位置づけられるようになった。しかし,スーパーローテート研修の中で当直をどのように位置づけるのかということについては,各研修病院の裁量に任されており,その対応は施設により大きく異なっている。本紙では「初期研修における当直」をテーマに特集を企画。大学病院,臨床研修病院の研修担当者や,研修医の生の声を取材した。
当直研修の法的位置づけ
医師法第16条の2第1項の臨床研修に関する省令では,研修医の当直について以下のように規定している。「休日・夜間の当直における指導体制については,電話等により指導医または上級医に相談できる体制が確保されるとともに,研修医1人で対応できない症例が想定される場合には,指導医または上級医が直ちに対応できるような体制(オンコール体制)が確保されていること。また,休日・夜間の当直を1年次の研修医が行う場合については,原則として指導医または上級医とともに,2人以上で行うこと」
また,新しい臨床研修制度では救急分野での3か月の研修が規定されているが,その一部を当直研修で行うことも可能とされている。例えば救急部門での研修を1か月行った後,他科ローテート中も定期的な救急当直を行うことによって,2年間トータルで3か月相当以上の救急分野での研修を行ったと見なすことが認められている。
初期研修における当直研修は,以上の法令の範囲内で各施設の判断に委ねられている。
研修医当直を行わない施設も
PMET(財団法人医療研修推進財団)ホームページ(URL=http://www.pmet.or.jp/)では,臨床研修病院の募集要項を見ることができる。研修プログラムの中での当直の位置づけについて,多くの施設が詳細な説明を行っている。あくまで,上記ホームページ掲載(2006年12月現在)の情報に基づくものではあるが,以下にその傾向を整理する。PMET掲載の833施設のうち,研修医の当直について特記事項を記しているのは約350施設。この中にはごく少数ではあるが,研修医当直を行わないと明記している施設がある一方,多くの施設では研修医当直について日数や勤務形態についての情報が公表されている。
研修医による当直を行う施設では,「研修医による単独当直を行わせない」「上級医師とともに救急外来を行う」など,単独当直には消極的な施設も多い。一方で,単独当直を行わせる場合も,単独当直に入る条件を定めたり,オンコール体制など,医療安全面での十分なサポート体制の整備を強調するケースが多かった。
救急外来当直に限定?
新しい臨床研修制度では2年間で多くの診療科を回るスーパーローテート方式が導入されたが,ローテート中の当直はどのようにシステム化されているのだろうか。PMETからは,ローテーション先の各科に任せるという施設がある一方,プライマリケア能力習得など,教育効果を重視した当直研修を実施する施設を確認することができた。例えば「他科の研修中であっても当直は救急外来または救急病棟で行われ研修医の当直は週に1,2回程度」(岡山大)など,スーパーローテート中も,月数回の当直はすべて救急外来,もしくはERでの勤務という形態をとっている施設が多数あり,2年間の初期研修を通じて,プライマリケア能力の向上を意図した当直研修がプログラムされている様子をうかがうことができる。
また,「当直研修カリキュラムとして1年目の9月頃より,副当直(同時コール4回,ファーストコール8回)を実施し,規定回数クリア後に救急科科長と研修委員長との面接にて本当直入りの可否の判断を行う」(立川相互病院),「1年次より当直・外来研修を開始する。当直・外来研修は指導医の見学から始め,研修医の診療の関わりは,副当直・当直と到達度にあわせてステップアップしていく」(前橋共立病院)など,研修の進捗度によって当直勤務を判断する施設もあった。
これらのシステムからは,当直が研修医にもたらす教育効果を重視する意図がうかがわれるが,こうした施設の中でも,年度内での単独当直を目標とするところから,原則として初期研修中の単独当直は行わせないとする施設まで,その到達目標には大きな違いが見られた。
研修医当直の現状について本紙編集室がまとめた情報は以上である。次ページからは研修病院の臨床研修担当者,研修医に,研修医当直の実態と考え方について現場の声を聞いた。
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