MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
2007.01.15
MEDICAL LIBRARY 書評・新刊案内
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金澤 一郎,北原 光夫,山口 徹,小俣 政男 総編集
《評 者》高久 史麿(日本医学会長・自治医大学長)
広範な領域をまとめて医学的知の集大成
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その内容を見てみると,I巻のIの「社会の中の内科学」の見出しが目にとまった。確かに医学は理系の学問の中では社会との接点が最も幅広い学問分野であり,その中で内科学が中心であることは周知の如くである。その意味で内科学書の最初の項目として,このような幅広い問題を取り上げたことは高く評価されるべきであろう。
次のIIの「内科学の進歩」では最近の医学の進歩を,内科学を中心にまとめて紹介している。このことも本内科学書の新しい試みであると考えられる。
次に系統ごとの疾患の項目を見てみると,本内科学書の各系統の最初に感染症を持ってきたこと,しかもその内容が従来のわが国の内科学書よりもより充実したものになっていることが注目された。近年民族間の国際的な交流が盛んになり,SARSや鳥インフルエンザ等の新たな感染症の国際的な広がりが大きな話題になっていること,医療の安全と関連して院内感染症が問題になっていること等の昨今の状況を考えると,この試みは時宜を得ているということができるであろう。また各系統の疾患の記載の最初には「理解のために」という項目が必ず設けられ,各系統の疾患の総論的な事項が紹介されている。内科学という広範な領域を一冊の本でカバーしようとするならば,このような系統ごとの総論的な記載は当然なされるべきである。
私はこの書評を書くに当たり,総編集の方々による本書の序文を読ませていただき,皆様方のこの内科学書に対する意気込みと同時に,完成までのご苦労を十分に汲み取ることができた。
本書の完成に貢献された諸氏のご尽力に敬意を表する次第である。
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池田 健次,宗村 美江子 編
《評 者》木下 祐加(虎の門病院・後期研修医)
毎日の臨床の場で活きる親しみやすい肝疾患の入門書
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この本は,日本における肝疾患の主要テーマである,ウイルス性肝炎・肝硬変・肝がんに焦点を絞り,それぞれについて診断と治療をわかりやすく示しています。
ひととおりさらっと目を通すだけで大まかな流れをつかむことができるので,これまで肝疾患に関わったことのない人の入門書として最適です。例えば,ウイルス肝炎におけるマーカーの評価方法,肝がんの各種治療方法など,学生時代に一度は習っていても実際にどうしたらいいかわからない時には,この本をぜひ手にとってください。
一方で,「どうしてそうなるのか」という科学的根拠が所々に散りばめられていて,肝臓を専門にする予定の人が読んでも,また新たな知識が得られると思います。最近話題のインターフェロン治療についても,その適応と治療成績がわかりやすくまとめられていて,患者さんからの質問に答える際に役立ちます。ガイドライン,症例報告,臨床試験などがふんだんに盛り込まれており,見た目の親しみやすさから想像できない充実した内容になっています。
虎の門病院の「肝臓科」スタッフによってつくられた最新の肝臓ハンドブックを,ぜひ毎日の診療の場で活用してください。
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木田 厚瑞 著
《評 者》川上 義和(KKR札幌医療センター院長)
在宅酸素療法の重要知識を要領よくまとめた実践書
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第2版では疾患の一般的な解説を避け,また原理など基礎的な事項は最低限に抑えられており,実地的なマニュアルとして一新された。コンセプトが明快に書かれていること,在宅酸素療法の関連領域――つまり包括的リハビリテーション,医療連携,医療倫理とインフォームドコンセントを踏まえたうえで,在宅酸素療法の効果など実際的な記載となっている。
第1版ではこれら前段階の記述が少なく,機器の構造や取り扱い方法が比較的多かった印象があるが,第2版ではこれらの機器に関する項目は少なくなっている。医療職としては,構造などは常識として知っていればよく,実際的なことは業者が行うという理由からであろう。「NOTE」として知っておいたほうがよい知識やメモが随所に要領よくまとめられているのも,新しい点である。 重点的に書かれている第2版
第1版は22章からなり,これに統計資料,様式などが参考資料として追加されていた。第2版ではこれら参考資料はよく取捨選択されて章の中に記載されていて,読みやすいように工夫されている。総ページ数は増えているが章の数は15に減っており,それだけ項目と内容を吟味して絞られた結果であろう。
とくに重点が置かれているのは,在宅酸素療法における日常生活の評価と指導,急性増悪への対応,薬物療法などであろう。急性増悪をどう発見するか,専門施設への紹介のタイミングなど詳細に書かれており,薬物療法の重要性も適切に評価されている。これらはいずれも実地医家の参考になることばかりである。 新しい領域について書かれている
在宅人工呼吸療法(NIPPV)が広がりを見せているなか,これについても詳しく書かれているのが第2版の特徴である。病院から自宅へ移る基準,コンプライアンス,長期NIPPVの導入基準など,日常の管理に役立つ記載である。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)についての知見が増えているところから,在宅酸素療法の観点からこれら新しい知見を積極的に紹介して,実地診療に役立てるのに貢献している。実際,在宅酸素療法の導入基準などはCOPDの研究から生まれたものであり,また患者の多数がCOPDであるところから,COPDについての知見は基礎として重要である。 将来の課題について問題提起がある
種々の問題点が将来の課題として残るなかで,前回の診療報酬改定で在宅酸素療法の点数が大幅に引き下げられたのは,残念なことであった。木田教授は,将来の課題として医学的問題,社会的問題,機器に関する問題,研究方法の問題,患者要望の問題など多くを挙げている。深い理解と広い実践があって初めてなされる指摘ばかりである。 誤ったドグマがない
在宅酸素療法については,誤った,あるいはエビデンスに基づかないドグマを強調する向きが一部にはある。木田教授の豊かな見識は本書でも遺憾なく発揮されており,このようなドグマのかけらも見受けられない。安心してお薦めするゆえんである。
以上,第2版の書評を試みた。本書を医師ばかりでなく多くの医療職(看護師,呼吸療法士,理学療法士,作業療法士,保健師,栄養士,薬剤師,検査技師,救急隊員など)に強くお薦めする次第である。
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石津 日出雄,高津 光洋 編
池田 典昭 編集協力
《評 者》近藤 稔和(和歌山県立医大教授・法医学)
医療現場で必要な法医学の知識を収載
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法医学は,単なる基礎医学ではなく,臨床医学と同様に応用医学に大別され,法治国家においては必要不可欠な学問である。本書において「法医学とは法律上問題となる医学的事項を検査,研究し,それによって問題点を解明して,法的な解決に寄与することを目的とする医学である」と定義されるように,決して法医学は犯罪捜査のための一手段ではない。現代の医学・医療の場において,外因死,突然死や医療事故等,法医学が担う役割は,一昔前とは比較にならないほど大きくなっている。したがって,法医学の講義で,評者は学生に対して「どのような分野を専攻しようとも,医師である限りは法医学的知識を持つことは医師としての最低限のマナーである」と,常々言っている。そういう観点からみると,本書は「生体に関する法医学」と「死体に関する法医学」の章立てがあり,法医学が単に「死」を対象とする医学ではないことを示している。第5版が発行されてから6年の月日が経ち,第6版では各分野についての基礎知識から最新の知見にいたるまで網羅されていることはもちろんのこと,各項目の始めにあった「学習目標」に加えて「観察のポイント」または「検査のポイント」が新設され,それぞれの項目における重要な点がより明確にされている。さらに,欄外コラムとして「SIDE MEMO」も新設されるなど,学生にとって非常に親しみやすく,使いやすい教科書となっている。また,学生のみならず,研修医や臨床医にとっても,実際の医療現場で法医学の知識が必要となった時や,死亡診断書(死体検案書)の書き方に迷った時の助け船としても重宝するものと思われる。月並みではあるが,このように本書は,法医学については医学生,医師を問わず,必携の一冊である。
最後に本書を執筆された先生方のお名前を拝見するにつき,恐れ多くも書評を書いている自分にハタと気がついたところで,筆を擱くこととする。
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聖路加国際病院内科チーフレジデント 編
《評 者》市村 公一*(昭和大・精神医学)
内科研修のポイントとその重要性がわかる良書
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全国の25の病院を回って,誰が入っても本人の努力の如何に関わらず一定のレベルの実力をつけさせる研修が,特定の医師の努力によるのでなく,病院のシステムとして出来上がっているのは,ごくわずかな病院しかないと感じたのだが,その最大の秘訣がこうした「耳学問」の徹底にある。それを裏付けるかのように,意外にも聖路加国際病院では研修医控え室にごくわずかな本しかなかった。「『ワシントンマニュアル』は指導医の頭の中に全部入っている。研修医は自分で読まなくても指導医に聞けばいい」とは沖縄県立中部病院の元院長で群星沖縄プロジェクトリーダーの宮城征四郎先生の名言だが,繰り返し耳学問で教わり,かつ多くの症例を通じて教わったことを実地に経験を重ねることが,落ちこぼれを作らない研修医の最も肝心な点だと痛感した。
このたび出版されたこの『内科レジデントの鉄則』は,「当直で病棟から呼ばれたら」「内科緊急入院で呼ばれたら」そして「病棟で困ったら」と研修医が直面する3つの状況ごとに発熱や血圧低下,肺炎や脳梗塞,そして輸液や不眠時の対応といった症状・病態にどう対応するかがまとめられている。各項目ごとに忘れてはならないポイントが鉄則として示され,具体的に症例を挙げてQ&Aによってその鉄則がなぜ重要なのか,実際にどう考えるのかが示されている。このQ&Aこそ,まさに聖路加国際病院の日常の姿であり,臨床研修の要諦だと思う。
聖路加国際病院の,そしてこの本の強みは,卒後3-4年目のレジデントが自分たちが1-2年目に躓いたポイントを思い出しながら研修医に質問を投げかけられる点にある。その結果この本は,研修医にとってはまず最初にマスターすべき内科研修医のポイント集であり,同時に研修指導にとっては指導のポイントとそのやり方を学ぶ最適なテキストとなっている。
優れた研修病院への第一歩は,指導医が毎朝毎夕研修医の顔を見るたびにこの本の鉄則を質問として投げかけるところから始まるだろう。
*「臨床研修の現在-全国25病院 医師研修の実際」(2004年,医学書院)の著者
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臨床疫学 EBM実践のための必須知識 第2版
福井 次矢 監訳
《評 者》尾藤 誠司(国立病院機構本部 臨床研究推進室長)
EBMと臨床研究をつなぐ臨床疫学の必須知識を収載
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十数年前,本書の原書を先輩医師から紹介され,衝撃を受けたことを思い出した。本書の特徴的な点は,現場の医療者の視点から疫学の大系をまとめている点,すなわち,臓器別かつ想起的な知識ではなく,「異常」「診断」「リスク」という,総論的かつ実際的な切り口で,診療プロセスに関する考え方の本質を突きつけている点にある。“診断する”ということはどういうことなのか,“危険がある”ということはどういうことかということについて,本書は雄弁に語りかけてくれる。
“EBM=臨床試験結果に追随する医療スタイル”という誤解が正直まだ少なくない。本書を通読することで,“臨床試験で有意差のある治療は正しい治療である”というデジタルな世界と,臨床疫学,そしてEBMが真に描いている世界は,本質的な部分で大きく異なる,むしろ真逆である,であるということが理解できるであろう。医療行為が患者アウトカムに与える影響は,常に定量的なものであり,白黒をはっきりつけられるものではない。だからこそ,医療者は自らの医療判断に批判的であり,定量的に物事を査定する必要がある。本書は,すべての医療者が自覚するべきその考え方を明確に示したパイオニア的な書であると同時に,今なお最もわかりやすく,そして新しい。
例えば,この第2版においては,医学総説の書き方を大きく変えた「システマティック・レビュー」に関するチャプターが付加されている。近年における医学論文のスタイルの変化に合わせたこのような改訂は,本書を初めて手にする人にとっても,旧版を持っている人にとっても非常に魅力的なアップデートである。
臨床疫学は,EBMと臨床研究をつなぐ太い橋である。EBMの隆盛にも関わらず,わが国においては,現場の視点に立ち,現場の患者ケアにおける臨床判断を支えるような情報をもたらす臨床研究はまだまだ数が少ない。EBMに興味を持ち,EBMワークショップを経験し,Up to Dateやコクランの情報を基に患者ケアを行うことの醍醐味を知った若い医療者が次に手に取るべき本は本書である。EBM体験者が本書を読み込み,その何割かは,自分が抱えている臨床上の疑問に対して,自分でアクションを起こすべきだと考えるであろう。また,その何割かは,その疑問を解くために必要な臨床研究とそのデザインについて考えることを信じたい。
B5・頁272 定価4,935円(税5%込)MEDSi
http://www.medsi.co.jp
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