理学療法ジャーナル Vol.60 No.6
2026年 06月号

ISSN 0915-0552
定価 2,090円 (本体1,900円+税)

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栄養診断としての骨格筋量評価 up to date

 2018年に発表された栄養診断の国際基準である Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)criteriaにおいて,骨格筋量が重要な診断項目として採用された.同時に多職種による栄養診断の必要性が示され,理学療法士にも骨格筋量の正確な評価が求められている.本特集では,骨格筋量評価の意義と実践を最新知見に基づき整理し,身体計測,生体電気インピーダンス(bioelectrical impedance analysis:BIA),超音波,computed tomography(CT)など各測定法の特性や精度に影響する因子を概説する.さらに臨床実装上の課題を病態別に整理し,適切な評価選択と解釈の指針を提示する.

栄養診断としての骨格筋量測定法の選択と臨床的意義──GLIMの骨格筋量評価ガイダンス論文を中心に 前田圭介
 低栄養は患者の転帰悪化に直結する重要な病態であり,早期診断と栄養介入が不可欠である.国際的に提唱されたGLIM基準は標準的診断フレームワークとして注目されている.特に骨格筋量減少の評価がその中心的要素の一つを担う.本稿では,客観的評価機器をはじめとする骨格筋量評価法の特徴と限界を概説し,日本の臨床現場におけるエビデンスギャップと課題を整理した.さらに今後の研究と標準化の方向性について展望を提示する.

身体計測──精度,補正,日本人に適したカットオフ値を中心に 石田優利亜
 Global Leadership Initiative on Malnutrition(GLIM)基準において骨格筋量減少の評価は重要であるが,二重エネルギーX線吸収測定法や生体電気インピーダンス法などの機器測定には実臨床で制約が多い.本稿では,下腿周囲長を用いた身体計測による骨格筋量評価について,測定特性,体格や浮腫による影響,補正方法,日本人集団におけるカットオフ値の違いを整理し,GLIM診断における実践的な活用上の留意点を概説する.

生体電気インピーダンス法──病態別にみた測定誤差の具体例と対策 甘粕康太
 生体電気インピーダンス法(bioelectrical impedance analysis:BIA)は骨格筋量を簡便に評価できる一方,体水分分布の影響を受ける推定値である.本稿ではBIAの測定原理と誤差要因を整理し,体水分量増加および減少を伴う病態における骨格筋量評価の解釈上の注意点を概説した.BIA測定値は細胞外水分比(extracellular water/total body water:ECW/TBW)や臨床背景と合わせて総合的に評価する必要がある.

超音波──測定方法や測定部位,年齢や性別,人種を考慮したカットオフ値の標準化,骨格筋量評価を超えた筋質評価の重要性 赤澤直紀
 超音波画像診断装置を用いて測定された骨格筋量減少を判別する大腿四頭筋の筋厚のカットオフ値について本邦から有用なものがいくつか報告されているが,Global Leadership Initiativeon Malnutrition(GLIM)基準での活用までにはそれらカットオフ値の妥当性の検証が待たれるところである.GLIM基準における中等度および重度低栄養を区別するための骨格筋量減少の大腿四頭筋の筋厚のカットオフ値の作成が急務である.

Computed tomography(CT)を用いた骨格筋評価──基本知識から実践応用まで 原田剛志
 近年,computed tomography(CT)を用いた骨格筋解析の研究は,国際的に増えている.さらに,最近では,解析ソフトウェアに artificial intelligence(AI)による自動骨格筋解析の技術も導入され,評価の精度や時間的コストが改善されつつある.しかしながら,その一方で,AIのエラー,カットオフ値,臨床実装などさまざまな課題も残っている.本稿では,CTを用いた骨格筋評価の基本から実践までを述べてゆく.

実践編 どのように骨格筋に介入するか──多職種連携による評価と介入への応用例
脳卒中 長野文彦

 脳卒中患者では,低栄養が骨格筋量低下を助長し,機能回復を制限する重要な要因となる.骨格筋量増加をめざすには,運動療法による筋刺激に加え,十分なエネルギー・蛋白質摂取,嚥下・口腔機能への介入,薬剤管理を含めた多職種連携が不可欠である.低栄養に着目した包括的介入は,骨格筋量の維持・増加を通じて日常生活活動の自立度を高め,退院時の生活機能や転帰の改善につながる.

運動器 池本大輝,他
 運動器疾患では,外傷や手術に伴うストレス反応,疼痛・腫脹による機能不全(関節原性筋抑制)が局所の骨格筋萎縮を引き起こし,ADL制限の原因となる.超音波画像装置を用いた筋厚評価によるリスク抽出,多職種連携による栄養介入を基盤に神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:NMES)を併用した運動療法が早期機能回復を促進する.

循環器 小川真人
 心不全患者における低栄養や骨格筋量減少は予後を著しく悪化させるが,その評価は病期や体液貯留によって複雑化する.本稿では,心不全に特有の筋消耗の病態生理を概説し,理学療法士が臨床現場で直面する「体液貯留」という課題に焦点を当てる.各骨格筋量評価法の特性と限界を解説し,骨格筋量・質評価指標の有用性を示す.さらに,急性増悪期と回復期・安定期で異なる栄養・運動療法の介入戦略を提案する.

呼吸器 宮崎慎二郎
 呼吸器疾患患者では,低栄養,骨格筋量減少や筋力低下といった骨格筋障害を高頻度で生じ,呼吸困難,運動耐容能や予後に悪影響を及ぼす.栄養評価として骨格筋量や筋力の項目が含まれており,栄養評価として理学療法評価も活用される.運動療法の効果を高めるためにも,栄養評価および栄養療法とのコンビネーションが呼吸器疾患には欠かせない.

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特集 栄養診断としての骨格筋量評価 up to date
企画:井上達朗

栄養診断としての骨格筋量測定法の選択と臨床的意義──GLIMの骨格筋量評価ガイダンス論文を中心に
前田圭介

身体計測──精度,補正,日本人に適したカットオフ値を中心に
石田優利亜

生体電気インピーダンス法──病態別にみた測定誤差の具体例と対策
甘粕康太

超音波──測定方法や測定部位,年齢や性別,人種を考慮したカットオフ値の標準化,骨格筋量評価を超えた筋質評価の重要性
赤澤直紀

Computed tomography(CT)を用いた骨格筋評価──基本知識から実践応用まで
原田剛志

■実践編 どのように骨格筋に介入するか──多職種連携による評価と介入への応用例
脳卒中
長野文彦

運動器
池本大輝,他

循環器
小川真人

呼吸器
宮崎慎二郎


■Close-up 褥瘡と理学療法──予防から管理・治療への展開
理学療法士が知っておくべき褥瘡の基礎知識
植村弥希子

褥瘡に対する理学療法の実際
吉川義之,他

褥瘡管理における理学療法学と看護理工学の融合
幅 大二郎,他


●とびら
運動のススメ
細井 匠

●脳画像を多職種連携に活かす! 脳卒中診療編②
脳梗塞 中大脳動脈M2閉塞
本間敬喬

●COVID-19パンデミック後の変革 [最終回]
研修会事業におけるアップデート
田篭慶一

●臨床理学療法に活かす生理学 [最終回]
身体機能に加え全身状態の改善を見込んだ運動療法のための代謝生理学
飯田有輝

●計測力を磨く──簡易機器で始める臨床研究入門③
関節運動の計測──電気角度計(flexible electrogoniometer:FEG)
小野武也

●臨床実習サブノート おさえておきたい! カルテのみかた②
大腿骨近位部骨折術後
松本浩実,他

●報告
人工股関節全置換術後急性期の歩行における下肢協調性の変化
池澤智輝,他

●紹介
パーキンソン病のベッド動作を評価する──量的および質的評価の両視点から
谷口星来,他

●学会印象記
第12回日本スポーツ理学療法学会学術大会──地域社会のなかのスポーツ理学療法
田城 翼

第12回日本小児理学療法学会学術大会──子どもと家族が主体となる理学療法へのパラダイムシフト
小松勝人

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