理学療法ジャーナル Vol.60 No.7
2026年 07月号
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- EOI : essences of the issue
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EOI : essences of the issue
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特集 ERAS時代の大腿骨近位部骨折ケア
超高齢社会のわが国では大腿骨近位部骨折が年間約25万例に迫り,医療・介護の両面で社会的課題となっている.本特集では,術後回復強化(enhanced recovery after surgery:ERAS;イーラス)プロトコルを軸に,プレハビリテーションから超早期離床,認知症・multimorbidity合併例への対応,費用対効果,DX活用による退院後フォロー,FLSによる二次骨折予防と地域包括ケアまでを一連の連続体として提示する.理学療法士が周術期チームのコアメンバーとして担うべき役割を,第一線の執筆陣とともに具体的に示していただく.
大腿骨近位部骨折の社会的インパクト 萩野 浩
大腿骨近位部骨折は高齢者のADL・QOL・生命予後を著しく損ない,医療費・介護費の両面で大きな社会的負担を生じる.本稿では,国内における本骨折発生率の推移と将来推計,ADL・QOL・生命予後の悪化要因を整理し,急性期医療から長期介護に至る費用構造を概説した.さらに,骨折後の介護保険利用増加や家族介護者の負担の実態を示し,予防・早期治療・包括的支援の重要性を論じた.
大腿骨近位部骨折とERAS 田中真矢
大腿骨近位部骨折に対する術後回復強化(enhanced recovery after surgery:ERAS)は,多職種連携による包括的周術期管理であり,在院日数短縮やせん妄などの合併症減少に加え,術後疼痛の緩和や身体機能・QOLの改善にも寄与することが報告されている.理学療法士は,骨折型や術式に基づくリスクを医師と共有し,術後早期からの安全かつ積極的な運動療法を推進することで,ERASの目的である患者の早期回復と社会復帰の実現に貢献する重要な役割を担っている.
ERAS時代の大腿骨頸部骨折におけるプレハビリテーション──理学療法士の役割と実践 比護文也,他
大腿骨頸部骨折患者に対するプレハビリテーションは,手術待機期間に惹起される急速な身体機能低下を抑制し,術後回復強化(enhanced recovery after surgery:ERAS)の核心である早期離床と合併症予防に寄与する.本稿では,理学療法士が術前に実施すべき評価,筋力プライミング,術前離床,家族指導の実践内容と,pericapsular nerve group(PENG)ブロックを併用した疼痛管理が術前介入の質と可及的離床を高めるメカニズムを概説した.さらに,多職種連携と介入標準化の必要性について論じる.
認知症合併例におけるERAS 実践と課題 野口裕貴,他
大腿骨近位部骨折患者において約40%が何らかの認知機能障害を有しており,臨床現場において認知症合併症例は「例外」ではなく「標準ケース」となっている.認知症合併大腿骨近位部骨折患者はせん妄発症リスクが高く,せん妄は予後不良因子となるため,その予防・管理は術後回復強化(enhanced recovery after surgery:ERAS)介入の重要項目となる.認知症合併患者は病型や重症度により呈する症状が多様で個別性が高く,個々の特性を把握したうえでの対応が必要不可欠である.
Multimorbidity併存とERAS戦略 南里佑太
大腿骨近位部骨折では多疾患を併存している(multimorbidity)患者が多く,multimorbidityは死亡率上昇,術後合併症,ならびに術後身体機能低下の要因となり得る.われわれは,大腿骨近位部骨折の患者に対応する際に頻繁に遭遇する併存疾患について病態を理解し,対応策を知ることが重要である.本稿では,大腿骨近位部骨折の患者における代表的な併存疾患を述べ,術後回復強化(enhanced recovery after surgery:ERAS)実施時の留意点と対応策を記述する.また,ERASの実装に必要な多職種での介入とその効果についても記述する.
大腿骨近位部骨折の費用対効果 八木麻衣子
本稿では,医療経済学的評価手法である費用対効用分析について,質調整生存年数(QALY)および増分費用効果比(ICER)の基本概念を整理し,リハビリテーション医療への応用可能性を概説した.特に大腿骨近位部骨折を例に,先行研究の知見と,臨床データを用いた実践的な分析手順を示した.費用対効用分析は,患者の主観的健康価値を反映しつつ,限られた医療資源の適正配分を検討するための重要な手法である.
大腿骨近位部骨折術後のテレリハビリテーション──エビデンスの変遷と社会実装への展望 柘植孝浩
大腿骨近位部骨折術後の「ケアの分断」を埋めるテレリハビリテーションは,デジタルトランスフォーメーション(digital transformation:DX)技術を活用した包括的介入へと進化している.筆者らのシステマティックレビューでは身体機能への臨床的効果は限定的であったが,近年のアプリなどを用いた介入は,その有用性が示されている.本稿では,国内の社会実装に向けた課題と,今後の戦略的なデータ構築の必要性を提言する.
二次骨折予防プログラムと地域包括ケア 加藤木丈英,他
超高齢社会において大腿骨近位部骨折後の二次骨折予防は急務である.術後回復強化(enhanced recovery after surgery:ERAS)による急性期管理の最適化と,骨折リエゾンサービス(FLS)を通じた多職種連携(MDT)の統合が不可欠となっている.本稿では国際基準のKPIに基づき,理学療法士が担う早期離床と運動療法の役割を軸に,地域包括ケアと診療報酬を活用した日本独自の普及戦略,特に普及の最大の障壁である「非受診」を打破するため,2024年度診療報酬改定による薬局連携の活用や,理学療法士によるリハビリテーション場面での視覚的教育,入院中の薬剤投与といった具体的な戦略を提示し,地域包括ケアシステムのなかでの多職種介入の成功要因を明らかにする.
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特集 ERAS時代の大腿骨近位部骨折ケア
大腿骨近位部骨折のERASと理学療法
村永信吾
大腿骨近位部骨折の社会的インパクト
萩野 浩
大腿骨近位部骨折とERAS
田中真矢
ERAS時代の大腿骨頸部骨折におけるプレハビリテーション──理学療法士の役割と実践
比護文也,他
認知症合併例におけるERAS──実践と課題
野口裕貴,他
Multimorbidity併存とERAS戦略
南里佑太
大腿骨近位部骨折の費用対効果
八木麻衣子
大腿骨近位部骨折術後のテレリハビリテーション──エビデンスの変遷と社会実装への展望
柘植孝浩
二次骨折予防プログラムと地域包括ケア
加藤木丈英,他
■Close-up 日本理学療法学会連合版徒手筋力検査法
日本理学療法学会連合版徒手筋力検査法の概要
藤澤宏幸
検査方法の実際
中山恭秀
●とびら
ミッドライフ・クライシスと向き合う
浅野大喜
●脳画像を多職種連携に活かす! 脳卒中診療編③
脳梗塞内頸動脈閉塞
本間敬喬
●発達性協調運動症 理学療法士の実践ガイド[新連載]
DCD(発達性協調運動症)の基礎的な理解
中井昭夫
●計測力を磨く──簡易機器で始める臨床研究入門④
バランスの計測
嶋村剛史
●臨床実習サブノート おさえておきたい! カルテのみかた③
脊椎圧迫骨折
片岡英樹,他
●原著
視床出血患者における皮質脊髄路走行領域の損傷度と下肢の運動機能との関係
澤島佑規,他
●報告
脳卒中片麻痺者における新たな歩行評価指標 Gait Degree Index(GDI)の臨床的妥当性の検証
森 嘉裕,他
人工股関節全置換術後早期における2ステップテストに関連する術前因子の検討
齊藤倫汰楼,他
●学会印象記
第9回日本循環器理学療法学会学術大会──循環器理学療法の現在地とミライ
鈴木大輔
●私のターニングポイント
「伝わらなければ意味がない」──研究の挫折と教育現場が教えてくれたこと
新島 剛




