理学療法ジャーナル Vol.60 No.5
2026年 05月号
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- EOI : essences of the issue
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EOI : essences of the issue
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特集 目標設定について考える──何のためにそれをめざすのか
私たち理学療法士は疾患のみを対象とするのではなく,臨床現場では患者やその家族・生活背景を全人的に捉える必要がある.また,それらを落とし込む教育においては時代に即した人材育成に関する目標設定が求められる.本特集は,国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)を指標とした目標設定やこれまでの研究報告やガイドラインを踏まえて,理学療法士と患者・家族の目標の相対性や患者背景へのかかわり方の留意点など臨床に即した内容だけでなく,理学療法士育成にかかわる卒後教育まで,幅広い視野で“目標設定”について考える機会となるだろう.
目標について考える──臨床的な「意味」を取り戻すための諸理論と重要な論点 江草典政
リハビリテーションにおける「目標設定」は単なる事務手続きではなく,患者の行動変容を促す重要な治療介入の一つである.目標を定めることは対象者の行動の方向性を定め,そこに向かうエネルギーを引き出す.目標設定および意思決定にはさまざまなツールがあり,近年では shared decision making(SDM)が注目されており臨床上重要なものとなっている.
脳血管疾患──病期別の目標設定の考え方 芦澤遼太,他
脳血管疾患では病期に応じた理学療法の目標設定が重要である.急性期は予後予測に基づき患者や家族と目標を共有できるようにすること,回復期は共同意思決定を通じたSMART原則に沿った具体的な目標を患者や家族と共同で設定すること,生活期ではヘルスリテラシーに応じた支援を通じ,患者自身が目標を立て日常生活のなかで行動変容できるように促すことが重要である.本稿では各病期における目標設定の要点を概説する.
神経筋疾患 パーキンソン病──病期が進行するなかで「その人らしい生活」を支える 佐藤和命
パーキンソン病は進行性の神経変性疾患であり,運動症状と非運動症状の双方が日常生活を制限する.理学療法士は,病期に応じた症状特性を理解し,国際生活機能分類の視点から「できること」と「したいこと」の両面を踏まえたうえでの目標設定を行う必要がある.また,薬剤調整や多職種連携を通じて患者・家族と協働しながら目標を立て,達成していくことが求められる.
整形外科疾患 変形性膝関節症──患者の期待を踏まえた痛み・機能・活動を統合した理学療法 小田翔太
変形性膝関節症(knee osteoarthritis,以下,膝OA)および人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)術後における理学療法の目標設定について,近年の研究知見を踏まえて概説した.膝OAでは「生活機能の維持」が,TKA術後では「活動・参加の再獲得」が目標となる.特にTKA後は,遷延性術後疼痛,ADL制限,手術への期待との不一致が満足度に影響するため,患者の期待を踏まえた現実的な目標設定と,痛み・機能・活動を統合した理学療法が重要である.
循環器疾患 心不全──心不全ステージ分類と心臓リハビリテーションの時期的区分から 五十嵐康太,他
心不全患者は心拍出量の低下に伴う諸症状から身体活動量が減少し,筋力低下やフレイルを招きやすい.理学療法では,心不全のステージや心臓リハビリテーションの時期的区分に応じて安全な離床,日常生活動作能力維持・向上,運動耐容能の改善および疾患管理能力の獲得を目標に介入を行う.再入院時には増悪因子を早期に把握し,セルフケア支援を通じて再発・再入院予防を目的とした介入を行うことが必要である.また,多職種連携や在宅支援を通じて社会的因子に対する介入を行うことも重要である.
呼吸器疾患 慢性閉塞性肺疾患──病期,国際生活機能分類,エビデンスの視点から 佐々木康貴
慢性閉塞性肺疾患患者に対する呼吸リハビリテーションでは,病期の特性を踏まえた目標設定が不可欠である.本稿では国際生活機能分類に基づく多面的評価,SMARTを用いた具体化,エビデンスや自施設データの活用,さらに患者・家族と理学療法士の目標の相違を調整する過程について症例を通して示した.意味のある目標設定は質の高い呼吸リハビリテーションの提供に寄与する.
脳性麻痺児──子ども・家族との対話から共創する目標設定 阿部広和
脳性麻痺児の理学療法において,親が望む目標と理学療法士が描く目標の乖離,歩行の象徴的価値の存在など,目標のすれ違いが生じる構造的要因を紐解く.さらに,自己決定理論,子どもの権利,本人の意思を尊重する主体的なアプローチについて解説する.最後に症例を通じ,子ども・家族との対話から「その子らしい目標」を共創する実践的な方法を提案し,読者と一緒に子どもの目標設定について考えていきたい.
血液がん──働き盛り世代における目標設定と理学療法実践 武清孝弘
血液がん治療では,強力な化学療法や造血幹細胞移植を要し,長期にわたる治療過程のなかで倦怠感,筋力低下,QOL低下などが顕著にみられる.運動療法は安全かつ有効であり,身体機能維持や疲労軽減に寄与することが報告されている.治療フェーズごとに,廃用予防から社会復帰,さらには治療抵抗期におけるQOL維持へと,目標を柔軟に転換することが求められる.本稿では,働き盛り世代の血液がん患者における目標設定と,理学療法実践の実際について解説する.
卒後教育──目標を問い直し続け,ともに学び合う関係を築くために 松田 徹
少子高齢化に伴う医療・介護ニーズの複雑化により,理学療法士には領域横断的な実践能力が求められている.本稿では,卒後教育を組織と個人の目標を共有・調整する学習プロセスと捉え,目的と目標の区別,As Is-To Beの枠組みに基づく目標設定のあり方を整理した.さらに,採用から人事評価に至る運用上の方略と,教育する側・される側双方の課題と限界を示し,対話を基盤とした持続可能な卒後教育の方向性を提案する.
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特集 目標設定について考える──何のためにそれをめざすのか
目標について考える──臨床的な「意味」を取り戻すための諸理論と重要な論点
江草典政
脳血管疾患──病期別の目標設定の考え方
芦澤遼太,他
神経筋疾患 パーキンソン病──病期が進行するなかで「その人らしい生活」を支える
佐藤和命
整形外科疾患 変形性膝関節症──患者の期待を踏まえた痛み・機能・活動を統合した理学療法
小田翔太
循環器疾患 心不全──心不全ステージ分類と心臓リハビリテーションの時期的区分から
五十嵐康太,他
呼吸器疾患 慢性閉塞性肺疾患──病期,国際生活機能分類,エビデンスの視点から
佐々木康貴
脳性麻痺児──子ども・家族との対話から共創する目標設定
阿部広和
血液がん──働き盛り世代における目標設定と理学療法実践
武清孝弘
卒後教育──目標を問い直し続け,ともに学び合う関係を築くために
松田 徹
■Close-up 理学療法士自身の健康を守る
身体的健康管理
松垣竜太郎
精神的・心理的健康管理
和田三幸
理学療法士の健康を守り,長く働き続けるために──職場環境,健康経営,キャリアデザインの視点から
岡原 聡
■インタビューシリーズ
臨床の神髄を継ぐ──先達の知と技
冨田昌夫 先生
●とびら
理学療法を支える感性
永井豊美
●脳画像を多職種連携に活かす! 脳卒中診療編 [新連載]
脳梗塞 中大脳動脈M1閉塞
本間敬喬
●COVID-19パンデミック後の変革⑧
養成校におけるアップデート
小島 翔
●臨床理学療法に活かす生理学⑤
自律神経の作用を理解し理学療法に活かす神経生理学
森本陽介,他
●計測力を磨く──簡易機器で始める臨床研究入門②
筋力の計測
加藤宗規
●臨床実習サブノート おさえておきたい! カルテのみかた [新連載]
総論 カルテのみかた
平田和彦
●報告
健常者における橈骨頭の動態評価の再考──超音波診断装置を用いて
西野雄大,他
●学会印象記
第13回日本運動器理学療法学会学術大会
𠮷田智子
第11回日本糖尿病理学療法学会学術大会
四宮涼太
●私のターニングポイント
回復期病棟の立ち上げと,患者としての闘病経験を経て
一瀬 誠
●臨床のコツ・私の裏ワザ
脳卒中片麻痺者の短下肢装具における下腿部ベルト留め具の工夫──自己装着性向上に向けた選択肢の拡張
金子達哉




