助産雑誌 Vol.79 No.5
2025年 10月号

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 「なんとなく気になる」「マイナートラブルが多い」「関係をつくりにくい」「妊娠や育児に前向きではない」……そんな妊産婦さんは,もしかしたら,トラウマをもっているのかもしれません。
 性暴力や子ども虐待,パートナーによる暴力など,「ジェンダーに基づく暴力」を経験したことのある女性は少なくありません。統計的には,2人に1人が暴力を経験しているとも言われます。そのような経験はトラウマとなってその人の人生に大きな影響を与えることがありますが,時間をかけて回復(リカバリー)できるということが,近年の研究で分かってきています。
 トラウマをもつ女性にとって,妊娠・出産は,性器への接触を含む医療ケアを受け,自身の養育体験を想起する機会であることから,トラウマの影響を受けやすい,危機的な時期です。DVなどの暴力を受けやすい時期でもあり,新たなトラウマをもつことにもなりかねません。しかし同時に,支援者との接触が増えることから,リカバリーへの道を歩み出す好機ともなりえます。
 トラウマについて支援者に伝える女性は稀かもしれません。本人が自覚していないこともありえます。しかしすべての女性に対して「傷つき・トラウマをもっているかもしれない」という前提でケアを行うことで,妊娠・出産がトラウマの再現ではなく,癒しや回復につながる可能性が生まれます。といっても,実は特別なケアはそれほど多くありません。目の前の女性に向き合い,尊重するケアが基本となります。日頃のケアを見直す一つの考え方として,トラウマについて,リカバリーについて,学んでみませんか。

ISSN 1347-8168
定価 2,090円 (本体1,900円+税)

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特集 すべての女性は傷ついている──トラウマ・リカバリーと妊娠・出産

ジェンダーに基づく暴力(GBV)とトラウマ・リカバリー
キタ幸子

トラウマをもつ女性への基本的な対応
キタ幸子

性暴力サバイバーが妊娠・出産で経験すること
白井千晶

性暴力サバイバーへの妊娠・出産ケアのポイント
杉本敬子

■【身体にアプローチするケア】
身体にアプローチするソマティック・エクスペリエンシング(SE)TM療法の可能性
永松未生

ソマティック・エクスペリエンシング(SE)TM療法を用いた妊産婦のケア
荒井英恵


■対談 中村佑子さん×石田月美さん
母であることの喜びと苦しみと,“母すること”の可能性
本屋B&B「私が私の体を孤独にしないために──産むことと産まないことのあいだ」連動企画/
『なぜこの世界で子どもを持つのか 希望の行方』(集英社新書プラス)連載スタート記念対談


●うまれてくる風景[17]
繁延あづさ

●母子家庭の生きる知恵から「支援」を捉え直す──じじっかの思考デザイン[4]
コート心理
山﨑久美子

●分娩第2期の助産技術[1]──無痛分娩に求められる助産の探求からみえてきたもの
修正リトゲン手技(会陰保護技術)
田辺けい子

●型破りでオリジナルな 性教育の舞台裏[5・最終回]──行政・教育・地域を巻き込むノウハウ
性教育の機会はどこにでもある!──「身の上話から身の下話まで」できる助産師に
直井亜紀

●りれー随筆[466]
患者さまとの出会いを重ねて──助産師・認定遺伝カウンセラーとして,今私が思うこと
山﨑あや

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