総合リハビリテーション Vol.53 No.1
2025年 01月号

ISSN 0386-9822
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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特集 末梢神経損傷に対する再生医療の進歩

 中枢神経の再生医療が注目されている一方,末梢神経領域においても末梢神経損傷の外科的治療材料として人工神経などのバイオマテリアルの開発や臨床応用も急速に進んでいます.神経再生誘導術が保険収載され,神経再生誘導材を用いて神経再建を実施した場合に診療報酬で算定できるようになりました.これらの新しいバイオマテリアルを用いた治療成績は,従来の神経縫合術などと比べてどうなのか,術後のリハビリテーション治療はどのようにすればよいのか,現場では新しい治療に期待を寄せるとともに,新たな取り組みも模索されています.本特集では先進的にこれらの課題に取り組んでいるエキスパートの方々に解説をいただきました.

1.末梢神経損傷の診断と治療選択 酒井昭典 氏
 末梢神経損傷に対する治療法の選択は,神経断裂の程度や状態による.欠損を伴わない断裂の場合は神経の端端縫合,欠損を伴う場合は,欠損の部分を埋めるために自家神経移植術あるいは人工神経を用いた神経再生誘導術が顕微鏡下に実施される.自家神経を犠牲にする治療法を回避する目的で人工神経が用いられるが,自家神経移植術を超える臨床成績は得られておらず,末梢神経障害からの回復を促進する治療法の開発が求められている.

2.末梢神経損傷に対する神経再生誘導術 太田英之 氏ら
 近年,人工神経(神経再生誘導チューブ)が使用可能となり,神経欠損を有する症例に対して人工神経を用いた神経再生誘導術が実施されている.その適応と限界について留意が必要である.神経損傷に不動化ストレスを加えると疼痛反応が増悪することがあり,最低限の外固定期間と,外固定後はもちろん,外固定中も管理されたなかで可及的速やかな可動域訓練が重要である.

3.末梢神経損傷に対するリハビリテーション治療と周術期電気刺激療法 蜂須賀明子 氏ら
 末梢神経損傷では臨床的な症状が同等でも病態により予後が異なることから,リハビリテーション治療では正しい病態診断が重要である.神経伝導検査や針筋電図が,リハビリテーション治療の選択や予後予測に有用である.神経栄養因子を含む再生関連因子を誘導して術後の神経再生を促進する“周術期の最適化”に関する取り組みとして,近年,周術期の末梢神経電気刺激療法が注目されている.

4.末梢神経損傷に用いるバイオマテリアルの開発 田中啓之 氏
 神経損傷部の欠損を連結する目的で人工神経の開発が進められてきたが,その素材として生体適合性が悪い非分解性人工材料から生体親和性素材へシフトし,現在,2種類の人工神経が本邦で使用されている.人工神経以外の末梢神経損傷用バイオマテリアルとして,神経保護剤,癒着防止剤および神経断端保護剤が開発されている.そのなかで新規神経保護剤として末梢神経損傷用のナノファイバーシートの開発も進められている.バイオマテリアルを用いた末梢神経損傷後の治療成績向上には,リハビリテーション治療併用による相加効果が期待される.

5.Bio 3D printerを用いた末梢神経再生 池口良輔 氏ら
 神経欠損を架橋するための人工神経は吸収性素材であり,神経再生の役割としては細胞外マトリックスの効果にとどまる.人工神経にシュワン細胞や間葉系細胞などの細胞要素を付加する基礎研究が行われ,ある程度良好な神経再生が報告されているが,付加された細胞の生存率が低いため臨床的に使用するのが困難である.そのため,末梢神経損傷部位に細胞を効果的に追加する方法として,Bio 3D printer技術により,細胞のみを使用した三次元神経導管が作成され治験が進められている.

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 末梢神経損傷に対する再生医療の進歩

末梢神経損傷の診断と治療選択
酒井 昭典

末梢神経損傷に対する神経再生誘導術
太田 英之,他

末梢神経損傷に対するリハビリテーション治療と周術期電気刺激療法
蜂須賀 明子,他

末梢神経損傷に用いるバイオマテリアルの開発
田中 啓之

Bio 3D printerを用いた末梢神経再生
池口 良輔,他


●ひと
第62回日本リハビリテーション医学会学術集会会長になられた三上 靖夫氏

●入門講座
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通常級における特別支援の現状とスクールカウンセラーの役割
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あなたは知っていますか? 現場で必要な医療知識・技術⑤
感染対策
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●実践講座
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車椅子におけるシートクッションの選択──総論
白銀 暁

パーキンソン病治療の新しい展開④
作業療法──生活行為向上マネジメントを用いた重症度別の実践
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●研究と報告
認知症サポーター養成講座の受講後調査における年代別の比較
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●調査
老後の自宅生活継続のための準備状況
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モーションキャプチャー式3次元動作分析装置
谷川 広樹

●チーム医療を支えるリハビリテーション看護④
がんリハビリテーション看護の役割と課題
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●わたしたちのメンタルヘルスケア⑤
リハビリテーションスタッフのメンタルヘルス
千葉 哲也

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
カフカの『変身』──家族を思いやる精神障害者
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●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「オレの記念日」──冤罪による獄中生活を自己教育・自己形成の時間に充てた人生譚
二通 諭

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