リハビリテーション医学・医療における処方作成テキスト
リハビリテーション処方作成の実際から考え方までをエキスパートが解説。
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リハビリテーション診療の実践の基となるリハビリテーション処方の作成方法について、具体的にエキスパートが解説。リハビリテーション医療チームの道標の1つであるリハビリテーション処方の実際から考え方までを「活動を育む」リハビリテーション医学・医療のコンセプトに基づき示す。リハビリテーション処方を受け取るPT・OT・STにも日々の臨床に参考となる1冊。
シリーズ | リハビリテーション医学・医療 |
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監修 | 一般社団法人 日本リハビリテーション医学教育推進機構 / 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 |
総編集 | 久保 俊一 / 角田 亘 |
編集 | 安保 雅博 / 緒方 徹 / 辻 哲也 / 美津島 隆 |
発行 | 2023年06月判型:B5頁:308 |
ISBN | 978-4-260-05005-0 |
定価 | 4,950円 (本体4,500円+税) |
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はじめに
超高齢社会となった日本において,リハビリテーション医学・医療の範囲は大きく広がっている.戦前・戦中,戦後の復興期の主な対象であった小児疾患や切断,骨折,脊髄損傷に加え,脳血管障害,運動器(脊椎・脊髄を含む)疾患,神経・筋疾患,リウマチ性疾患,循環器・呼吸器・腎臓・内分泌代謝性疾患,摂食嚥下障害,聴覚・前庭・顔面神経・嗅覚・音声障害,がん,スポーツ外傷・障害などの疾患や障害が積み重なっている.また,周術期の身体機能障害の予防・回復,フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームなども加わり,ほぼ全診療科に関係する疾患,障害,病態を扱う領域になっているといっても過言ではない.しかも,疾患,障害,病態は複合的に絡み合い,その発症や増悪に加齢が関与している場合も少なくない.そのような状況下で,リハビリテーション医学・医療の果たすべき役割は大きい.
日本リハビリテーション医学会では2017年度に,リハビリテーション医学を「活動を育む医学」と再定義している.すなわち,疾病・外傷で低下した身体的・精神的機能を回復させ,障害を克服するという従来の解釈の上に立って,ヒトの営みの基本である「活動」に着目し,その賦活化を図り,よりよいADL(activities of daily living)・QOL(quality of life)を目指す過程がリハビリテーション医学の中心であるとする考え方を示している.「日常での活動」としてあげられる,起き上がる,座る,立つ,歩く,手を使う,見る,聞く,話す,考える,衣服を着る,食事をする,排泄する,寝る,などが組み合わさり,掃除・洗濯・料理・買い物などの「家庭での活動」,就学・就労・スポーツ活動・地域活動などの「社会での活動」につながっていく.国際生活機能分類(ICF)における参加は「社会での活動」に相当する.
リハビリテーション医学という学術的な裏づけのもとにエビデンスが蓄えられ根拠のある質の高いリハビリテーション医療が実践される.リハビリテーション医療の中核がリハビリテーション診療であり,診断・治療・支援の3つのポイントがある.急性期・回復期・生活期(維持期)を通して,ヒトの活動に着目し,病歴,診察,評価,検査などから活動の現状を把握し,問題点を明らかにして,活動の予後を予測する.これがリハビリテーション診断である.そして,理学療法,作業療法,言語聴覚療法,義肢装具療法など各種治療法を組み合わせて活動を最良にするのがリハビリテーション治療である.さらに,リハビリテーション治療と並行して,環境調整や社会資源の有効利用などにより活動を社会的に支援していくのがリハビリテーション支援である.
リハビリテーション診療を担うリハビリテーション科は2002年,日本専門医機構において18基本領域(現在19基本領域)の1つに認定され,臨床における重要な診療科として位置づけられた.リハビリテーション医学・医療をしっかりとバランスよく学ぶことはきわめて重要な事柄になっており,そのために体系立ったテキストが必要である.そのテキストの嚆矢となったのが2018年に発刊された『リハビリテーション医学・医療コアテキスト』である.それ以来,日本リハビリテーション医学教育推進機構と日本リハビリテーション医学会が中心となって,リハビリテーション医学・医療テキストシリーズの作成が続けられている.
総合的なテキストとして『リハビリテーション医学・医療コアテキスト(第2版)』『総合力がつくリハビリテーション医学・医療テキスト』が,フェーズ別のテキストとして『急性期のリハビリテーション医学・医療テキスト』『回復期のリハビリテーション医学・医療テキスト』『生活期のリハビリテーション医学・医療テキスト』が,疾患・テーマ別のテキストとして『脳血管障害のリハビリテーション医学・医療テキスト』『運動器疾患・外傷のリハビリテーション医学・医療テキスト』『内部障害のリハビリテーション医学・医療テキスト』『耳鼻咽喉科頭頸部外科領域のリハビリテーション医学・医療テキスト』『リハビリテーション医学・医療における栄養管理テキスト』『社会活動支援のためのリハビリテーション医学・医療テキスト』がすでに発刊されている.基本診療科として主なテキストがそろったことになる.しかしながら,医療・介護・福祉のインフラストラクチャともいえるリハビリテーション医学・医療の守備範囲は広く,実践的な内容のテキストも求められている.そのような状況の中で企画されたのが本テキストである.
本テキストは,リハビリテーション診療を行っていく上で,その実践の基になるリハビリテーション処方の作成法について詳細に記載されている.医師や関連する専門の職種をはじめとしたリハビリテーション医学・医療に関係する方々の日々の診療に役立つ内容となっている.日常診療で活用していただくことを心から願っている.
編集および執筆は,この分野に精通する先生方にお願いした.本書の作成にご尽力いただいたことに深く感謝する.
2023年5月
一般社団法人日本リハビリテーション医学教育推進機構 理事長
久保 俊一
一般社団法人日本リハビリテーション医学教育推進機構 理事
角田 亘
目次
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I.概論
1 リハビリテーション医学・医療総論
1 リハビリテーション医学・医療の意義 ─活動を育む医学─
2 「活動を育む」とは
2 リハビリテーション処方の実際
1 リハビリテーション処方とは?
2 リハビリテーション処方の記載
3 リハビリテーション処方における注意点
3 リハビリテーション処方とリスク管理
1 リハビリテーション処方におけるリスク管理
2 禁忌事項の確認
3 訓練の見送り基準および中止基準
4 起こりうる有害事象の予測とモニタリング
5 有害事象発生時における対処法
6 医療関連感染の予防
4 リハビリテーション処方とチーム医療
1 チーム医療におけるリハビリテーション処方
2 リハビリテーション処方とチームカンファレンス
II.リハビリテーション処方における治療
1 運動機能障害に対する訓練
1 ポジショニング
2 関節可動域訓練
3 促通手技
4 筋力増強訓練(主に下肢体幹に対する)
5 基本動作訓練
6 移乗訓練
7 立位歩行訓練(主に脳血管障害に対する)
8 立位歩行訓練(主に運動器疾患に対する)
9 バランス訓練
10 上肢巧緻動作訓練・上肢協調運動訓練
11 ADL訓練
12 手段的ADL訓練
2 循環器系・呼吸器系障害に対する訓練
1 心肺持久力訓練(有酸素運動)
2 呼吸器系障害に対する訓練
3 コミュニケーション障害に対する訓練
1 失語症の訓練
2 構音障害の訓練
3 (主に頭頚部がん患者に対する)発声訓練
4 聴覚障害に対する訓練
5 顔面神経麻痺に対する訓練
4 摂食嚥下障害に対する訓練
1 摂食嚥下訓練(間接訓練)
2 摂食嚥下訓練(直接訓練)
5 認知機能障害に対する訓練
1 認知機能訓練
2 小児における認知機能訓練
6 訓練と併用される主な治療
1 義肢装具療法
2 物理療法
III.リハビリテーション処方に関係する評価・検査
1 脳血管障害の評価・検査
2 運動器疾患の評価・検査
3 歩行機能の評価・検査
4 ADL・手段的ADLの評価・検査
5 心肺持久力の評価・検査
6 言語機能の評価・検査
7 認知機能の評価・検査
8 摂食嚥下機能の評価・検査
IV.リハビリテーション処方に関係する支援
1 家屋評価・住宅(家屋)改修指導
2 福祉用具
3 復学支援・復職支援
4 自動車運転の再開支援
V.各疾患に対するリハビリテーション処方
1 脳疾患
1 脳血管障害(急性期)
2 脳血管障害(回復期)
3 脳血管障害(生活期)
4 頭部外傷(外傷性脳損傷)
5 慢性硬膜下血腫
6 脳腫瘍
7 正常圧水頭症
8 ヘルペス脳炎
2 運動器疾患
1 頚椎症
2 腰痛症
3 腰部脊柱管狭窄症
4 脊椎椎体骨折
5 肩関節周囲炎
6 腱板損傷
7 上腕骨近位部骨折
8 橈骨遠位端骨折
9 手根管症候群
10 変形性股関節症
11 大腿骨頭壊死症
12 大腿骨近位部骨折
13 骨盤骨折
14 変形性膝関節症
15 膝靱帯損傷(前十字靱帯損傷)
16 脛骨骨折
17 足関節骨折
18 アキレス腱断裂
3 脊髄損傷
1 頚髄損傷・胸腰髄損傷(急性期)
2 頚髄損傷(回復期以後)
3 胸腰髄損傷(回復期以後)
4 神経・筋疾患
1 Parkinson病
2 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
3 脊髄小脳変性症
4 多発性硬化症
5 Guillain-Barré症候群
6 筋ジストロフィー(Duchenne型)
7 多発筋炎・皮膚筋炎
8 重症筋無力症
9 末梢神経障害(ニューロパチー)
5 切断
1 上肢切断
2 下肢切断
6 小児疾患
1 脳性麻痺
2 知的障害
3 発達障害(神経発達症)
4 二分脊椎
7 リウマチ性疾患
1 関節リウマチ
8 循環器疾患
1 急性心筋梗塞
2 慢性心不全
3 狭心症(冠動脈バイパス手術後)
4 解離性大動脈瘤
5 末梢動脈疾患
9 呼吸器疾患
1 急性肺炎(誤嚥性肺炎など)
2 慢性閉塞性肺疾患
3 間質性肺炎
10 腎疾患
1 慢性腎臓病(保存期)
2 慢性腎臓病(末期)
11 内分泌・代謝性疾患
1 糖尿病・メタボリックシンドローム
12 がん
1 頭頚部がん
2 胸腹部がん
3 乳がん
4 血液腫瘍
5 がん終末期
13 認知症・精神疾患
1 認知症
2 精神疾患(うつ病,統合失調症など)
14 その他
1 褥瘡
2 サルコペニア・フレイル
3 人工呼吸器管理
4 COVID-19
処方の参考になるリハビリテーション医学・医療便覧
1 用語解説
2 関節可動域表示ならびに測定法
索引