助産雑誌 Vol.78 No.1
2024年 02月号

ISSN 1347-8168
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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特集 データでみる「助産所のお産」——嘱託医療機関との連携で実現する安全性と継続性
土屋清志(医療法人社団均禮会 府中の森 土屋産婦人科)

 本特集は,東京都多摩地区の府中市にある「府中の森 土屋産婦人科」と開業助産所21ヵ所(2024年1月現在)を主体とした,周産期医療連携の報告です。人口約424.7万人,出生数2万4610(2023年)の東京都多摩地区における私たちの分娩管理の実績から,2010~2022年の間に助産所分娩を希望した5826症例(そのうち助産所で出産した症例5017例)のデータをまとめました。
 本特集のねらいは,助産所と嘱託医療機関の医療連携による周産期管理の実態を多くの人に知ってもらうことです。助産所管理の周産期医療とはどのようなものか,そして助産所の存在意義は何か,助産所が扱う分娩数が全体の1%を切るいまこそ考える必要があります。

 長年にわたって,助産所は,妊娠・出産・子育てに必要なものを提供する周産期施設として機能してきました。いまでも,女性が出産場所を選ぶときの重要な選択肢の一つです。助産所は分娩だけではなく,継続した母子への支援に取り組む周産期施設だからです。少子化問題への対応が急務とされ,それに関わる家族政策として,子育て支援の推進が喫緊の課題ともなっている日本において,その存在意義は日々増してきています。
 これまでも,助産師は現行法上で開業する権利を有していました。その権利の行使には,当然,助産師として重要な責務を担います。それが「安全な医療」への取り組みです。残念ながら最近は,助産所が扱う分娩数の減少に伴い,その実態が見えにくくなりました。「安全な医療」への取り組みも伝わりにくくなりました。さらに,安全管理のための医療介入が増えたことで,産科医師のみならず助産所以外で働く助産師も,助産所が扱う生理的な分娩の実践に触れる機会が少なくなりました。
 そこで助産所分娩の実態をエビデンスとして提示することで,生理的な分娩の実態を見直して,助産所と「安全な医療」に取り組むために何が必要なのかを考えました。正常から逸脱する20%弱の周産期異常に備えるのは,周産期管理の基本です。100%安全で正常な症例だけを助産所に集めることは現実的ではありません。必要なのは,医療連携で異常に備えること,リスク管理を関係者で分担すること,そして,周産期医療資源の効率的な配置を考えることです。そのような努力によって,「助産所のお産」が持っている意義と可能性が最大限に引き出せるのではないかと考えます。
 これから妊娠・出産・子育てを考えている多くの女性,開業を考えている助産師,嘱託医師契約を結ぶ産科医師,そして周産期医療の公衆衛生に関わる人たちにも,私たちの取り組みを知ってもらえれば幸いです。そして,それぞれがそれぞれの立場で周産期とよい関わりを持てるように,本特集を利用していただければと思います。

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 データでみる「助産所のお産」──嘱託医療機関との連携で実現する安全性と継続性

1.助産所との医療連携の成り立ちとその実績の推移
土屋清志

2.妊娠期における嘱託医師と助産所との協働管理
土屋清志

3.助産所管理の周産期予後──妊娠・分娩経過と移行管理数
土屋清志

4.助産所管理の母体と新生児の統計
土屋清志

5.リスクの分類とラベリング,リスクの構造分析
土屋清志

6.助産所管理の症例におけるリスク管理
土屋清志

7.移行症例の検討
①NRFSにて緊急母体搬送──妊婦のリスクを早期に発見し,医師による診断と治療にゆだねる
ハンズの会

②産後出血多量への対応──助産師の検査・注射・投薬などの医療行為
ハンズの会

③医療連携における緊急帝王切開──嘱託産婦人科医師の28%が現在分娩を取り扱っていない施設という現状をどう考えるか
ハンズの会

④ART後の40歳以上の高齢初産──助産所はハイリスク妊婦を医療機関に紹介し,正常妊婦のみを扱うようにすべきか?
ハンズの会

8.助産所と嘱託医療機関による医療連携──助産所の助産師・嘱託医療機関の助産師・嘱託医師 それぞれの立場から
今村理恵子/岩田敦子/土屋清志

■座談会
「助産所のお産」を見つめ直し,未来につなぐ──助産所と嘱託医療機関による継続的な周産期管理で,地域の妊娠・出産・育児を支援する意義とは
土屋清志/荒井英恵/月野真紀/青柳三代子/清水幹子


■Report
『助産雑誌』公開収録
母乳外来で心をほぐす助産力──乳房ケアからはじまるファミリーケア


●新連載 助産師の臨床推論を学ぼう![1]
助産師の臨床推論って?
伊藤美栄

●新連載 助産師の疑問に答える! 実践的おっぱい講座[1]──多角的な「胸」の知識
助産師が知っておくべき豊胸術(乳房増大術)の知識
Satoko Fox

●うまれてくる風景[7]
繁延あづさ

●無痛分娩の超ソボクなギモンに産科麻酔科医が答える──教えて! ヒュウガ先生[6・最終回]
最終回だから無謀にも「望ましい無痛分娩」を定義してみた。
日向俊輔/田辺けい子

●りれー随筆[456]
思い通りの助産師人生!?
渡邊美香

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