総合リハビリテーション Vol.52 No.1
2024年 01月号

ISSN 0386-9822
定価 2,640円 (本体2,400円+税)

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特集 リハビリテーションの医療経済学

 人口減少社会に入って,医療に投入できる資源が有限であることや最適配分が意識される機会が増えた.最適配分に対する答えは,効果に着目する医学研究からは引き出せず,医療経済学研究が不可欠である.そこで,医療経済学とは何か,生活の質(quality of life:QOL)や費用対効果などの医療経済評価などミクロレベル,地域医療構想などメゾレベル,医療政策などマクロレベル,それぞれにおける,選択肢間の効果・効率の比較など,医療経済学的な視点や評価研究方法について,リハビリテーション・介護にかかわりの深い課題・事例を中心に概観する特集を企画した.

医療経済学とは何か──医療経済学のスコープ 今中 雄一 氏
 「医療経済学会のスコープ」(2019)を基に,医療経済学とは何か,および医療経済学が扱う研究領域をご紹介いただいた.医療経済学は,医療の費用・財源・需要と供給など多くの人が思い浮かべる経済・財政にかかわる側面だけでなく,健康・生活の質とその関連要因から受療行動,医師の地域偏在・働き方改革,医療組織運営まで広い領域をカバーしている.その対象は,医療行為などミクロレベルから医療政策・財政などのマクロレベルにまで及ぶ.医療経済学は学際的な性質を持ち,データサイエンスなどとの融合や新領域の創出も期待されている.

リハビリテーションの臨床疫学研究および医療経済評価 康永 秀生 氏
 治療効果などの評価では,ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)がゴールド・スタンダードとなるが,後期高齢者などが対象から除外されてしまうことが多く,結果の一般化可能性が担保されない.そこで実臨床を反映した知見を得るのに必要なDiagnosis Procedure Combination(DPC)データなどリアルワールドデータや傾向スコアなどの統計手法を用いた脳梗塞や心不全,骨折患者のリハビリテーションの効果に関する臨床疫学研究や効果比較研究をご紹介いただいた.費用対効果評価事例と患者・家族,医療費支払者,社会全体それぞれの立場で異なる費用の範囲についてもご説明いただいた.

医療経済評価におけるQOLの利用 池田 俊也 氏
 世界保健機関のQOL尺度の多面的な構造や健康関連QOLにも,①多次元で測定する「プロファイル尺度」と,②1を完全に健康な状態,0を死と定義し一元化した尺度である「選考に基づく尺度」があること,それらを含む患者報告アウトカム(patient-reported outcome:PRO)について説明していただいた.また臨床経済学における費用効果分析,質調整生存年(quality-adjusted life year:QALY)を用いた費用効用分析の考え方と,中央社会保険医療協議会(中医協)における活用,急性期脳卒中患者に対する週5~6日と比較した週7日リハビリテーションプログラム費用効果分析の事例を紹介していただいた.

地域医療における資源配分 松田 晋哉 氏
 日本は急速な高齢化に伴い医療ニーズは大きく変化している.いまや救急入院患者の30~75%が介護保険サービス利用者で,今後は慢性期医療ニーズが増大することを実データで紹介している.これらの変化に対応する資源配分が必要だが,日本は民間病院が多いので,公的病院が多いヨーロッパ諸国のように国の権限で,あるいは米国のように市場原理で医療資源配分を決めることが難しい.日本ではデータに基づく現状把握をもとにした資源配分が望まれる.しかし地域医療構想の議論は停滞しているとして,その要因や課題を述べている.

医療政策の経済学的評価 後藤 励 氏
 2つの事象について相関が見られたとしても因果関係とは限らず,見かけ上の関連かもしれない.因果関係であることを証明するためにRCTが用いられるが,保健・医療・介護など社会政策の評価にRCTを行うのは困難である.そこで,RCTのような実験に近い状況を見つけて政策の効果を推論する「自然実験(擬似実験)」が用いられている.その主な分析方法として,操作変数法(instrumental variable method:IV),差の差の推定(difference-in-difference:DID),回帰不連続デザイン(regression discontinuity design:RDD)について,介護やリハビリテーションにおける事例を含め概説していただいた.

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特集 リハビリテーションの医療経済学

医療経済学とは何か──医療経済学のスコープ
今中 雄一

リハビリテーションの臨床疫学研究および医療経済評価
康永 秀生

医療経済評価におけるQOLの利用
池田 俊也

地域医療における資源配分
松田 晋哉

医療政策の経済学的評価
後藤 励


●ひと
第61回日本リハビリテーション医学会学術集会会長になられた 安保 雅博 氏
岡本 隆嗣

●入門講座
てんかんとリハビリテーション①
脳性麻痺とてんかん
久保田 雅也

●実践講座
排便障害と排尿障害④
在宅における排泄ケアと多職種連携の実際
安藝 奈々枝

●研究と報告
変形性膝関節症患者における臨床最小効果量を満たす筋力測定値の基準値
岩崎 翼,他

全国標準よりも早い回復期リハビリテーション病棟入院はFunctional Independence Measureで評価した認知機能の改善度を高くする
佐藤 圭祐,他


●認知症者・家族をさまざまな観点や立場から支えるコミュニケーションスキル⑤
支持的精神療法の観点から
繁田 雅弘

●子供の車椅子・電動車椅子④
バギー
西方 倫彰

●公募連載 勉強会どうしてますか?①
ICFを活用し症例検討形式での職員勉強会
木佐 俊郎,他

●Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヒラリー・スパーリングの『マティス 知られざる生涯』
高橋 正雄

●Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「こころの通訳者たち What a Wonderful World」──聴覚障害と視覚障害のコミュニケーション文化をぶつける挑戦
二通 諭

●学会報告
第54回中国四国リハビリテーション医学研究会
森本 兼人

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