脳卒中の機能回復
動画で学ぶ自主トレーニング

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脳卒中患者のリハビリに携わる療法士に向けた革新的なガイドブックが誕生。本書は30時間に及ぶYouTube動画と連携し、療法士が患者に対して、より個別化された自主トレーニングの提供や実践的な説明、指導を行うための手引き書となっている。機能回復に必要な情報や評価手順、家族でも実施可能なトレーニングなど、療法士や患者家族が知りたい情報も豊富に収載。学生の臨床実習から現場の療法士まで幅広い層に最適な一冊。

執筆 金子 唯史
執筆協力 丸山 聖矢
発行 2023年10月判型:B5頁:320
ISBN 978-4-260-05341-9
定価 4,620円 (本体4,200円+税)

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  • 序文
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はじめに

 本書の執筆に取り掛かってから約3年.ようやくここに出版の運びとなりました.
 本書を端的に言い表せば,「現場で使える脳卒中実践本」であり,私が代表を務めるSTROKELABを起業して10年,臨床知の集大成といえます.
 過去20年の間に,私たちの業界は飛躍的に進化しました.エビデンスが厚みを増して,専門家の言葉はデータと科学に満ち溢れるようになりました.しかし,その知識が療法士や当事者にどの程度届いているのでしょうか? 私には,難解な理論よりも実践的な指南を求めている多くの声が聞こえます.評価バッテリーを例に挙げると,信頼性や妥当性への関心より,実施手順や解釈を求める声のほうがSNSでは多く見受けられます.
 私たちSTROKELABは,この情報のギャップを埋めるために,実践的な情報をSNSやYouTubeで発信してきました──複雑な理論を誰にでもわかるかたちで伝えるというミッションのもとに──.
 SNSなどのコメント欄では,「標準化された評価バッテリーへの理解が深まった」「自主トレの意味が理解でき,毎日実施できるようになった」など,療法士や当事者の方々から多くのありがたい言葉をいただいています.そういったSNSやYouTubeベースから生み出された本書はこれまでに類を見ない一冊であると自負しています.

 真の機能回復の鍵は,病の深層を知ること.身体を動かす前に,心を動かす知識を.

 自主トレーニング=運動ではありません.病態の基礎知識を理解することでその取り組みは永続的になり,身体への意識が生まれます.本書には単なる運動を超えた自主トレーニングの新しいカタチを記しました.本書を読んでいただくことで,動画解説を取り入れながら,現場で使える知識に落とし込んでいる工夫が伝われば幸いです.これを機会に,当事者の方への自主トレーニング提示において,病態への知識研鑽もトレーニングの一環であることを伝えてもらえればと思います.
 実践者がよく理解していないマニュアル化されたエビデンスベースドプラクティス(EBP)はただの機械化といえるでしょう.私たちはこれからも,最新情報-臨床の現場-当事者の架け橋をつくり,「本当に使える知識」の発信を続けます.新しい情報をどう臨床現場で活用するか──その中心には常に「人」がいます.私たちは,この人間中心のアプローチをずっと大切にしていきたいと考えています.
 本書の完成に至るまでには,執筆協力の丸山聖矢氏,デザインサポートの郡司友輔氏をはじめとしたSTROKELABのスタッフや姉妹本の『脳卒中の動作分析』に続いて担当していただいた医学書院編集者の北條立人氏など多くの方々のサポートをいただきました.ここに心よりお礼を申し上げます.

 2023年8月
 STROKELAB 代表取締役 金子唯史

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1 症例紹介
  ・パソコン操作ができるように母指伸展を目指す
  ・上着着脱に時間がかかる原因は? 坐位と手の感覚を改善する
  ・全身の感覚がわかりづらい…… 視床出血に対する介入
  ・指が伸ばしづらい! ペットボトルを把持できるまで
  ・亜脱臼を改善し,料理で手を使うための介入
  ・歩くと肘が曲がってしまう! リラックスした上肢を目指す
  ・書類操作や傘を持つことができる! 長期のリハビリテーション効果
  ・内反/尖足歩行が改善し,ヒールのついた靴を履いて歩くまで
  ・脳卒中,大腿骨頸部骨折を受傷後,歩行スピードの改善を目指す
  ・三角巾/上肢スリングを外したい! 亜脱臼の原因を探り改善を目指す
  ・失調によるバランス不良を改善し,趣味のゴルフを楽しむ
  ・生活期でもあきらめない! 機能回復と大切な目標に向かって

2 脳卒中の基礎知識
  ・発症から6か月過ぎても回復するためには?
  ・成功への道! 機能回復の大切な原則とは?
  ・脳の驚くべき能力,神経可塑性とその活用法とは?
  ・エビデンスに基づくリハビリテーションとは?
  ・最高の回復を目指すために必要な4つの習慣とは?
  ・手の機能回復に必要な6つの要素とは?
  ・手の機能回復が停滞する3つの要因とは?
  ・手の力を取り戻す! 最新の治療法とその効果とは?
  ・痙縮の背後にあるメカニズムとは?
  ・痙縮の評価とエビデンスに基づく治療とは?
  ・スムーズな歩行のための必須条件とは?
  ・下肢装具選びのポイントは?
  ・下肢装具の種類とそれぞれの特徴は?
  ・杖や歩行器,実際の効果と使用時の注意点は?
  ・視床出血とそれに伴う症状とは?
  ・放線冠の役割とその重要性とは?
  ・被殻出血に伴う症状とその対処法とは?
  ・姿勢制御のメカニズムとその重要性とは?
  ・バランス障害の主な原因とは?
  ・運動失調の背景にあるメカニズムとは?
  ・運動失調の正確な評価と効果的な治療とは?
  ・覚醒レベルがもたらすリハビリテーションへの影響とは?
  ・半側空間無視が起こる原因とは?
  ・半側空間無視の評価と最も効果的な治療法とは?
  ・プッシャー症候群が生じる原因とは?
  ・もっと上手く動ける! 運動学習のコツは?
  ・脳卒中の再発を防ぐ鍵とは?
  ・持続する痛みへの対処法とは?
  ・浮腫の予防策,実際の効果は?
  ・複合性局所疼痛症候群の最適な対処法とは?
  ・脳卒中後に感じるめまいの原因は?
  ・めまいの緩和につなげる前庭リハビリテーションとは?
  ・むせ込みの予防と対策,効果的な方法とは?
  ・気持ちが落ち込む原因と対処法は?
  ・脳卒中と認知症との関連性は?
  ・自動車の運転を再開するための安全な対策とは?
  ・回復期リハビリテーション病院を選ぶポイントは?
  ・脳卒中の発症後に利用可能な制度とは?
  文献

3 評価
 神経学的評価
  ・ブルンストロームステージ
  ・ヒューゲルメイヤーアセスメント(FMA)
  ・SIAS
  ・上肢・下肢の包括的神経検査
  ・NIHSS
  ・MAS
  ・SARA
  ・ミニベステスト(Mini-BESTest)
  ・バーグバランススケール(BBS)
  ・トランクインペアメントスケール(TIS)
  ・TUG
  ・CBS
  ・KF-NAPTM
  ・モーターアクティビティログ-14(MAL-14)
  ・SCP,BLS
 整形外科評価
  ・肩関節の評価
  ・股関節の評価
  ・膝関節の評価
  ・足関節の評価
 内部障害評価
  ・内臓の評価
  ・呼吸の評価
  ・心臓の評価
 その他の評価
  ・カナダ作業遂行測定(COPM)
  ・ゴール達成スケーリング(GAS)
  ・脳卒中リハビリテーションにおいて知っておくべき血液データ
  文献

 4~7章の使い方

4 上肢の自主トレーニング
  ・曲がる指を改善! 手指伸展ストレッチ
  ・手掌面を合わせ感覚を取り戻す! 手首の運動
  ・肩甲骨の可動性アップ! 痛みや亜脱臼の予防
  ・肩の可動域改善とコントロールの運動
  ・硬くなった肩に効く外旋ストレッチ
  ・上肢を外側に開き,肩の支持性を高める
  ・全指を丁寧に動かし,指の分離を促す練習
  ・簡単! 膝を使って指ストレッチ
  ・腕のつっぱり解消! クイックストレッチ
  ・前腕と手首の連動で前腕回内外ストレッチ
  ・肘伸展筋を活性化! 手指の緊張を和らげる
  ・物を持てるように! 手首背屈運動
  ・麻痺側上肢で身体を支える運動
  ・寝ながらストレッチで上肢の筋緊張改善へ
  ・肘のストレッチで脇の下のつまり感を軽減
  ・ボールを使って手の感覚を取り戻す
  ・手の筋肉を活性化するボールトレーニング
  ・肩甲骨エクササイズ 立位姿勢バージョン
  ・バランス能力の改善! 上肢振りトレーニング
  ・生活での上肢使用頻度を上げるトレーニング
  ・肩外旋+肘伸展で回旋複合コントロール

5 下肢の自主トレーニング
  ・膝の不安定改善トレーニング
  ・足組み動作と梨状筋ストレッチ
  ・歩行バランスを改善! 踵の3次元の動き
  ・グラグラ足首を安定! 足関節背屈練習
  ・ここがマズいよ お尻上げ
  ・ここがマズいよ アキレス腱ストレッチ
  ・ここがマズいよ スクワット
  ・しっかり荷重! 立ち上がり練習
  ・歩行のための麻痺側荷重トレーニング
  ・反張膝を改善! 荷重トレーニング
  ・足の感覚を研ぎ澄ます! 足部内在筋運動
  ・歩行が安定 中殿筋トレーニング
  ・方向転換を克服! 応用ステップ練習
  ・ここがマズいよ 片足立ちトレーニング
  ・下肢が重いと感じたら うつ伏せトレーニング
  ・立ってできる膝のコントロール
  ・狭い支持基底面でのステップ練習
  ・すり足移動でバランス訓練
  ・踵から接地する 麻痺側への荷重方法
  ・不整地歩行に向けたトレーニング
  ・ここがマズいよ 階段昇降

6 体幹の自主トレーニング
  ・体幹の分離で広背筋を鍛える
  ・脊柱の回旋で体幹筋を活性化
  ・非麻痺側を用いて上手な起居動作
  ・腹圧を高める運動【基礎編】
  ・腹圧を高める運動【応用編】
  ・足組みエクササイズで腹斜筋を鍛える
  ・基礎から学ぶ! 体幹回旋トレーニング
  ・基礎から学ぶ! 体幹側屈トレーニング
  ・床へのタッチ練習
  ・起居動作で腹筋を鍛える
  ・椅子から床へ! 着座動作
  ・床へ座る! 立位からの着座練習
  ・床からの立ち上がり動作
  ・四つ這い姿勢で体幹バランス強化

7 嚥下の自主トレーニング
  ・嚥下・発話練習前の準備運動
  ・嚥下・明瞭発話の基礎 顎を正中位で動かす
  ・顎を動かしやすく! 下顎の運動
  ・顔面・嚙む力 麻痺側の管理方法
  ・表情を豊かに! 顔面筋の練習
  ・話しやすく! 食べやすく! 舌運動の練習
  ・舌の繊細なコントロールを練習
  ・舌の感覚を取り戻し嚥下力を高める!
  ・全身のバランスを整える顎の運動

8 家族もできるトレーニング
  ・股関節の構造と働き
  ・股関節の屈曲と伸展
  ・股関節の外旋と内旋
  ・股関節の外転と内転
  ・膝関節の構造と働き
  ・膝関節の屈曲と伸展
  ・足関節の構造と働き
  ・足関節の背屈と底屈
  ・足関節の外がえしと内がえし
  ・肩関節の構造と働き
  ・肩甲骨の挙上と下制
  ・肩甲骨の屈曲外転と伸展内転
  ・肩関節の屈曲と伸展
  ・肩関節の外転と内転
  ・肩関節の外旋と内旋
  ・肘関節と前腕の構造と働き
  ・肘関節の屈曲と伸展
  ・前腕の回外と回内
  ・手関節と手指の構造と働き
  ・手関節の背屈と掌屈
  ・リハビリテーションに役立つ歩行介助
  ・リハビリテーションに役立つ移乗介助
  ・科学的に正しい側臥位のつくり方
  文献

9 Q&A
 当事者の方からいただくご質問に答えます!
  Q.1 最近妻の性格が怒りっぽくなりました.脳卒中は性格にも影響するのでしょうか?
  Q.2 妻として,介助者としてどうすれば夫の脳卒中の回復に役立つことができますか?
  Q.3 来週,病院を退院します.リハビリテーションはいつまで続くのでしょうか?
  Q.4 発症から時間が経ちモチベーションが下がっています.何かよい方法はありますか?
  Q.5 テクノロジーを活用するのがよいと聞きましたが,どう活用したらよいでしょうか?
  Q.6 リハビリテーション中にできても日常生活でできません.汎化させるにはどのような工夫が必要でしょうか?
  Q.7 自費リハビリテーションの利用を検討しています.選び方について教えてください.
  文献

10 生活アイデア
  ・買い物や食事で活躍! 持ち運び便利グッズ
  ・便利グッズを駆使して楽しくクッキング!
  ・便利グッズで,無理なくお掃除!
  ・これでもう怖くない! 便利グッズを使って安心入浴
  ・便利グッズで更衣動作を攻略し,お洒落をしよう!
  ・安全なやり方と便利グッズで楽ちん洗濯動作
  ・健康グッズを使用した自主トレーニング5選

11 料理
  ・「生活を楽しむコツ」にたどり着くまでの私
  ・漬けこまない南蛮漬け
  ・茶碗蒸し
  ・チョコケーキ
  ・ボウルホルダー
  ・リハビリテーションと料理の記録

索引

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