理学療法ジャーナル Vol.58 No.5
2024年 05月号

ISSN 0915-0552
定価 2,090円 (本体1,900円+税)

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特集 “行為”の回復のための理学療法
企画:江草典政

 臨床場面においては「動ける」という事実と,患者のめざす回復には乖離があることを実感する場面があります.読者の皆さんは,リハビリテーションにおける回復をどのように定義するでしょうか.「運動学的に,解剖学的に可動性を有し,合目的的に運動ができる」というのは患者の望む回復の条件を満たすのでしょうか.本号では“行為の回復”に焦点を当て,理学療法のアイデンティティに対する問いを共有し,視点を拡張すべくそれぞれの視点から論じていただきました.本号がわれわれの考える回復を問い直す一助となれば幸いです.

理学療法の治療対象としての“行為”──行為の構造と身体の関係 藤澤宏幸
 理学療法士は運動行動(運動,動作,行為)を主な治療対象とする.現在,医療専門職の共通言語である生活機能モデルにおいて,活動は「課題または行為の遂行」と定義されている.行為を生活や人生における目的を有する行動と解せば,物理的作用としての目的を有す動作との差異を明確にできる.そして,行為を射程に入れることで,理学療法が対象者の生活や人生に寄り添ったものになることを,行動制約モデルのもとに解説する.

行為のニューラルネットワークとリハビリテーション戦略 園田義顕
 行為はどのように生み出されるか.そのニューラルネットワークの全容はいまだわからないことが多いが,少なくとも反射のように1対1の対応関係から生み出されるわけではない.本稿では,行為のニューラルネットワークを広く知覚運動円環として捉え,絶え間のない予測との一致/不一致により更新し続ける問題解決過程としてモデル化する.また行為の回復を学習と捉え,予測との誤差を最小化していくように導くリハビリテーション戦略について述べる.

行為を獲得するプロセス──運動学習の視点から 川崎 翼,他
 運動学習は,行為を獲得するうえで必要不可欠であると考えられる.これまで,運動学習過程を説明するためにさまざまな理論が提唱され,運動学習の理解が進んできた背景がある.諸理論をもとに,行為を獲得する過程を真に理解するためには,行為遂行にかかわる認知処理過程の理解に努めることや,生物・心理・社会モデル(bio-psycho-social model)とそれに基づく目標設定を実践することが勧められる.

行為を獲得するプロセス──メタラーニングの視点から 安田真章
 本稿ではメタラーニングという視点から行為の獲得を図ることについて述べていく.メタラーニングという言葉は「学習する方法を学習する」という概念であるが,理学療法の分野ではあまり聞き慣れない概念であるため,最初にその概要を紹介する.次いでメタラーニングという視点を臨床応用していくことについて,主観的意見が中心となるが述べていく.本稿を契機にメタラーニングの臨床応用について議論が展開されれば幸いである.

行為の質を捉える試み 濵田裕幸
 私たちは生活のなかで,運動機能や動作能力を目的に対して発揮し,行為を生成する.本稿では,行為の成否に関連する動作の解析手法に関して,ベースとなる手法を概説し,臨床上のさまざまな制約を踏まえて,複数の手法における特徴を整理する.加えて,介入前後の変化を捉えるだけでなく,学習に関与する因子としての変動(探索)を含めて観察していく必要性に触れる.

標準的理学療法を行為の観点から捉え直す──運動器疾患 奥埜博之
 運動器疾患に対する標準的理学療法を行為の観点から捉え直すために,要素還元的な視点のみではなく,“システムアプローチ”と“機能について捉え直す”という2つの視点を加えることの重要性について,事例を通して提案する.

標準的理学療法を行為の観点から捉え直す──神経疾患 菊地 豊
 中枢神経の不可逆的な損傷・変性が生じているなかにあって,理学療法としてめざすことができる「行為の回復」とは何か.神経疾患における行為の回復はこれまで十分に検討されてこなかったテーマであり,神経理学療法の精密化を進めていくうえでの重要課題の一つである.神経疾患における中枢神経系の障害では行為の中核となる自己の変質により生じる複雑な行為の現象をどのように解釈し,理学療法の手がかりとするのかを,複数の事例を通して理解を深め,今後の議論の足掛かりとしたい.

“行為”と“わたし”が結びつくまで──生活者の視点からみた回復過程 大島埴生
 本稿では,脳卒中などの中途障害がアイデンティティに及ぼす影響や時間の経過による変遷を論じ,患者のアイデンティティが身体に根ざし,他者・社会とのかかわりで変容するプロセスを考察する.さらに,生活者としての患者の体験に着目し,障害受容や脳卒中後うつ,スティグマとの関連について検討する.最後に身体のありようがアイデンティティに与える意味を強調し,障害が行為のなかで新たな意味を形成する可能性を述べる.

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価格については医書.jpをご覧ください。

特集 “行為”の回復のための理学療法

理学療法の治療対象としての“行為”──行為の構造と身体の関係
藤澤宏幸

行為のニューラルネットワークとリハビリテーション戦略
園田義顕

行為を獲得するプロセス──運動学習の視点から
川崎 翼,他

行為を獲得するプロセス──メタラーニングの視点から
安田真章

行為の質を捉える試み
濵田裕幸

標準的理学療法を行為の観点から捉え直す──運動器疾患
奥埜博之

標準的理学療法を行為の観点から捉え直す──神経疾患
菊地 豊

“行為”と“わたし”が結びつくまで──生活者の視点からみた回復過程
大島埴生


■Close-up 階段昇降
階段昇段と矢状面膝関節運動力学動態
古本太希,他

階段昇降動作の時間的定量評価の考案に向けた取り組み──Scale for Stepping the Stairway
五月女宗史

階段使用頻度と骨量の関係
谷口善昭


●とびら
母の最期が教えてくれたこと
横山仁志

●視覚ベースの動作分析・評価(新連載)
腰部──伸展型腰痛症の理学療法
杉浦史郎

●今月の深めたい理学療法周辺用語 5
がんサバイバー
入江将考

●中間管理職の悩み 11
人を評価する人事考課には,いつもプレッシャーを感じます
[回答者]篠 周平,他

●理学療法士のための「money」講座 5
求人広告を読み解く──基本給? ボーナス? 福利厚生? どれを見て決めているの?
細川智也

●臨床実習サブノート
「どれくらい運動させていいかわからない」をどう克服するか 2
人工膝関節全置換術後の筋力増強運動
田中友也

●報告
超音波診断装置を用いた健常成人における膝関節屈曲伸展運動に伴う脛骨神経の動態観察
田中紀輝,他

●プラクティカル・メモ
スクワット運動の運動負荷量の段階づけができる傾斜台を用いた環境設定の工夫
岡 徳之,他

●私のターニングポイント
一人の住民として地域とともに成長する
草別拓郎

●学会印象記
第28回日本基礎理学療法学会学術大会──理学療法におけるテクノロジーの発展とこころの重要性
竹中悠真

第12回日本支援工学理学療法学会学術大会──理学療法士としての広がり
東條明徳

●My Current Favorite
医工連携に必要なこと
久保田勝徳

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