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第3381号 2020年7月27日


Medical Library 書評・新刊案内


患者の声から考える看護

渡邉 順子 著

《評者》渡邊 昌子(公益社団法人静岡県看護協会会長)

患者の「してほしい看護」を考える,看護のバイブル

 本を手にして最初に目に留まったのは,「友蔵さんを探せ!」という黄色い帯です。ユニークでインパクトがあり,タイトルである『患者の声から考える看護』とどのようにつながっているのか,読んでみたいと関心を持ちました。

 本の全般を通して,学生が看護師となり,現場において看護専門職として役割を果たすために「五感」を最大限に活用し,知識・技術を提供できるよう,その根拠と方法が著者の長年の教員経験から懇切丁寧に述べられています。そこから教育者としての著者の,学生・看護師への愛情を込めた熱いメッセージとエールを感じとることができました。

 この本では,看護を行うには患者の体の中で何が起こっているかという病態生理を理解した上で,根拠をもとに的確な判断を行い,患者にとっての最善の看護を提供することが重要であると伝えています。そして,患者に寄り添うことの本当の意味,看護師の思い込みでなく,患者の訴えを傾聴し,その真意をとらえ,その人らしさを尊重した看護の重要性を伝えるなど,看護の本質が詰まっています。

 看護師は患者の思いを受け止め,患者にとって最善の看護を懸命に提供します。しかし,時に最善であると思った看護が,患者の思いと「ズレ」てしまい,患者との関係性,コミュニケーションが円滑に進まなくなります。患者のためにと一生懸命故に「こんなに患者さんのことを考え,看護したのに」という思いが生じ,この重要な「ズレ」に気付かず,葛藤を抱え次の一歩が踏み出せない状況を招きます。

 例えば,入院時の患者情報を集めなければと咳き込む患者に矢継ぎ早に質問をしてしまう,リハビリの一環だからとできることは全て自分でやってもらおうとする……そういった場面がマンガで表現され,興味深く一気に読み進めることができます。挙げられた場面はまさに「患者あるある」で,苦笑してしまいました。

 読者は読み進める中で立ち止まる機会を得,日常行っている看護について,どのようにすれば患者の「してほしい看護」ができたのか,自分の提供した看護が患者とのズレを最小限にできる看護であったかを内省し,そのプロセスを通して,看護の不足点(ズレ)に気付きます。そして,この経験をもとに次の看護にどのように生かすかを見いだすことができます。

 本書はその気付きを与え,患者の声が看護師に届くようにと,そして自信と誇りを持って看護を提供できる看護職であってほしいと,著者のいわば分身であり教育者でもある“ナースレンジャー”の切なる願いを込めた一冊です。教育する側/される側双方が現場で生かせる実践本です。

 新人看護師の皆さんをはじめ,教育・指導をされている方,全ての看護職に,ぜひ手に取っていただき,「看護のバイブル」として活用されることをお勧めします。

A5・頁184 定価:本体2,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03831-7


こどもセルフケア看護理論

片田 範子 編

《評者》倉田 慶子(東邦大助教・看護学/小児看護専門看護師)

こども達への尊い思いを感じ,ケアの力強いよりどころとなる書

 こどもセルフケア看護理論は,オレム看護理論(以下,オレム)を基盤としている。看護に携わる者になじみ深いオレムであるが,読み解こうとするとなかなか難しい。大学院生のときに,成人と小児看護学領域の学生が合同でオレムを用いて事例を展開する課題に取り組んだのだが,オレムのいわんとするセルフケア不足をどのようにとらえるのかで議論が白熱した。成人と小児の場合では,明らかにセルフケアできる機能や行動が違うためである。その記憶から,本書が「こどものセルフケア不足」をどのようにとらえて臨床でケアしていくのかを興味深く読み進めた。

 こどもにおけるセルフケア不足について,「こどもにおいては,成人と比較して未熟であることや力が不足しているという意味ではなく,こども自身が本来的に期待される力を発揮してもまだこどもであるがゆえに必要なセルフケアが存在する状態である」(p.68)を読み,自身では表現できずにいた概念がすっと頭の中に入った。そして,「こどもは,親または養育者からの支援を必要とする存在であり,セルフケア能力が拡大し,自分自身でセルフケアを充足させることができるようになるまでは,常に誰かによって補完されることが必要となる」(pp.68-9)と述べられ,親や養育者がケアを提供する理由も明確に示されている。また,卵に見立てた図において,「こどものセルフケア」(黄身)と「こどもにとって補完される必要があるセルフケア」(白身)が成長発達と共に変化していく関係が示されている。補完される白身は,成長発達と共に縮小される。「こどもにとって必要なセルフケアを親または養育者が十分に補完できず,セルフケアが満たされない場合は,(中略)親または養育者は,自らの責任に基づいて,他のケア提供者(例えば,祖父母)を活用して,こどものセルフケアを補完することを試みる。このレベルでこどもにとって必要なセルフケアを補完されている場合は,専門者からの介入は不要となる」(p.69)と,介入の目標をイメージできる。看護者は,こどものセルフケア不足の部分,健康上の理由によりこどもが実施すべきでない活動,こどものエネルギー消費と治療範囲などを判断し,看護者が親や養育者に代わって援助をするのか,指導し方向づけるのか,身体的・精神的サポートをするのか,発達を促進する環境を提供・維持するのか,教育するのかを選択するのである。「第6章 こどもセルフケア看護理論の活用事例」は,臨床現場でぜひ活用してもらいたい。

 本書では,こどものセルフケア能力は生まれた時から備わっており,セルフケア能力が不足している存在ではなく,一人の人間としてその存在を尊重している。編集の片田範子氏をはじめとした執筆者の「こども達への尊い思い」が存分に伝わる。そして,思いにとどまらず,ケアの土台となる看護理論として構築されたことは,こどもの看護に携わる者にとって,何よりも力強いよりどころになるのではないだろうか。

B5・頁256 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03929-1


学生のための医療概論 第4版

小橋 元,近藤 克則,黒田 研二,千代 豪昭 編

《評者》杉森 裕樹(大東文化大教授・公衆衛生学)

「医療職になるとはどういうことか」を考える道標最新版

 本書は,初版発行(1999年)から,医療職をめざす学生に向け,一貫して「医療職になるということはどういうことか,どのような考えのもとに成長していけばいいのか」ということへの道標として編集されてきた。最新の第4版においてもそれは変わっていない。

 第1章では,医療の基本に人道主義・人権があるとし,その歴史を交えながらわかりやすく説明している。患者権利の尊重,インフォームド・コンセントを強調し,ロールプレイなどにより,医療現場で人の気持ちに配慮(想像力)することの大切さが学べる。また,電子カルテやクリニカルパスなどのチーム医療(多職種連携)の実践を紹介し,対話やシェアード・デシジョン・メイキング(SDM)を説明する内容となっている。第2章では,well-being(幸福・健康)の定義を紹介し,今日的課題である健康格差,国際生活機能分類(ICF),こころの病(精神疾患),エンパワメントを説明し,人々にとって健康や幸せであることの幅広さ・奥深さを学ぶ組み立てである。

 第3章は,医療の歴史と将来展望であり,感染症対策・非感染症(生活習慣病)対策を取り上げ,ゲノム医療,公害などの環境問題,薬害,統合医療,臓器移植・再生医療と医療において関心が高い新旧のテーマを扱っており,第4章では,地域包括ケアシステム,医療保険制度・介護保険制度,医療経済,災害医療,SDGsと,今日の医療システムが社会との接点なくしては成り立たないことが学べる。また,随所に配置されたコラムも,ヒポクラテスの誓い,脚気論争,ホームレス問題,iPS細胞,出生前診断,模擬患者と興味深い内容が満載だ。

 本書の基本思想は,初版から「患者中心の医療」と「多職種連携」で,第4版においても,全般にわたって通奏低音のように流れている。これは,「医療は科学に基づくアートであり,よい医療者になるためには,医学の実地教育だけではなく,人文教育の修得も必要である」と,故日野原重明先生が指摘した医学教育におけるリベラルアーツ(人間教育)の重要性にも通じるものであろう。

 今回の第4版から編者に医学教育のエキスパートである小橋元,近藤克則両氏も参加しており,これまでは看護学生を中心に読まれてきた本書だが,若き医学生や研修医,そしてさまざまな医療教育分野で「医療概論」を担当する医師教員,その医師に講義を依頼する専門学校や大学の看護教員にもぜひ読んでいただきたい。

 さらに,本書はその平易な文体によるわかりやすさも初版から一貫している。一般の人々にも,健康・医療に関する知識(ヘルスリテラシー)を養うためにも役立つことは言をまたない。今までの読者,新たな読者含め全ての読者が,日常生活の道標や将来への羅針盤として本書を大いに活用してもらえたらと願う。

B5・頁296 定価:本体3,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-04125-6


リーダーのための育み合う人間力
自分も周りも大事にして元気な職場をつくる

岡山 ミサ子 著

《評者》伊東 飛佳(八千代病院看護課長)

リーダーとして迷ったときに読み返したくなる一冊

 「自分のことは後回しにして頑張っているリーダーを応援したい」と,著者自らの経験をもとに,リーダーに必要な人間力の育み合い方やリーダー自身の心のケアについて書かれている本です。著者は,看護師キャリア40年,そのうちトップマネジャーを17年務め,現在は「人と人をつなぐワークショップデザイナー」として,医療・介護の現場を中心に対話の場をつくり,リーダーの育成に力を入れています。

 本書は2部構成となっており,第1部では,「これから求められるリーダーのあり方」について書かれています。あたたかさときびしさを持ち合わせたリーダーとしての姿勢やスタッフへの具体的な声の掛け方などがわかりやすく紹介されています。著者の実際の体験も随所で語られており,自分の体験と重ね合わせながら読めます。完璧なリーダーをめざして頑張り過ぎているリーダーや,リーダーを育てるのに苦労している管理職は必読です。リーダーとしての自分を振り返る良い機会になると同時に,誰もがリーダーシップを発揮できる元気な職場へと導いてくれます。

 第2部では,あたたかさときびしさを持ち合わせたリーダーになるために,その土台となる人間力の育み合い方について,「自分と他者を大事にする」「自分を豊かにする」「人とつながる」の3章構成で書かれています。周りとつながり,仕事を他者に任せながら一緒に育み合う人間関係をつくるためのワークが多数紹介されています。実際に著者が行ってきた研修や取り組みをもとに具体的に書かれているため,わかりやすく,翌日から実践することが可能な内容となっています。また,各項目にある「まとめ」は,自分の理解度を確認できると同時に,これからとるべき行動の参考にもなります。引用・参考文献も豊富で,さらに学びを深めたい時の道標になります。本書に書かれている全てを実践できなくても,自分を振り返りながら,少しずつ行っていく中で,人間力を育み合っていくことができると思います。日々リーダーとして仕事をする中で迷った時には,本書を読み返すことが助けになるでしょう。

 私は,著者の開催する「次世代リーダー研修」に参加したことがあります。本書には,研修で学んだことはもちろん,その他多くの人間力を育むための考え方や方法が盛り込まれており,研修で学んだことを振り返って定着させるのと同時に,さらに新しい知識を得ることができました。研修を受けた方もそうではない方も,本書を読み,仲間と横並びで育ち合える現場をつくっていただきたいと思います。

A5・頁240 定価:本体2,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-04195-9


新・栄養塾

大村 健二,濵田 康弘 編

《評者》矢吹 浩子(明和病院看護部長)

「PPNの合併症=静脈炎」のメカニズムまでわかる教本

 臨床栄養管理の重要性は,いまや医師や看護師だけでなく多くの医療職種に認知され,栄養サポートチームのみならず,現場の看護師も栄養管理の知識を深めています。看護師の場合,栄養管理の知識を習得するには基礎教育では限界があり,働き出してから研修会や書籍などによって習得しなければなりません。しかし,書籍もさまざまなため選び方は難しいでしょう。そこで「これは頭に入りやすい」というのが本書ではないかと思います。

 本書は10年前に出版された『栄養塾――症例で学ぶクリニカルパール』を進化させた内容ですが,編集に一層の工夫がなされました。冒頭から生化学を中心とした「栄養管理に必要な基礎知識」の章が約100ページに大幅に増ページされていたこととその内容の細かさに,一瞬「これは難しいかも」という印象がありましたが,読んでみると説明記述の直後に関連する解説があり,「なるほど」とうなってしまいます。もちろん生化学の項には臨床現場ではなじみの少ない単語がたくさん登場するので,看護師が生化学を理解し習得するには,ここからさらに「自分で調べる,学ぶ」という一歩を踏み出す必要があります。ですが各項,箇条書きにまとめてあるので,その一つひとつを順にみていけばよいでしょう。わかりにくい単語が少なからず出てくると思いますが,それを自身で調べて理解していくことで確実に知識として身についていきます。

 説明記述に関連事項の解説を加えているのは「臨床栄養 実践編」,「臨床栄養 病態編」「栄養管理のスキルアップ」といった章も同様で,これが本書の特徴だと思います。例えばPPNの合併症に静脈炎を教えるのはどのテキストでも同じですが,実はそのメカニズムを説明できる看護師は多くはないでしょう。またメカニズムまで解説している書籍も多くはありません。しかし本書では,静脈炎とpH,浸透圧の関係や,ビタミンと細菌性静脈炎の関係などが説明記述直後に併記されています(pp.132-3)。また,褥瘡症例への総エネルギー投与量に関しても,「傷害係数をいくら」にとか,「たんぱく投与量を体重あたりどれくらい」というような説明だけではなく,そのエビデンスとなる研究結果なども併記して解説されてあります(pp.209-10)。ふに落ちるように理解しやすい内容になっているし,ガイドラインのように客観的な根拠を知ることができます。

 一つひとつの説明に根拠や関連データなどを加えながら教えていく授業のような本書の構成は,「塾」というタイトルに実によく合っており,表紙のエンブレムも「塾」にふさわしくカッコいい。ペガサスと王冠を使ったエンブレムは著者の大村健二先生,濵田康弘先生の本書に対する自信とこだわりでしょうか。このエンブレムにまったく遜色がない本書は,今私が最もお薦めしたい栄養管理の教本です。

B5・頁288 定価:本体3,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-04135-5

関連書
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