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第3374号 2020年6月8日


グラフィックレコーディングのはじめかた

情報共有や自身の振り返りのために,簡単なイラストや記号を活用して記録に残す手法がグラフィックレコーディング(通称,グラレコ)。ノートを取るとき,ミニレクチャーや症例プレゼンテーションをするときなど,皆さんの身近なところにきっと役立つ場面があるはずです。それでは,新しい記録の姿をのぞいてみましょう。

[Lesson 7]実際に描いてみよう! 図解化編

岸 智子(福岡女子大学社会人学び直しプログラム コーディネーター)


前回よりつづく

 今回は,一度聞いただけでは理解しにくい話をわかりやすく伝える方法でもある「図解化」を,例題に沿ってご紹介していきます。

表にすることでスケジュール管理も容易に

 絵や図を用いて表現するグラフィックレコーディングでは,文字だけの表現よりも視覚に訴え掛けることができ,理解しやすくなります。特に図表やフローチャート図に代表される「図解化」を用いると,複雑な物事を簡潔に伝えることができます。実際に例題と合わせて考えていきましょう。

 たろう,はなこ,じろうの3人は,プロジェクトの発表資料を作成するため,打ち合わせを行うことになりました。スケジュールを確認したところ,たろうとじろうは平日の日中は時間が取れません。また,はなこは平日の夜に集まることはできませんが,電話やオンラインでのミーティングなら参加が可能とのことです。一方,たろうは土日に仕事が入ることもありますが,休みが取れれば参加できるようです。

 いかがでしょうか? 200字程度の短い文章ではありますが,一度目を通しただけでは各自の予定がどうなっているのか,3人の都合がつく時間帯はあるのか,どうすれば3人の予定が調整できるのかなどが,すぐにはわからないと思います。

 そこで,グラフィックレコーディングを応用した表の出番です。下記のように簡単な表にすることで,状況が一目でわかり,解決策を導き出すことが可能になります(本事例の場合,たろうに土日の仕事を休んでもらう,平日の夜にオンラインミーティングをするなどの選択肢が考えられます)。表の作成自体はさほど難しくありません。必要な情報だけを抜き出していけばよいのです。ぜひ意識的に使ってみてください。

複数の案を比較,検討する時にも有効

 表の作成は,比較検討をする際にも有効です。例えば,家族で過ごす夏休みの計画を立てる時など,複数の案を検討する時にメリットやデメリットを書き込むことで,整理しやすくなります。

 第3回(本紙3358号)で,「グラフィックレコーディングは自分の頭の中にあるもやもやとした考えを,手を動かし,とにかく書いてみることで思考の整理ができる」とご紹介しました。下記の例のように,悩んでいることや困っていること,結論を出したいことなどは,書き出すことで論点が整理されていきます

 家族で過ごす夏休みの計画を立てたい。

 子どもたちは友達一家とキャンプに行きたいらしい。自然と触れ合い,友達とも過ごせるキャンプはとてもよい計画である。近隣のキャンプ場であれば移動費もかからない。しかし万一,悪天候になった場合は計画自体がなくなってしまう。キャンプ用品もそろえなくてはならない。

 私は,遠くに住む高齢になった祖母に会いに行きたいと考えている。また,祖母の家の近くに住む,しばらく会っていない親戚にも家族を会わせたいし,子どもたちを飛行機に乗せてあげたい。ただ,飛行機代もかかり,泊りがけで訪問することで祖母の負担も増えることを心配している。

 何を重要視するのか,課題をどう解消するのかなど,書き出された項目に沿って検討していくことで,結論が出やすくなります。

物事の優先順位をつける時にもグラレコを

 次にご紹介するのは,たくさんの選択肢から有力な選択肢へと絞り込むペイオフマトリックスという手法です。アイデアややるべきことの優先順位を短時間で見極めたい時に有効です。例えば,次のような業務の分類に応用し,業務改善の資料として活用できます。

 本例では,緊急度は低くても重要度が高い業務を可視化するために資料を作成してみました。また同時に,重要度が低く,緊急度も低い業務については省力化や廃止を検討できる資料にもなっており,有益な図解化です。

 もちろん文字だけでこのペイオフマトリックスの図を作成しても十分に効果を発揮します。しかし,取り組む際の心情や置かれた状況を,表情のイラストも添えて表現することで,より実感値を持って重要度や優先度を把握できるようになるはずです。また,一般的な言葉を用いる際には簡単なイラストを添えることで,より具体的に内容を表すことができます。

 他の活用法としては,縦軸に「成果」,横軸に「難易度」を設定してみたり,縦軸に「効果」,横軸に「コスト」を配置してみたりするなど,整理しやすい項目を選択するとよいでしょう。

フローチャート図も図解化でスッキリ!!

 業務手順などを表すフローチャート図の作成を難しいと思う方もいるかもしれません。ですが,あまりルールや決まりごとは気にせず,まずは流れを把握することから始めるとよいと思います。次の例文を図解化してみましょう。

 私は,休みの前日は天気予報をチェックして,休みの日に何をするか考えます。晴れの予報が出ていたら洗濯をし,ランニングに出掛けます。雨の予報が出ていたら,読書やテレビを見るなどして室内で過ごすか,疲れを取るために少し長めの睡眠を取るなどしてのんびりと過ごします。

 天気予報をチェックしてから,「晴れ」「雨」で過ごし方を変えています。晴れの場合には洗濯とランニング,雨の場合は読書とテレビ,もしくは睡眠です。これをフローチャート図にしてみます。

 文章だけで読むよりも,矢印や四角を用いて表現することで,パッと見て行動パターンがわかりやすくなりました。このように文字だけでは伝わりにくい,すぐには理解できないことも,図解化によって格段に伝わりやすくなります。書き出すことで思考が整理されていくので,ぜひいろいろな場面で活用してみてください。

 次回は,講義や講演の内容をノートに取る際のポイントについてご紹介します。

(つづく)

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