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第3286号 2018年8月27日


Medical Library 書評・新刊案内


看護を教える人のための
経験型実習教育ワークブック

安酸 史子,北川 明 編

《評者》池西 靜江(Office Kyo-Shien代表)

不確実な実習現場での経験と教える人の支援が,学生を看護師に育てる

 臨地実習の「経験」が,学生を看護師に育てます。しかし,医療事故や患者の権利擁護に注目の集まる社会情勢の変遷により,看護師免許取得前の学生が現場で体験できることは,以前より少なくなってきました。そのため,「経験」をどう効果的に教えるかを考えなくてはいけません。

 また,実習教育の難しさは複数の意味での不確実性にあると思います。患者には,日々の病態や心理の変化,治療の効果や副反応の出現などの不確実性があります。学生には,知識・技術の未熟さに加えて,揺れ動く心理の不確実性があります。そして,両者の相互作用で成り立つ看護実践は,さらに不確実性を増します。しかし,不確実で正解が見えない経験を積んでこそ,教員・指導者の助言を得て経験を振り返り,学生は看護師になっていくことができるのです。

 ここで求められるのが,教える者の力量です。一人ひとり違う学生の経験を把握し,経験を「教材」として切り取り,何をどう教えるかをその場で考え,学生にかかわります。教える者にとって,正解が1つではない不確実さが実習教育を難しくします。

 このたび出版された本書は,教える者に大切な,しかし成書の少ないこうした現場ベースドの考え方とかかわりの道筋を示してくれています。まず,学生の直接的経験を把握し,明確にすることからスタートし,次に学習可能な内容とかかわりの方向を考え,最後に経験の意味付けを援助する,というものです。

 確かに自分自身の指導を振り返ってみますと,その道筋を意識せずにたどっていたように思います。それを明示してくれたことで,新しく教える立場になった者はずいぶん助けられると思います。

 本書はワークブックですので,その道筋を紙面上で自ら経験的にたどることができます。しかも,「あるある!」とうなずける具体的な事例がたくさん掲載されていますので,よいトレーニングになります。中でも,学生の強みを明確にするトレーニングは有効だと思います。

 個の伸長をめざす教育活動において,課題だけでなく,強みを見いだすことは重要です。ワークに取り組む中で,課題中心に学生を見る自己の傾向性に気付くこともあります。「記録が書けなくても,叱られることを覚悟で毎日実習に来る」という本書で紹介されている例も,まさしくその学生の大きな強みです。それを認めて,次のプロセスに進むと,学生の表情は変わってきます。その上で,学生の直接的経験を「教材」にして,何をどう教えるかを考えるトレーニングを積めば,効果的なかかわりができるようになると思います。

 本書は,そのようなパターンを踏襲して10事例について考えた後,次の18の研修事例は,その場面で何をどう教えるかについて,解答例のない課題に自分で取り組むという構成です。現場実践における解答は1つではないので,悩みながらその一つひとつに誠実に取り組む姿勢こそ,自らの教育力を磨くことになります。

 実習教育は難しいと思っている看護教員・臨地実習指導者の方はぜひ,ワークに取り組んでいただけるとよいと思います。

B5・頁192 定価:本体2,700円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03591-0


手順が見える! 次の動きがわかる!
消化器外科の手術看護

大野 義一朗 著

《評者》安達 洋祐(久留米大教授・医学教育研究センター長)

外科医の熱い思いが添えられた看護師のための手術書

 腹腔鏡手術が普及して約20年。開腹手術の時代の緊張感や一体感がなくなったなぁと寂しさを感じていたら,『手順が見える! 次の動きがわかる! 消化器外科の手術看護』という本が出た。手術室看護師のための手術書であり,市中病院で日常的に行っている一般外科の解説書である。

 中身を見ると,虫垂切除や胆囊摘出から肝臓切除や膵頭十二指腸切除まで10種類の手術が,概要・基本・手順の三本立てで記載されている。ちまたの類書にない魅力は,①外科医の思い,②看護師の視線,③編集者の熱意が詰まっていることであろう。

 著者は日本外科学会指導医のベテラン外科医であり,「手術の流れを理解してもらうこと」を重視している。「手順」の文章とイラストは隅々まで配慮が行き届いており,随所で術者の意図や操作の意味を示し,「テンポを大事に」「執刀医も苦戦」「看護師の役割が大きい」など,外科医の思いを添えている。

 執筆協力者として手術室スタッフ16人の名前が挙がっており,手術室看護師の熱い視線を感じる。使用器械,体位,麻酔,手術時間,手術適応の他,「おさえておきたい解剖の知識」「術後の観察Point」「Q&A」などを通して,手術室や外科病棟の看護師が知りたいことを見事に網羅している。

 イラストはカラーで美しく,全体像の中に局所を拡大して描いており,術野の展開や操作の内容をイメージしやすい。余分なものを削ぎ落とし重要なものを強調し,術者が見ているものを上手に表現している。手術は写真を掲載しただけでは理解しにくく,イラストの作成に編集者の工夫が感じられる。

 至るところに手術中のポイントが示されているのも,本書の特徴である。腹腔鏡手術では今どこを見ているか理解できること,胃切除ではリンパ節郭清と血管の処理,結腸切除では切る血管・残す血管と無影灯の操作,肝臓切除では血流遮断の時間的制約と出血への対応など,「キモとヤマ場」がよくわかる。

 手術を受ける患者は外科医に身を委ねるしかなく,外科医は信頼できる仲間がいるから手術を行える。手術はチームプレーであり,全てのスタッフが同じ目標に向かいながら力を合わせて行う作業である。緊張感があり責任が重いだけに,達成感や満足感も大きい。

 最近の医療は「多職種連携」や「チーム医療」が重視されているが,外科や手術は昔から連携や協力が必須であり,情報の共有や技術の伝承が当然であった。先輩には「ドクターとナースは車の両輪」と教わり,執刀医と器械出し看護師は「あうんの呼吸」を体現していた。

 著者は「執刀医の胸の内を理解した器械出しが苦境を救います」と述べている。私もいろいろな病院で看護師に助けられた外科医であり,同感である。看護師だけでなく,学生や研修医も本書を読んでほしい(個人的には,映画『孤高のメス』の堤真一と夏川結衣も見てほしい)。本書を通じて一人でも多くの看護師に「手術が好き」になってほしいと思う。

B5・頁128 定価:本体2,400円+税 医学書院
ISBN978-4-260-02200-2


実習指導を通して伝える看護
看護師を育てる人たちへ

吉田 みつ子 著

《評者》宮子 あずさ(看護師)

「こんなふうで良いの?」不安になったら読んでほしい

 看護師であれば皆臨地実習は経験し,それが学生指導にも反映されます。どんなに「昔と今は違う」「自分がされたように厳しくしてはならぬ」と自戒しても,経験が映り込む事実は動きません。この限界を超えるためには,まず今を知る必要があります。今の学生がどのようなまなざしで実習の現場を見て,何に困り,何を伝えれば一山越えられるのか。それが知りたいなら,この本にしっかり書いてありますよ。

 取り上げられる21の場面は,どれも指導者ならばぶんぶんと首を振ってうなずきたくなるような場面ばかり。私は特に,「限られた期間の中で,類推する力,観察する力をどう伸ばしますか?」と「理想と現実の矛盾を指摘する学生にどう対応しますか?」の二編から,多くの示唆を得ました。

 まず,「限られた期間の中で……」について。冒頭で,「昨今,急性期医療を担う病院の平均在院日数は1週間程度と短く,多くの学生が実習期間に2人程度の患者さんを受け持ちます。(略)2週間以上入院している患者さんは重症度が高く,学生が受け持つのは難しいのです」と,現状が示されます。

 こうした苦労は,私が看護学生だった昭和の終わりには,まだまだまれでした。入院期間は長く,4週間の実習期間で1人の患者さんを見るのが当たり前。急な逝去や退院があれば2人目を受け持ちましたが,それはよほどの「不運」と見られたものです。

 しかし,これが当たり前になった今,著者はその現状を受け入れ,それを生かす実習を考えます。そして,少ない断片的な情報を基に実習をするからこそ,それをつなぎ合わせ,患者像を描く“類推する力”を育てる必要がある,と説いています。

 次に,「理想と現実の矛盾を指摘する学生……」について。近年,入学してくる学生は,社会人経験のある人が増加傾向となり,「新人の大人化」と言うべき現象が進んでいます。看護師になる,と意欲的な人が多い反面,人生経験が豊富であるが故に,価値観が固定化される傾向もあります。そのため,時に非常に批判的な目で現場に向き合う人もいて,指導者が傷つく場合もあるほどです。

 そんな場面への筆者の語り口は,「学生が現場の矛盾や課題を批判したとき,現場のスタッフが,それらに対する苦悩や現実的にどのように対処したかという姿を学生に包み隠さず見せることが大事です」と実に明快。大事なのは答えではなく,問い続ける姿勢なのです。

 臨床実習の今を知り,手探りでやっている工夫を言葉にしてくれる本。「こんなふうで良いのかなあ」と不安になったときにひもとき,「まあまあ,これでよし」と自信をつけてください。

A5・頁176 定価:本体2,300円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03529-3


《理学療法NAVI》
この30題で呼吸理学療法に強くなる

高橋 仁美 著

《評者》伊藤 登茂子(秋田大教授・臨床看護学)

患者さんの呼吸を良好にする「なるほど!」が詰まった一冊

 日頃,意識もせずに呼吸ができていることは,あらためて考えると幸せなことと思います。呼吸がヒトの生命活動にとって重要であることや,人間としての生活や営みに欠くことのできない基本的ニードの一つであることは,看護基礎教育の初期に学ぶことでもあります。

 ここで紹介させていただく本の新刊案内を初めて目にしたとき,「ついに出されましたね!」と顔がほころびました。なぜなら,著者の高橋仁美先生はこれまで多くの共著本を出版されていますが,今回は単著。また,長年にわたる内部障害リハビリテーションの臨床経験,研究活動,そして研修会などでの教育活動と,枚挙にいとまがないご活躍の中,一度まとめておこうと考えられたのではないかと推察できたからです。「これを読んでくれたら大丈夫。一緒に頑張りましょう」と語っているような表紙(帯)の顔写真から,そうした考えは瞬時に浮かんでまいりました。

 果たして手に取ってみると,呼吸の基礎知識・呼吸アセスメント・呼吸ケアについてQuestionが30個設定されており,ビギナー理学療法士(PT)とエキスパートPTとの対話で,その正解を明らかにし,加えて本質的に重要となる写真や図表が理解を助けてくれ,顔写真が語っていると感じた言葉はおおむね当たっていると確信しました。元来ユーモアたっぷりの高橋先生ですが,読者をとりこにする対話の展開,「あ,なるほど!」と納得のいく明確な根拠,そして要点のわかりやすさからモチベーションが上がること間違いなしです。どのQuestionから読むこともできるため,興味関心や必要に応じて理解を深めることが可能です。読むにつれて内容はもとより編集の絶妙さも感じるところです。

 本のタイトルからPTに向けた著書と思われるかもしれません。多職種連携の時代にあって,呼吸理学療法の必要な状態にある方への呼吸ケアはPTに依頼すれば済むかもしれません。ところが現実はどうでしょうか。そうした体制が整っていると思える看護職はどれほど存在するでしょうか。

 また,看護職の活躍の場は病院に限らず,在宅療養支援の場にも広がっていることは言うまでもない現実です。そのような中で呼吸に関して「なぜ? どうして? どうする?」といった疑問を覚える看護職の方や学習途上の看護学生さん,フィジカルアセスメントを担当する看護教員の方には特に本書をお薦めいたします。

 本書によって得られる観察の視点と判断の要点や基準は,きっと看護の対象である人々の安楽な姿勢,快適な療養環境,適切な酸素吸入療法,さらに呼吸不全状態をより良好にしていくために必要な生活指導に生かされるものと思います。それにより,呼吸を意識せずにはいられない状態で生活を送っている人々に看護として安楽な呼吸を保証し,その人が望む時間を過ごしていかれることを支援できるものと思います。

 看護学生から現役の看護職の方,そして看護教育に携わる多くの方々に,本書のエキスパートPTとビギナーPTとの対話に入り込み,Questionの課題状況についてディスカッションを楽しんでいただければ幸いです。

A5・頁252 定価:本体3,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-03261-2

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