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第3194号 2016年10月10日


めざせ!病棟リライアンス
できるレジデントになるための㊙マニュアル

ヒトはいいけど要領はイマイチな研修医1年目のへっぽこ先生は,病棟業務がちょっと苦手(汗)。でもいつかは皆に「頼られる人(reliance=リライアンス)」になるため,日々奮闘中!!……なのですが,へっぽこ先生は今日も病棟で頭を抱えています。

[第5話]
指さし確認!
入院指示・デバイス・家族への連絡・転院調整

安藤 大樹(岐阜市民病院総合内科・リウマチ膠原病センター)


前回よりつづく

 内科病棟での研修が始まって2か月,へっぽこ先生もどうにか病棟になじんできました。病棟スタッフとの会話も何となく様になってきましたし,担当患者さんのことを聞かれる機会も増えてきました。「もしかして,僕もやっていけるかも!?」なんて調子に乗りかけていたへっぽこ先生のところへ,担当看護師さんが「へっぽこ先生,○○さんのバルーン,まだ入れておくんですか? 調子も随分良くなってきていますけど,いつまで尿量のカウントをしなきゃいけないんですか?」と質問に来ました。

(へっぽこ先生) ええ~と,この方は心不全もあるから尿量は測らなきゃいけなくて……。

「もちろんそんなことはわかってますけど,今は全然症状ないですよ。ご本人も苦痛だっておっしゃってますし,ご自身で蓄尿もできます。何より,そろそろ退院なんじゃないですか?」と,看護師さんは納得がいかない様子。

(へっぽこ先生) そう言われればそうなんですけど……。
(セワシ先生) へっぽこ先生,もしかして入院時の指示を見直してないんじゃない? 患者さんの状態は日々変わっていくんだから,最初の指示のままじゃ……ねぇ。


 患者さんの状態は日々変わっていく……当たり前のことなのですが,入院時の“大きな山”を越えることに力を注ぎすぎて,その後の入院経過観察が「何となく」になってしまうことが多く見受けられます(実はこれ,指導医の先生のほうが多かったりするかも)。ミスの多くは,この“山を登り終えた後”に見られるのです。もちろん,生命を扱う仕事に「何となく」は厳禁! そこで,ヒューマンエラーを回避するために鉄道や製造業などで当たり前のように行われている“指さし確認”,これを日々の診療に取り入れてみましょう! あなたの入院診療に“深み”が出てくると思いますよ。

まずは何に指をさす?

 じゃあ,毎日毎日,何でもかんでも“指さし確認”をすればいいかというと,そんなことはありません。忙しい病棟業務を効率良く進めるためには,メリハリを付けることが肝心。まずはチェック項目を挙げ,どれくらいの頻度でチェックするかを決めましょう。項目は患者さんによって異なりますが,今回は一般的に注意すべき項目について考えていきたいと思います()。

 指さし確認の頻度

【毎日指さし!】 バイタルサイン,点滴,デバイス

 バイタルサインを毎日確認するのは当然のことですよね。むしろこれは,条件反射で確認するようになっていないとダメです。また,治療内容は頻繁に確認すべき項目の一つですが,特に点滴の内容については毎日確認しましょう。急性期の病態に対する治療は,「少しやりすぎ!?」くらいなこともあるため,症状が安定したのであれば見直しが必要です。例えば敗血症性ショックに対する輸液は,以前のガイドラインで推奨されていたような厳密な決まりはなくなったものの,「血圧を保つためにガンガン輸液!」という点はあまり変わりありません。急性期のバイタルサインを安定させることが治療成功の決め手になるので,救命のためには多少の心不全の合併も覚悟せざるを得ないのです。ただし,その輸液内容を「何となく」続けていると……どうなるかは言わずもがなですよね。

 意外と忘れがちなのが,デバイスの確認。救急外来から入院する際,「とりあえずバルーン入れておいて!」みたいな会話を聞きませんか? 恐らく,“何かにつなぐことが入院治療”という間違った認識が広がっているからではないかと思います。もちろんそれが必要な場合もありますが,“不必要な異物は極力外す”ことが大原則! 中心静脈カテーテルはもちろん,経鼻経管チューブ(鼻翼潰瘍,副鼻腔炎),末梢点滴(蜂窩織炎,静脈炎),尿道カテーテル(カテーテル関連尿路感染症,膀胱結石症,神経因性膀胱)など,リスクのオンパレードです。それに,鼻や尿道に無駄に管が入っているなんて,誰だって嫌ですよね。

【3日ごとに指さし!】 入院指示,服薬,検査予定

 冒頭の“入院指示の出しっぱなし”は,担当看護師さんの仕事を増やしてしまいますし,そのままあなたの病棟での評価低下につながるかもしれません。何より迷惑するのは患者さんです。目的もわからず尿をずっとためさせられたり,とうの昔に安定しているのにいつまでも血糖測定のために指に針を刺されていたり,すっかり落ち着いているのに抑制され続けていたりすることは,患者さんにとって不利益だらけです。毎日変更していては混乱を招きますが,患者さんの状態をアセスメントする良い機会にもなるので,少なくとも看護師さんに指摘される前に確認しておきたいところです。もちろん,変更した際は担当看護師さんに伝えることもお忘れなく。

 点滴ほどの頻度でなくてもいいですが,服薬内容の確認は非常に大切です。最近は薬剤師さんが服薬管理を行う病院が増えてきたので,ありがたいことにわれわれの仕事は随分楽になりました。ただ,そのために“主治医が服薬内容を把握していない”ケースも見受けられます。「薬は全ての症状に対する“容疑者”」ですから,服薬数が増えれば増えるほど当然リスクは大きくなります。

 「検査予定の把握なんて当たり前でしょ!?」と思うかもしれませんが,慣れてくると意外とこれも落とし穴になります。また,検査予定を患者さんに伝えることもおざなりになりがちです。研修期間は,不安を抱えて入院生活を送る患者さんの一番の理解者になれるチャンスです。検査予定を紙に書いて渡したり,逐一検査結果を説明したりと,きめ細かい気遣いを心掛けてみましょう。

【週1で指さし!】 家族への説明,転院・退院調整

 実はトラブルの元になる可能性が高いのが,家族への定期的な説明を怠ることです。入院当初は,病態の変化も大きく,家族の来院回数が多いこともあり,家族と接する機会は比較的多いと思います。ところがいったん病状が落ち着くと,何となく「ひと仕事終了!」みたいなモードになっちゃうんですよね。新しい患者さんが次々入院してくる状況では,仕方がない部分もあるかもしれません。でも,家族にとってそんなことは関係ありません。電話連絡でも結構です。担当看護師さんに「先生,○○さんのご家族が,主治医からの説明が全然ないって怒ってらっしゃいましたよ」なんて言われる前に,週に1回程度はご家族への直近の連絡日の確認をしましょう。

 転院・退院の調整も同様です。残念ながら指導医の中にも,「病気を治したから自分の仕事は終了! 転院依頼も書いた! 後はヨロシク!」なんて方がいらっしゃいます。もちろん退院に向けた調整は,医療ソーシャルワーカーの方々の力を借りなければ進められませんが,患者さんが退院するまでの責任者は主治医です。少なくとも,①本人や家族がどういった希望を持っているのか(自宅退院? リハビリ継続希望?),②それらの希望に沿うために何が問題になっているのか(転院先で管理可能? 入所にあたり介護保険の認定は?),③転院先(もしくは入所先)の候補はどこか,④転院の話は具体的にどの程度進んでいるのか,⑤転院先の担当者はいつ面談に来院するか,といった点は把握しておきたいところです。

 「これって主治医の仕事だから,研修医の期間はいいでしょ!?」なんて言わないでくださいね。ここに挙げた項目は全て,「どれだけ患者さんのことを知っているか」にかかっています。繰り返しになりますが,研修期間は患者さんの一番の理解者になれるチャンスです。「主治医の足りないところを,自分が補ってやる!」くらいの気概でいきましょう!

セワシ先生の今月のひと言

入院時の大きな山を乗り越えたら,“指さし確認”開始! 毎日確認するもの,3日ごとに確認するもの,週1で確認するものを分けると効果的。指さしで,何が足りなくて何が余分かを考えると,患者さん,家族,担当看護師さん,みんながハッピー! 患者さんをよく知るためのツールにもなりますよ。

つづく

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