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第3187号 2016年8月22日


第14回日本臨床腫瘍学会開催


 第14回日本臨床腫瘍学会学術集会(会長=神戸大大学院・南博信氏)が,7月28~30日,神戸国際展示場,他(兵庫県神戸市)にて,「Breaking Through the Barriers: Optimizing Outcomes by Integration and Interaction」をテーマに開催された。本紙では,免疫療法関連企画の中から,パネルディスカッション「免疫チェックポイント阻害薬の副作用管理」(司会=和歌山県立医大・山本信之氏,がん研有明病院・西尾誠人氏)の模様を紹介する。

領域横断・職種横断のチームマネジメントが必要

南博信会長
 「いつ,どのような種類の免疫関連有害事象(以下,irAE)が生じるか予想することは事実上困難である」。そう説明したのは,腫瘍内科医の北野滋久氏(国立がん研究センター中央病院)。従来の抗がん薬に比べて免疫チェックポイント阻害薬による副作用の発生頻度は低いものの,irAEは胃腸障害・肝障害・肺臓炎・皮膚障害・神経障害・内分泌障害など幅広い範囲に生じ得る。特に内分泌障害は不可逆で,ホルモン補充療法から離脱できない症例が多い。また,発症時期は治療中が多いが,投与後数週から数か月後に発症することもある。さらに,複合的がん免疫療法(併用療法)では,同時併用による副作用の増強に加え,投与順序による副作用の出現もある。氏は,ベースラインと各回投与前に肝機能・血糖・甲状腺機能の血液検査を行うこと,安全性を重視しステロイド等で積極的に副作用対策を行うことを推奨(ただし,腸管穿孔例,劇症1型糖尿病例では投与しない)。順次投与であっても免疫チェックポイント阻害薬の影響に留意するよう注意を呼び掛けた。

 irAEのうち,死亡例も報告されている間質性肺疾患(以下,ILD)については,岡本勇氏(九大病院)が解説した。免疫チェックポイント阻害薬のうち,オプジーボを使用した非小細胞肺がん患者数は2016年5月4日時点で推定4593人。その内,ILD発症は2.9%(134例),死亡は0.3%(14例)。ILD発症例の約7割は,投与開始4週間以内に発症している。同大では,添付文書や適正使用に関する留意事項を基にirAEの初期症状をまとめた「副作用確認シート」を作成し,副作用の早期発見に努めている。さらに,添付文書上は禁忌ではないが,自己免疫疾患を増悪する可能性があるため,シェーグレン症候群の場合は他のレジメン使用を推奨,自覚症状や他覚所見に乏しい場合でも抗核抗体が160倍以上であれば膠原病内科を受診,リウマチ因子や抗核抗体の導入前スクリーニングをルーチンで行うなどの対策を行っていると紹介した。

 チームでの取り組みを紹介したのは,中島貴子氏(聖マリアンナ医大)。同大副作用対策チームでは,①投与前問診票・チェックリストの作成,②検査項目セット登録,③投与例リストの作成・カンファランスでのアップデート,④チームメンバーメーリングリストによる情報共有,⑤院内勉強会の開催などの活動を行っている。同大ではこれまでに免疫チェックポイント阻害薬を延べ188回投与し,各種副作用例を経験したが,チームでの対応が功を奏し,副作用による中止に至った症例はないという。

 外来看護師の小貫恵理佳氏(国立がん研究センター中央病院)は,患者本人は副作用と気付いていない訴えの中から看護師がirAEを発見した事例を挙げ,副作用の予測が難しいからこそ,多職種で異常の早期発見に努める必要性があるとの考えを示した。さらに,免疫チェックポイント阻害薬は副作用マネジメントを的確に行えば就労を継続できる治療薬であるため,混乱期に退職等の決断をしないように伝えることや,セルフモニタリングや副作用出現時の対処法などの患者教育も重要だと強調した。

 薬剤師の立場から登壇したのは,藤原季美子氏(近畿大病院)。氏は,irAEか否かは症状からの判別が難しいが,副作用の発症時期や頻度を把握しておくことは重要であると述べた。オプジーボの悪性黒色腫への使用の場合,10%以上の高頻度な副作用は皮膚疾患,消化管障害,10%未満の副作用は内分泌障害,肝障害,肺疾患,腎障害だという。現在,複数の免疫チェックポイント阻害薬が臨床試験中であり,今後,適応がん腫,薬剤が増え,使用する診療科の増加やさまざまな背景を持った患者への使用が予想される。氏は,治療開始前のスクリーニングと開始後のモニタリングが不可欠だと指摘し,講演を締めくくった。