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第3132号 2015年7月6日


第50回日本理学療法学術大会開催


 第50回日本理学療法学術大会(大会長=名大大学院・内山靖氏)が2015年6月5-7日,東京国際フォーラム(東京都千代田区)で開催された。「理学療法50年のあゆみと展望――新たなる可能性への挑戦」をテーマに掲げた今回,参加者は1万人を超えた。約2000の応募採択演題発表の他,日本整形外科学会,日本医学教育学会,日本生理学会などとの合同シンポジウムも開催された。本紙では大会長基調講演と,50年の歴史と展望が語られたシンポジウムの模様を報告する。

次の50年,「自律した理学療法」をめざして

内山靖大会長
 大会長基調講演に立った内山氏は,「健康寿命の延伸」という,医療に対する国民の期待に応える方法に,「生活の場に応じた連続する医療・福祉の提供」と,「医療の透明性と説明責任の推進」の2つがあると提示。これに応える専門職の役割は「研究・臨床・教育」の他に,地域支援や国際協力などの「社会貢献」,診療・労務管理,政策提言などを担う「管理」も含まれると位置付けた。理学療法士が誕生した1966年から今日までの50年は,理学療法の自立と理学療法学の確立,高等教育の推進や国際水準への到達を目標とした歩みがあったという。2015年以降は,「自律した理学療法」の実現が“新たなる挑戦”になるとし,統合と臨床適用を行う理学療法学の体系化,大学・大学院教育の整備と国際標準の具現化,さらには理学療法学による社会の創造や,多様なキャリアパスの開発(支援)が重要になると訴えた。

 続いてのシンポジウム「理学療法50年のあゆみと展望――新たなる可能性への挑戦 わが国の理学療法の歴史と継承」(座長=茨城県立医療大名誉教授・伊東元氏,群馬パース大・高橋正明氏)の最初の登壇者は,九州栄養福祉大の橋元隆氏。「なぜ“リハビリテーションの陽は西から昇った”と言われたのか」と問うた氏は,戦後の北九州地区における産業の特色と労働災害の多発によってリハビリテーションの役割が認識され,施設の整備や人材育成が進んだためと経緯を紹介した。氏は,過去50年の前半25年は理学療法士の領域確保と身分保障の推進,後半25年は理学療法の科学性探究と職域拡大が進められたと振り返り,今後は医療職だけでなく,保健・福祉・行政関係者など他職種との並列的な連携関係を構築することが重要と呼び掛けた。

 続いて登壇した座長の伊東氏は,「研究・臨床・教育」の3本柱の相互関連性と独自性から理学療法の展望を語った。氏は,研究と臨床が相互に関連することでエビデンスを生み,臨床と教育の関連は双方が学び合える関係性を築く,そして教育と研究は学問の新たな枠組みを創造するとの見解を示した。独自性ある理学療法の拡大には,個々の理学療法士が3領域のセンスを持ち,協会や病院・教育機関などの各組織が3領域の相互関連性と独自性を意識し機能させることが重要と述べた。

 「当時は50年後のことなど想像できなかった」。こう語ったのは,日本初の理学療法士養成校である国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院の第1期生である渡辺京子氏(元亀田メディカルセンター)。学生時代から今日に至る50年の理学療法士人生を振り返った。氏は,「50年後の予測」として,健康寿命の延伸や未病を減らす“病気と健康の間”への介入に,「理学療法士の役割が広がる」と期待を示した。

 木村貞治氏(信州大)は,「根拠に基づく理学療法(EBPT)」の推進を提唱した。氏は,EBPTの実践は,臨床判断の根拠の妥当性や,患者の理解や治療への意欲を高める他,チーム医療を展開する他職種間の理解が促されるなどの意義があると強調。今後は,日常的に実践・経験している「暗黙知」を構造化されたフォーマットで「形式知」に整理するとともに,それらの形式知を題材として実施した臨床研究結果を発信するためのデータベース構築が課題と語った。

 医・工学連携について紹介したのは九州看護福祉大大学院の加藤浩氏。股関節疾患患者の歩行分析において筋が収縮する際に発生する活動電位を定量化する表面筋電図(EMG)を用いた従来の方法(FFT周波数解析)は,時間情報の欠陥と信号波形の定常性の2つの欠陥があるという。そこで工学技術のwavelet周波数解析を用いることで,困難だった歩行動作時の筋活動評価が可能になったと紹介。本研究から開発された製品が,経産省の「第5回ものづくり日本大賞」で「中国経済産業局長賞」を受賞したことに触れ,「研究のための研究にとどまってはいけない。臨床普及と臨床の質の向上が重要で,理学療法は今後,工学や基礎医学,企業との連携も積極的に行う必要性がある」と述べた。