医学書院

検索
HOME週刊医学界新聞 > 第3007号 2012年12月17日

第3007号 2012年12月17日


Medical Library 書評・新刊案内


フィジカルアセスメントをケアにつなげる
12事例で学ぶ看護の要点

藤崎 郁 編

《評 者》任 和子(京大大学院教授・臨床看護学)

フィジカルアセスメントのシミュレーション研修に最適な事例集

 今日,看護師の働く場や病院の機能にかかわらず,看護師の臨床判断には高い能力が求められている。そこで不可欠な技術がフィジカルアセスメントである。頭から爪先(head to toe)まで,視診,打診,聴診,触診などの技術を用いて行うフィジカルアセスメントのトレーニングも看護基礎教育から行われるようになっている。

 本書のタイトルにも「フィジカルアセスメント」という用語が含まれており,系統立てたフィジカルアセスメントの解説を想像するが,むしろサブタイトル「12事例で学ぶ看護の要点」が本書の内容を明確に指している。看護師は何を手がかりに判断し行動しているのか,熟練したジェネラリスト看護師の看護の過程を綿密に描いている。各事例の最後にある「この事例を通して伝えたいこと」は看護の機能をベッドサイドの視点から理解でき,系統立てたフィジカルアセスメントを身につける意義の理解につながるところである。

 本書の特徴は「急な発熱を来した高齢者」や「ADLの低下したパーキンソン病患者の清拭時」など看護ケアの具体的な場面を設定して,「看護師が使うフィジカルアセスメント」を詳細に解説したことにある。「糖尿病の患者教育」や「終末期がん患者の退院支援場面」など,患者のセルフマネジメント支援や地域連携に生かせる場面も取り上げられている。例えば直腸がんの術後検診で1泊入院した糖尿病患者の事例では,看護師がフィジカルアセスメントの技術を身につけているか否かでどれほど看護ケアの質が変わり,患者のQOLに大きく影響するかを見事に描き出している。どの事例もその設定が秀逸である。

 看護基礎教育においても継続教育においても,限られた時間で学習効果を得るために,事例をベースにしたシミュレーション研修を取り入れている。その際の最大の難関は,学習目標に沿った教材の開発である。本書では各事例の最初に簡潔に患者の状況が示され,介入や時間の経過とともに患者状態が追加され,評価まで記述されている。したがって,このままシミュレーション研修の教材として用いることができる。また,本書を参考にしてオリジナルの教材を作成することも可能である。本書を活用して教材を作成することは教える側の最良の学習となるに違いない。

 このように本書は,その学習目標によっていかようにもアレンジすることができるため,看護基礎教育においても継続教育においても,幅広い層に愛される書籍になると思う。長らく地道に,系統立てたフィジカルアセスメントを教え学んできた著者陣だからこそのプロダクトである。

B5・頁144 定価2,310円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01235-5


《看護ワンテーマBOOK》
快適!ストーマ生活
日常のお手入れから旅行まで

松浦 信子,山田 陽子 著

《評 者》穴澤 貞夫(高津看護専門学校)

過酷な障害としてのストーマに立ち向かうために

 現在,医療の現場では実にさまざまな手術が行われているが,そのなかでストーマ手術は一見手技的に最も単純で簡単な手術にみえる。がしかし,これは大いなる誤解である。ストーマは極めて気難しい,扱いの厄介な人工の構造物なのである。

 ストーマが造られた患者さん(ストーマ保有者)にとって初めて医師からストーマを造ることが必要と言われたとき,果たして何人が,ストーマがどのようなものであるかを理解できるだろうか? ストーマは,造られて初めて,経験して初めて理解できる厄介な“障害”なのである。

 あたかも括約筋機能を有しているがごとき誤解を与える「人工肛門・人工膀胱」という言葉が今や使われなくなった理由はここにある。1700年代初頭に初めてストーマ手術が行われてからストーマ医療は300年の時を刻んだが,いまだに人類の夢であるコンチネンスを有するストーマ手術は開発されていない。よってストーマでは完全失禁という過酷な排泄機能障害がもたらされる。

 便尿の垂れ流しによって引き起こされる事象は複雑である。そして現代社会を支える近代の衛生思想では便尿は不潔の根源物と認識され,それらを何かに封じ込めるか,遠ざけるかによって社会生活が営まれている。言い換えればストーマという障害は社会性を持っており,よってこの障害の克服にはことさら指導書が必要となる。そしてストーマの管理指導書は,管理指導を行う医療者向けのものと,ストーマ保有者向けのものと大きく2つに分けられるが,本書は両者に焦点を当てた指導書として作られている。

 すでに述べたように,ストーマによってもたらされる障害状況は複雑多岐にわたるので,指導書として遺漏のない編集をめざすと膨大なボリュームの成書になりかねず,読む者にとってしばしば読破不能となる。ストーマの指導書はこの点で特に留意する必要がある。すなわち,(1)複雑な事象を平易に書くことに加えて,(2)保有者であれ医療者であれ,今どんな問題に直面しているか,簡単に記述部にアプローチできること,の2点が重要となる。

 そのような点で本書は大変よく工夫が凝らされた利便性の高い指導書と評価される。本書の著者である松浦信子さん,山田陽子さんは,ストーマ手術数では日本有数のがん研有明病院で活躍された経験豊かな皮膚・排泄ケア認定看護師で,本書の随所にその豊かな経験に基づく含蓄の深い記述が感じられ,ストーマ保有者のみならずわれわれ医療人も手元に一冊備えたくなる指導書として仕上がっている。

B5変型・頁128 定価1,890円(税5%込)医学書院
ISBN978-4-260-01601-8

関連書
    関連書はありません