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フィジカルアセスメントをケアにつなげる

12事例で学ぶ看護の要点

編集:藤崎 郁

  • 判型 B5
  • 頁 144
  • 発行 2012年04月
  • 定価 2,376円 (本体2,200円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01235-5
フィジカルアセスメントの技術をいかにケアにつなげ、看護への信頼をつかむか
ともすれば手順を覚えるだけで終わってしまうフィジカルアセスメントの技術を、臨床現場でどのようにケアにつなげて使うかを学ぶ事例集。クリティカルから在宅まで、急性・慢性の12例の患者のケアとやりとりを通じ、看護師が用いるフィジカルアセスメント技術が、いかに看護への信頼を得る有用なツールであるかが見えてくる。
序 文
序にかえて

 この本を手にとってくださっているかたはナースでしょうか,看護学生さんでしょうか。看護の先生かもしれません。いずれにせよ,看護のことをまじめに考え,ケアすることの本質を見極めたいと思ってくださっているかたに違いありません。本書「フィジカルアセスメントをケアにつなげる」...
序にかえて

 この本を手にとってくださっているかたはナースでしょうか,看護学生さんでしょうか。看護の先生かもしれません。いずれにせよ,看護のことをまじめに考え,ケアすることの本質を見極めたいと思ってくださっているかたに違いありません。本書「フィジカルアセスメントをケアにつなげる」はそんな人たちにこそ読んでいただきたい本だからです。
 対象者の主観的情報を得るための「問診」を筆頭に,「視診・聴診・打診・触診」の技術と,それらにもとづく臨床判断の技術をフィジカルアセスメントと総称します。それにはバイタルサインの測定も含まれることがあります。これらは医師の指示なしにナースでも実施可能なため,いまや看護の臨床判断にも欠かせない技術となっています。
 医師はこの技術をおもに医学的診断や全身状態のスクリーニングの基本として用いますが,ナースは,看護ケアを行う際の対象理解の基盤としてはもちろん,看護成果や看護介入の選択・具体化の基盤として,あるいは看護介入の成果の判断材料として,このフィジカルアセスメントの技術を用います。看護において「観察」と呼びならわしてきた行為は,すべてこの技術に含まれます。看護における観察の重要性は誰もが実感することですが,実際に行うとなったら難しいこともよく知られています。本書ではその実際をできるだけ具体的に記述することを試みました。
 本書では,ナースの行うべきフィジカルアセスメントの実際を示し,看護の臨床判断を日常のケアにどのように活かすのかを具体的な事例で示すため12人のナースが登場します。いずれも自分が病気になったらこんなふうにケアしてほしいと思えるようなナースばかりです。また12の事例で扱っている看護場面(の連続)は,どれもが,いまの日本の医療現場(とくに病院)においてごくふつうに見かける一般的な病気や病状の患者さんとご家族に関するごくありふれた看護場面です。どの看護場面でも,そこに書かれている看護介入のメニューには,なにも目新しいものや特別のものはありません。見守りや清拭や更衣や食事介助といった日常の看護ケアが書かれています。
 実際の看護場面では,ナースは手やからだを動かしながら頭と心を連動して働かせる必要がありますが,本書では,日常の看護ケアとフィジカルアセスメントの連動のさまを可視化すべく,できるだけ細かな描写を試みています。そのために少し饒舌な印象を受けるかもしれません。いくつもの看護行為と観察の組み合わせからなる看護ケアを文字で読むには少々時間がかかりますが,自分で実践するとなればあっというまです。そのあっというまにナースはたくさんのことを考え,感じ,調べ,確認しながら,頭を使い,目を見開き,心を砕いて慎重に丁寧にケアを行っています。実践のスピード感に文字を読むスピードが追い付かず,はじめはわかりにくいと感じるかもしれませんが,繰り返し注意深く読んでいただきければ,フィジカルアセスメントの技術を看護ケアのなかに織り込んでいくナースたちの頭の使い方や臨床判断の実際をそのスピード感とともに実感することができるはずです。
 うれしいことに,本書の校正刷りを読んでもらった看護学生さんたちには,「臨場感があってナースの観察とケアの内容が具体的にわかる」,「看護そのものが書かれている」,「病気や治療のことをよく知らなくても状況が目に浮かぶ」,「実習前に読みたかった」と好評でした。各事例で展開する看護場面の臨場感を楽しめるところまで読み込めば,そこに看護の本質が現れているということに納得していただけるに違いありません。事例のなかのナースたちが行っている行為のひとつひとつ,そしてその連続を単なる「看護業務」ではなく「看護ケア」にしているものは臨床判断だということ,臨床判断には根拠が必要でありその根拠を提供してくれるのがナースのフィジカルアセスメントの技術だということを知っていただけたらと思います。
 フィジカルアセスメントの技術をうまく活用することで,患者さん自身が行動変容を起こすきっかけをつくれたり,自分の病気に対するさらなる知識獲得への意欲を高めるための動機づけとなることも少なくありません。そういった行動面へのアプローチの手がかりとしても,フィジカルアセスメントという技術は,ナースにとってとても重要かつ有用な技術です。さらには,この技術を駆使することによって,患者さんを苦しませている症状や徴候にナースがもっともっと関心を向けることができれば,より難しいといわれている患者さんの心理的な側面や社会的な側面に対するアセスメントも,単に話しを聞くアプローチだけよりも,ずっと容易にその手がかりを得ることができます。

 看護ケアとフィジカルアセスメントの技術の親和性に魅了された私が,医学書や欧米の看護実践書で学んだ知識をもとに日本のナースや看護学生さんにその活用方法を伝える機会を与えていただくようになってから既に15年余りが過ぎました。執筆に携わってくれた著者のみなさんは,縁あってフィジカルアセスメントの技術をいっしょに学ぶ機会を得,折に触れ集まっては切磋琢磨してその技術を磨き,各人の臨床や教育のなかでその技を試し深めてきた仲間です。いずれも,「看護大好き」,「患者さんいのち」の仲間であり,少々フィジカルオタク(!)のきらいはありますが,この技術を身に着けることを通して,自分たちの日々行うケアが深くなり,看護が面白くなり,ナースとしての成長を実感してきました。この実感をみなさんにもお届けしたいと思い,みんなで事例を持ち寄って執筆に取り掛かりました。思いのほか時間がかかりましたが,ナースの臨床判断に裏打ちされたケアの大切さを信じて私たちの活動を長い間辛抱強く応援してくださった医学書院の七尾清さんと,支え続けてくれたそれぞれの家族,出版を待っていてくださった全国のみなさんに感謝の意をお伝えします。
 
 平成24年3月
 満開の桜の下で
 藤崎 郁
書 評
  • フィジカルアセスメントのシミュレーション研修に最適な事例集
    書評者:任 和子(京大大学院教授・臨床看護学)

     今日,看護師の働く場や病院の機能にかかわらず,看護師の臨床判断には高い能力が求められている。そこで不可欠な技術がフィジカルアセスメントである。頭から爪先(head to toe)まで,視診,打診,聴診,触診などの技術を用いて行うフィジカルアセスメントのトレーニングも看護基礎教育から行われるようにな...
    フィジカルアセスメントのシミュレーション研修に最適な事例集
    書評者:任 和子(京大大学院教授・臨床看護学)

     今日,看護師の働く場や病院の機能にかかわらず,看護師の臨床判断には高い能力が求められている。そこで不可欠な技術がフィジカルアセスメントである。頭から爪先(head to toe)まで,視診,打診,聴診,触診などの技術を用いて行うフィジカルアセスメントのトレーニングも看護基礎教育から行われるようになっている。

     本書のタイトルにも「フィジカルアセスメント」という用語が含まれており,系統立てたフィジカルアセスメントの解説を想像するが,むしろサブタイトル「12事例で学ぶ看護の要点」が本書の内容を明確に指している。看護師は何を手がかりに判断し行動しているのか,熟練したジェネラリスト看護師の看護の過程を綿密に描いている。各事例の最後にある「この事例を通して伝えたいこと」は看護の機能をベッドサイドの視点から理解でき,系統立てたフィジカルアセスメントを身につける意義の理解につながるところである。

     本書の特徴は「急な発熱を来した高齢者」や「ADLの低下したパーキンソン病患者の清拭時」など看護ケアの具体的な場面を設定して,「看護師が使うフィジカルアセスメント」を詳細に解説したことにある。「糖尿病の患者教育」や「終末期がん患者の退院支援場面」など,患者のセルフマネジメント支援や地域連携に生かせる場面も取り上げられている。例えば直腸がんの術後検診で1泊入院した糖尿病患者の事例では,看護師がフィジカルアセスメントの技術を身につけているか否かでどれほど看護ケアの質が変わり,患者のQOLに大きく影響することを見事に描き出している。どの事例もその設定が秀逸である。

     看護基礎教育においても継続教育においても,限られた時間で学習効果を得るために,事例をベースにしたシミュレーション研修を取り入れている。その際の最大の難関は,学習目標に沿った教材の開発である。本書では各事例の最初に簡潔に患者の状況が示され,介入や時間の経過とともに患者状態が追加され,評価まで記述されている。したがって,このままシミュレーション研修の教材として用いることができる。また,本書を参考にしてオリジナルの教材を作成することも可能である。本書を活用して教材を作成することは教える側の最良の学習となるに違いない。

     このように本書は,その学習目標によっていかようにもアレンジすることができるため,看護基礎教育においても継続教育においても,幅広い層に愛される書籍になると思う。長らく地道に,系統立てたフィジカルアセスメントを教え学んできた著者陣だからこそのプロダクトである。
目 次
Case 1 TAE治療を受けている患者のフィジカルアセスメント
 患者紹介:5回目のTAEを受ける肝細胞がんの患者
 介入の場面
 全身状態を把握するために実施すべきフィジカルアセスメント
 フィジカルアセスメントの実際
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 2 弛緩性便秘に悩む白内障患者のフィジカルアセスメント
 患者紹介:白内障手術で入院した脳梗塞の既往歴のある患者
 介入の場面
 フィジカルアセスメントの実際
 フィジカルアセスメントの結果をケアにつなげる
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 3 急な発熱を来した高齢者のフィジカルアセスメント
 患者紹介:肺炎で緊急入院の脳梗塞で寝たきりの患者
 介入の場面
 フィジカルアセスメントの実際・結果
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 4 脳梗塞後に経口摂取を開始する患者のフィジカルアセスメント
 患者紹介:高血圧と糖尿病をもつラクナ梗塞の患者
 介入の場面-〈1〉
 朝の検温時のフィジカルアセスメント
 清拭時のフィジカルアセスメント
 検温時と清拭時の観察で見えてきた今後のケア
 介入の場面-〈2〉
 車椅子移乗前に実施すべきフィジカルアセスメント
 車椅子への移乗時に実施すべきフィジカルアセスメント
 食事再開直前・食事中に実施するフィジカルアセスメント
 食後に実施するフィジカルアセスメント
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 5 ADLの低下したパーキンソン病患者の清拭時に行うフィジカルアセスメント
 患者紹介:薬物調整目的で入院のパーキンソン病の寝たきり患者
 介入の場面
 清拭時に実施すべきフィジカルアセスメント
 清潔ケアの手順とフィジカルアセスメントの実際・結果
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 6 がん性疼痛の緩和ケアにつなげるフィジカルアセスメント
 患者紹介:胃がん転移で痛みを訴える患者
 介入の場面
 痛みを把握するためのフィジカルアセスメント
 フィジカルアセスメントの実際
 フィジカルアセスメントから導かれるケアの実際
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 7 術前患者の呼吸訓練場面でのフィジカルアセスメント
 患者紹介:呼吸機能に問題のある胆石摘出術前の患者
 介入の場面
 呼吸訓練に際して行うべきフィジカルアセスメント
 呼吸訓練時に行えるフィジカルアセスメントの実際・結果
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 8 糖尿病の患者教育に活かすフィジカルアセスメント
 患者紹介:直腸がんの術後検診で入院の糖尿病患者
 介入の場面
 下肢の神経障害・足病変のチェックに必要なフィジカルアセスメント
 フィジカルアセスメントの実際
 アセスメントの結果説明(足壊疽予防のための患者教育)と今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 9 在宅酸素療法をしている患者へのフィジカルアセスメント
 患者紹介:肺気腫から心不全を合併した在宅療養の患者
 介入の場面
 久しぶりの訪問看護時に行うフィジカルアセスメント
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 10 感覚障害をもつ患者の入浴時に行うフィジカルアセスメント
 患者紹介:多発性硬化症の疑いで検査入院した患者
 介入の場面
 入院時の情報収集とフィジカルアセスメント
 シャワー浴時のフィジカルアセスメント
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 11 終末期がん患者の退院支援場面でのフィジカルアセスメント
 患者紹介:肺がん末期で余命2ヵ月とされた患者
 介入の場面
 吸引指導時に注目すべきフィジカルアセスメントのポイント
 吸引指導時に用いるフィジカルアセスメントの実際・結果
 訪問看護師との連携の場面
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと
Case 12 クリティカルな場面で活用するフィジカルアセスメント
 患者紹介:弓部大動脈置換術を受けた直後の患者
 介入の場面
 フィジカルアセスメントの実際・結果
 今後のケア
 この事例を通して伝えたいこと

MEMO
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索引
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