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第2962号 2012年1月23日


第31回日本看護科学学会開催


 第31回日本看護科学学会が2011年12月2-3日,野嶋佐由美氏(高知県立大)のもと,高知市内の高知県立県民文化ホール,他3会場にて開催された。「社会とともに拓く看護の新たな知への挑戦」をテーマに掲げた本学会。看護研究,看護実践,看護教育など,あらゆるかたちで看護にかかわる出席者が集まり,各会場で熱心な議論が交わされた。


ケアとキュアの融合を考察

野嶋佐由美会長
 近年,少子高齢化や疾病構造の変容により医療ニーズの多様化・複雑化が進み,看護師の役割拡大の必要性が論じられている。シンポジウム「ケアとキュアの融合を基盤とする看護実践の発展」(座長=千葉大大学院・正木治恵氏,高知県立大・藤田佐和氏)では,看護教員,看護管理者,チーム医療に携わる医師など,さまざまな観点から将来の看護師の在り方について議論された。

 井上智子氏(東京医歯大大学院)は,ケアとキュアを融合した看護実践の構築に向け,大学院教員の立場から発言した。ケアとキュアの融合が求められる背景には,医療機器の改良や手技の向上により医行為の質そのものが変化してきたことや,専門看護師への先駆的医行為実施の調査から,医行為を取り込んだ「一連の看護ケア」の実践に一定の効果が示されたことなどがあると考察。今後,両者の融合を進めるに当たっては,「ケアとキュアの融合は何を求めて行うものか」という概念を明確にした上で,それに基づく看護教育制度の構築の推進が求められると解説した。

 田中桂子氏(都立駒込病院)は,医師の立場から,がん緩和ケア領域における看護師のかかわりの重要性やチーム医療の在り方について言及。氏はまず,がん患者の呼吸困難例に対する看護ケアが有効性を示したエビデンスを紹介し,その重要性を示した。しかし,看護ケアは一貫性や再現性の担保が難しいことから,エビデンスの発信が困難と指摘。有効性を示すエビデンスをより多く蓄積していくことが求められると訴えた。また,多職種合同チームを効果的に運用するためには,各職種メンバーが対等の立場となり,解決すべき個々の課題に応じてリーダーシップを流動的に分担していく必要があると提言した。

高度な知識・スキルを持つ看護師を生かす

 野末聖香氏(慶大)は,日本精神保健看護学会と日本専門看護師協議会が共同で行っているプロトコール・プロジェクトについて紹介した。本プロジェクトでは,精神看護Advanced Practice Nurse(APN)が医行為の一部を担うケア・プロトコールの開発を進めており,どのような対象・状況であれば患者のQOLの向上につながるかを検討しているという。プロトコール作成における今後の課題としては,ケアとキュアが融合された看護実践をプロトコール中にどのように表現し記述すべきかや,それら看護実践の妥当性や適用可能性のさらなる検討などを挙げた。

 看護管理者の視点から発言したのは聖路加国際病院の佐藤エキ子氏。氏は,同院の急性・重症患者看護専門看護師などがリーダー的存在として実施する呼吸サポートチームの活動を紹介した。その上で,高度な専門知識やスキルを有する看護師の活動を支援し,患者への効率的な医療サービスを実現するためには,看護管理者に戦略的なマネジメント能力が求められると強調。今後は,認定看護師・専門看護師の位置付けを明確にし,高度実践看護師を導入する環境作り,待遇・処遇の再検討,研究活動の実施などを考慮していく必要があると述べた。

 その後の全体討議では,「ケアとキュアの融合した看護実践とは何か」「ナーシングケアの有効性をどのようにエビデンス構築に結びつけていくか」などについて,聴衆を交えた議論が行われた。