医学界新聞

連載

2011.08.08

学ぼう!! 検査の使い分け
シリーズ監修 高木康(昭和大学教授医学教育推進室)
○○病だから△△検査か……,とオーダーしたあなた。その検査が最適だという自信はありますか? 同じ疾患でも,個々の症例や病態に応じ行うべき検査は異なります。適切な診断・治療のための適切な検査選択。本連載では,今日から役立つ実践的な検査使い分けの知識をお届けします。

第 6 回
便潜血反応

化学的方法(グアヤック法,オルトトリジン法)

免疫学的方法

高木康(昭和大学教授・医学教育推進室)


前回からつづく

便潜血反応は,便中に存在する血液,すなわち消化管からの出血の有無を検出する検査で,「化学的方法」と「免疫学的方法」の2つの方法があります。今回は,この2つの方法について便潜血検査での使い分けを考えてみたいと思います。

化学的方法と免疫学的方法

 化学的方法は,最も古くから用いられてきた方法です。赤血球中のヘムの持つペルオキシダーゼ様作用を検出します。指示薬が異なるオルトトリジン法とグアヤック法の2つが日常検査で利用されており,オルトトリジン法は感度に優れ,グアヤック法は特異度に優れています。すなわち,オルトトリジン法はごく微量な潜血でも検出可能ですが,ヘムと同様なペルオキシダーゼ様作用を持つ肉や魚料理などに含まれる血液や鉄剤,ミオグロビン,緑黄色野菜でも陽性となり,偽陽性反応が問題となります。一方,グアヤック法の感度は劣り(オルトトリジン法の50分の1-100分の1程度),極微量の血液は検出できません。そのため,グアヤック法が陽性であれば,潜血陽性,オルトトリジンが陰性であれば潜血陰性とすることができます。

 一方,免疫学的方法は,ヒトヘモグロビンに対する抗体を用いて潜血の有無を検出する方法で,豚,牛あるいは魚類の血液には反応しません。ヒトヘモグロビン,すなわち潜血を特異的に検出できます。しかし,胃酸や胃・膵液由来の消化液によりヘモグロビンが変性する上部消化管出血は検出できず,下部消化管,大腸での出血の有無を検出する場合に利用されています。現在,便潜血反応が大腸出血・癌のスクリーニング検査として利用されているのは,免疫学的方法による潜血の有無を検出しているためです()。

 消化器疾患の潜血反応の陽性率

便潜血反応を行うとき

 便潜血反応は,消化管からの出血を来す疾患・病態を疑うときに検査されます。潰瘍やポリープ,悪性腫瘍などです。また,免疫学的方法は大腸癌のスクリーニング検査として,がん検診や人間ドックで用いられています。

症例1
56歳の女性。3か月前から持続する食後の心窩部・上腹部の不快感や軽度の痛みを主訴に来院した。心窩部・上腹部痛は食事を摂取すると出現し,時に便が黒くなっているのを自覚している。意識は清明。身長154 cm,体重48 kg。血液所見:赤血球数320万/μL,Hb 8.3 g/dL,Ht 23.6%,白血球数8800/μL,血小板数28万/μL。

症例2
60歳の男性。人間ドックの便潜血反応が陽性で,精査のために来院した。特に症状はないが,この6か月間,便秘気味であったり,時に水...

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