金原一郎記念医学医療振興財団贈呈式
2010.11.15
金原一郎記念医学医療振興財団
第48回認定証(第25回基礎医学医療研究助成金)贈呈式開催
金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=理化研脳科学総合研究センター特別顧問・伊藤正男氏)は,このほど「第25回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者として37名(助成総額1620万円)を選出。10月13日に,東京都文京区の医学書院にて第48回認定証贈呈式を開催した。
開会に際して挨拶に立った金原優同財団常任理事(医学書院代表取締役社長)は,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された本財団の概要を紹介。応募件数235件の中から選出された対象者の研究を讃えながら,「さらに良い研究を続けて,基礎医学研究の分野で活躍してほしい」と激励した。
認定証贈呈の後,同財団理事で選考委員長の野々村禎昭氏(東大名誉教授)が祝辞を述べた。氏は,2年ぶりに日本人がノーベル賞を受賞したことなどに触れながら,「基礎的な学問が進歩しなければ,医療の進歩はない。今後も研究に励んで,さらなる学問の進展のために役立てていただきたい」と述べた。
続いて,受賞者を代表して武藤倫弘氏(国立がん研究センター研究所・助成対象「メタボリック症候群における大腸発がん促進機序の解明」)が挨拶に立った。近年,大腸がんなどメタボリック症候群に関連したがんが増えている。そこで氏は,メタボリック症候群と大腸がん発症の関連性をテーマに研究。肥大化した脂肪細胞から分泌されるアディポネクチン,PAI-1などのアディポサイトカインと呼ばれる物質の産生バランスの破綻が発がんに大きく関与していると推測した。今後,各物質の阻害剤やノックアウトマウスを用いた実験により,詳細なメカニズムを解明していく方針だ。氏は,「本研究で得られる成果は,大腸がん化学予防法の確立に貢献すると考えている。この受賞を励みとして,今後もさらに研究を進め,医学研究の進歩と国民の健康に貢献したい」と語った。
●金原一郎記念医学医療振興財団
第25回基礎医学医療研究助成金交付対象者および研究内容
No. | 氏名 | 所属機関(略称) | 助成対象 |
1 | 武藤倫弘 | 国立がん研究センター/がん予防基礎研究 | メタボリック症候群における大腸発がん促進機序の解明 |
2 | 藤田恭之 | 北大/分子腫瘍学 | 正常上皮細胞と癌細胞の相互作用――新規な癌治療法の開発を目指して |
3 | 塩塚政孝 | 東大/総合文化/生命環境 | 皮膚透過促進剤を用いた経皮吸収型薬物送達による抗癌剤の効用 |
4 | 濱田大三 | 神戸大/構造生物学 | 腸管出血性大腸菌の天然変性エフェクターEspBによる宿主細胞形態制御に関する構造生物学的解析 |
5 | 東島眞一 | 岡崎統合バイオサイエンスセンター/神経分化 | 脊椎動物脊髄神経細胞の多様性形成機構の解析 |
6 | 赤澤宏 | 阪大/循環器内科 | 心房細動発症における炎症の機序と役割 |
7 | 矢嶋浩 | 自治医大/細胞生物 | 筋衛星細胞の増殖・分化制御機構と細胞治療法開発を目的とした基盤研究 |
8 | 山本雅裕 | 阪大/免疫制御 | 自然免疫による病原性原虫排除機構の解明 |
9 | 千葉奈津子 | 東北大加齢医学研究所研/免疫遺伝子制御 | 乳癌関連分子BRCA1/BARD1のDNA損傷後の発現量制御機構の解析 |
10 | 高村史記 | 近畿大/免疫 | レトロウイルスによる新規免疫逃避機構の解明 |
11 | 中村彰男 | 群馬大/病態薬理 | アクチン連関による血管平滑筋細胞の新しい制御機構―ミオシン軽鎖キナーゼに新たに見つかったカルモジュリン結合部位の解析 |
12 | 岡村裕彦 | 徳島大/口腔組織 | PKR活性は骨芽細胞の悪性化に関与するか? |
13 | 大河内善史 | 阪大/統合生理 | 電位依存性プロトンチャネルと相互作用する分子の探索 |
14 | 加藤将夫 | 金沢大/分子薬物治療 | ヒト消化管に発現するトランスポーターOCTN1を利用した炎症性腸疾患の標的治療 |
15 | 野田裕美 | 東京医歯大/慢性腎臓病病態治療 | アクアポリン制御メカニズム解明に基づく腎性尿崩症の新規治療法開発 |
16 | 寺尾豊 | 阪大/歯/口腔細菌学 | 新規免疫システム「NETs」を誘導する肺炎レンサ球菌由来物質の検索 |
17 | 小林拓也 | 京大/分子細胞情報 | 循環器疾患に関与するアンジオテンシン受容体のX線結晶構造解析 |
18 | 池上恒雄 | 東大医科研/臨床ゲノム腫瘍学 | 遺伝子改変マウスを用いたRas activator like 1の腫瘍形成及び臓器線維化における役割の解析 |
19 | 高田健介 | 徳島大/遺伝子実験 | 末梢リンパ組織および胸腺における微小環境の機能的関連性 |
20 | 中村隆宏 | 同志社大/炎症・再生医療 | 角膜再生医療の実用化を目指したEGFR遺伝子ファミリーによる上皮幹細胞の恒常性維持機構の解明 |
21 | 吉田清嗣 | 東京医歯大難治研/分子遺伝 | 腫瘍悪性化の分子機構におけるDYRK2キナーゼの役割と治療への展開 |
22 | 鏡雅代 | 成育医療センター/分子内分泌 | ヒト14番染色体インプリンティング異常症発症機序の解明 |
23 | 山本 英一郎 | 熊本大/循環器・先端医療 | 新規アポトーシス誘導タンパクApoptogenic Proteinの動脈硬化における役割についての解析 |
24 | 中野敦 | 阪大/分子心血管医学 | AMPKの新規基質の同定と機能解析 |
25 | 石田竜弘 | 徳島大/薬物動態 | 腫瘍内微小環境変化を利用したsiRNAデリバリー技術の開発 |
26 | 古橋眞人 | 札幌医大/内科2 | 心血管・代謝疾患における脂肪酸結合タンパクと小胞体ストレス応答の解明 |
27 | 井戸川雅史 | 札幌医大/がん研/分子生物 | 人工miRNAを用いたゲノム網羅的スクリーニングによるアポトーシスとRNA干渉を組み合わせた複合癌治療 |
28 | 増宮晴子 | 兵庫医大/生理学生体機能 | 中枢性睡眠時無呼吸と心不全:心拍出量変化が及ぼす呼吸中枢リズムへの影響と心不全悪化機序の検証 |
29 | 前島裕子 | 自治医大/統合生理 | 末梢経由オキシトシンの摂食抑制作用の機序解明と肥満治療応用 |
30 | 下重美紀 | 国立がん研究センター/化学療法 | 大腸がん克服をめざした大規模プロテオーム解析による発がん制御機構の解明 |
31 | 森本達也 | 静岡県立大/分子病態 | 心不全発症に関るクロマチンリモデリングの制御機構の研究 |
32 | 伊藤哲史 | 福井大/解剖・神経科学 | 聴覚系神経回路における興奮性と抑制性ニューロン集団の in vitroおよび in vivo機能イメージング |
33 | 小迫英尊 | 徳島大/疾患プロテオミクス | ノックアウトマウスを用いたプロテインキナーゼの標的基質の大規模同定と生理機能解析 |
34 | 宇山徹 | 香川大/生化学 | 新規脂質代謝酵素群HRASLSファミリータンパク質の内因性基質の同定および遺伝子改変マウスを用いた生理機能解析 |
35 | 中江進 | 東大医科研/フロンティア研究拠点 | 接触性皮膚炎における炎症誘導機構の解明 |
36 | 永井展裕 | 東北大/細胞治療 | 血管新生抑制因子Vasohibinの徐放化による加齢黄斑変性治療法の開発 |
37 | 吉木啓介 | 兵庫県立大/工学 | 立体配向顕微鏡を用いた細胞膜上分子の単一分子立体配向の動態観察 |
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