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第2899号 2010年10月11日


座談会

胃癌撲滅への道しるべ

上村直実氏(国立国際医療研究センター・理事 国府台病院長)=司会
乾 純和氏(乾内科クリニック・院長)
加藤元嗣氏(北海道大学病院 光学医療診療部・診療教授)
藤城光弘氏(東京大学医学部附属病院 光学医療診療部・准教授)


 Helicobacter pylori(以下,ピロリ菌)が胃癌を引き起こすことが明らかとなり,その除菌を含めた胃癌予防が大きな話題となっている。日本ヘリコバクター学会では昨年,すべてのピロリ菌感染者に対して除菌を勧める指針を公表したが,一方で大規模な除菌療法については慎重な意見があるのも実際だ。

 ただ胃癌をめぐっては,基礎・臨床研究の進歩からより効果的な検診の在りかたも提唱されてきており,胃癌を予防できる時代へと着実に向かってきている。そこで本紙では,これからの胃癌戦略を考える座談会を企画。ピロリ菌をめぐる最新の研究事情とともに,“胃癌撲滅への道しるべ”を幅広く語っていただいた。


ピロリ菌診療の現状

上村 1983年のピロリ菌の発見以来,上部消化管疾患の概念と診療は大きく変化してきました。1991年に報告された米国のParsonnetらやNomuraらの疫学的研究をきっかけにピロリ菌と胃癌との関係に注目が集まり,1994年にはWHOの癌研究部門(IARC)が「ピロリ菌は明確な発癌要因(ClassIのCarcinogen)である」という声明を発表しました。日本でも近年ピロリ菌が胃癌に深く関与するという認識が浸透し,除菌による胃癌予防に注目が集まっています。

 最初に,ピロリ菌の診療の現状についてお伺いします。日本ヘリコバクター学会のガイドラインにおけるピロリ菌感染の診断方法をご紹介ください。

加藤 日本ヘリコバクター学会が2009年に発表した『H. pylori感染の診断と治療のガイドライン』(以下,ガイドライン)では,(1)迅速ウレアーゼ試験,(2)組織鏡検法,(3)培養法,(4)尿素呼気試験,(5)抗ピロリ菌抗体測定,(6)便中ピロリ菌抗原測定,の6つの検査のいずれかを用いて感染診断を行うとなっています。また,複数検査を行うことが推奨されています。

 今年4月から保険適用が変わり,初回は1種類しか認められなかった検査が組み合わせに制限はあるものの2種類行えるようになり,よりガイドラインに沿った検査が可能になりました。

上村 検査の併用が承認されたのは大きな変化ですね。では,臨床現場においてはどのように診断が行われているのでしょうか。

 私のクリニックでは,消化器症状を訴えて来院された方には,保険請求できない場合でもピロリ菌の尿中抗体検査を必須で行っています。また,内視鏡が必要と判断される方には,内視鏡と迅速ウレアーゼ試験を行い感染の有無を診断しています。

藤城 東大病院では,まず内視鏡を行います。そこで胃炎を除く潰瘍,癌,MALTリンパ腫などのピロリ菌関連の病態が見つかった場合,迅速ウレアーゼ試験と血清学的な評価を併せてピロリ菌の感染診断を行っています。陰性の場合は,さらにUBT(尿素呼気試験)を加えて感染を確認しています。

上村 診断方法については各施設で工夫されているのですね。最近,低下しているとされるピロリ菌の感染率はどのような状況にあるのでしょうか。

  若年者の感染率は激減しています。高崎市医師会の住民検診では,20代では約9割,また30,40代では7割程度が未感染です。40歳以上の受診者でみると,除菌群を除いた未感染群が43.5%でした。

加藤 少し古いデータになりますが,1950年以前に生まれた世代では感染率が80%以上であると,本学の浅香正博先生が1993年に報告しました1)。それを現在に当てはめると,感染率が高い世代は60代からになります。

上村 やはり,60代以上は感染率が高いものの30代未満は激減しているのが現在の特徴と言えるのですね。

保険と自費が混在するピロリ除菌治療

上村 ピロリ菌の除菌治療には,保険適用が可能な疾患が限られているという課題がありますね。

加藤 ええ。これまでは胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がなされた方だけが除菌の対象でした。今年6月に,早期胃癌のEMR(内視鏡的粘膜切除術)後の残存胃粘膜,胃のMALTリンパ腫,ITP(特発性血小板減少性紫斑病)の3疾患が公知申請で保険適用追加となり範囲は広がりましたが,慢性胃炎で胃癌予防のために除菌したいという方をまだまだカバーできていないのが現状です。

上村 そうですね。今回の除菌治療の適用拡大も,2005年に承認された2次除菌と同様,公知申請による承認でしたね。慢性胃炎の保険適用の拡大についても,今後,公知申請の活用が重要と思われます。除菌治療の適応に関して,ガイドラインではどのように扱われているのですか。

加藤 2000年に出版された最初のガイドラインでは,今後の保険適用を考慮して胃・十二指腸潰瘍を除菌の推奨としました。その後の改訂で疾患の範囲を広げ,03年に「胃のMALTリンパ腫」を除菌治療の推奨疾患に,それ以外の疾患については「(除菌するのが)望ましい疾患」と「検討中の疾患」に分けて発表しました。そして09年の最新のガイドラインでは,疾患を分けずに「Helicobacter pylori感染症はすべて除菌適用である」という考え方に大きく変更しました。これは,どんな疾患であろうが,感染している方は全員除菌すべきだという指針です。

 現在の公的保険で除菌できる適用疾患とは大きく異なり,適用疾患になっていない慢性胃炎などでは自費診療で対応せざるを得ないわけですが,日本ヘリコバクター学会としては積極的に自費診療を勧めています。

上村 北大病院では自費診療で診断と除菌を行うピロリ菌専門外来を大々的に始めましたよね。現状を教えていただけますか。

加藤 北大病院では,2009年3月からピロリ菌の専門外来を開始しました。開始1年間で約150人を診察し,そのうち約60%が陽性者でした。除菌治療は,2次,3次までいった方もいますが,陽性と判定できなかった方を含めて約98%の成功率ですので,皆さんに満足いただけていると思います。

上村 乾先生,藤城先生の施設ではどのようにされていますか。

 内視鏡で消化性潰瘍,あるいはその瘢痕が認められる方については保険に従って除菌をしますが,保険適用の対象となる病変がない方にも積極的に自費診療を勧めています。

藤城 東大では保険にのっとった除菌のみで,残念ながら自費診療を勧めるところまでは至っていません。

上村 ピロリ菌の感染診断,除菌治療の適用疾患というのは,まだまだ施設によって異なるということですね。

除菌デメリットは意外に少ない

上村 ピロリ菌の除菌には,胃癌予防をはじめさまざまなメリットが報告されてきていますが,一方で除菌のデメリットも考える必要があります。

 デメリットには,GERD(胃食道逆流症)や除菌に用いる抗菌薬への耐性,また薬剤自身による副作用が一般的に言われていますが,私はそれほどデメリットはないと考えています。確かにGERDを起こす方はいますが,それはプロトンポンプ阻害剤(PPI)でコントロールできます。また私自身,1次1800例,2次360例と2000例以上の除菌を行っていますが,重篤な副作用は経験していません。

上村 薬剤による副作用では,特に薬剤性の出血性大腸炎やアナフィラキシーが問題になると思いますが,そのような経験はありますか。

加藤 これまでに3000例以上除菌を行っていますが,出血性大腸炎の経験はまだありません。ただ,1000人に1人の割合で起こるという報告もあるので,強い腹痛や血便があったときには,すぐに服薬をやめて外来に来るよう伝えています。

 現在最も問題となっている副作用は薬疹です。一過性ですぐに消えてしまう方や,ステロイドが必要となる方がいて,治療に難渋することもあります。

藤城 薬疹は何例か経験していますが,私もアナフィラキシーの経験はありません。GERDは晩期の症例で散見されますが,やはりPPIによってコントロールできていますので,除菌によるデメリットはそれほど大きくないという印象を持っています。

上村 先生方のご経験を伺うと,恐れていた重篤な合併症は意外に少ないと感じます。ピロリ菌の治療法もほぼ一般的になってきたいま,除菌治療は安全性の面からもますます推奨されるのではないでしょうか。

■早期胃癌治療の中心となった内視鏡

上村 さて,内視鏡診療の進歩には驚くべきものがあり,胃癌の早期診断や治療もその進歩とともに大きく変わってきたと思います。現在の胃癌治療における内視鏡の役割とはどのようなものでしょうか。

藤城 内視鏡の役割はますます増大し,私が以前所属していた国立がん研究センター中央病院では,2001年以降,早期胃癌の内視鏡治療の件数が外科手術の件数を上回るようになってきています(2)。手法自体も2000年前後に確立したESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)によって進化を遂げ,内視鏡で治せる早期胃癌が爆発的に増えてきているのが現状です。

 国立がん研究センター中央病院における早期胃癌治療法の変遷(文献2より引用)

 内視鏡治療は局所切除ですので,当初は外科から再発への疑問や懸念が数多くありました。ただESDが登場して約10年が経過し,長期成績でも外科手術に遜色なく,患者さんのQOLも保たれているという結果が得られています。そして現在では,外科からも素晴らしい技術であると認められるようになってきたと思います。

加藤 最近では,外科切除の適応を決定するための完全生検を目的にESDを行う症例も増えています。内視鏡の適応がありそうな症例では,逆に外科から内科へ完全生検の依頼もあります。

除菌が異時性胃癌の予防につながる

上村 一方で内視鏡治療後には,治療部位以外にできる異時性胃癌が発生することが報告されていますね。

加藤 異時性胃癌は,内視鏡治療後3年間で約10%発生するとも言われ大きな問題となっています。外科的切除では,残胃が少なくあまり問題とはならなかったため,胃全体が温存される内視鏡治療での特異的な現象とも言えます。

上村 ピロリ菌除菌によってその発生を予防できる可能性を,加藤先生らを中心としたグループが報告しています。

加藤 はい。われわれのJGSG(JAPAN GAST Study Group)が中心となり,上村先生が行われた“除菌治療によって異時性胃癌の予防ができた”という先駆的な研究に基づいて多施設共同試験を行いました。

 試験は,胃癌の内視鏡治療を受けた,あるいは内視鏡治療後経過観察中の544人(平均年齢70歳)を登録し,3年間定期的に内視鏡検査を行って,異時性の癌である二次癌の発生率を,ピロリ除菌群とコントロール群に分けて比較しました。その結果,除菌群では二次癌の発生率がコントロール群の約3分の1まで有意差をもって抑制できました。除菌治療が胃癌自体の発生を抑制できることを,初めて実際の臨床で証明できました3)

上村 一度胃癌になり,腸上皮化生が見られるようなハイリスクグループで,除菌による胃癌抑制効果があったのがポイントですね。藤城先生はこの結果に対してどうお考えですか。

藤城 われわれも,内視鏡治療後の除菌が再発率を下げる印象を持っています。ただ海外の論文では,早い段階で除菌をしないと効果がなかったり,有意差がないという報告もあります。理論的に考えると,確かに長期間積み重なった遺伝子の変化があり,萎縮の進んだ状況では除菌しても効果が少ないと思われます。それでも除菌によって発癌や癌の進展を抑制できる可能性は十分あると私は考えています。

加藤 胃癌の発育には10年以上かかります。ですから,芽が出ないうちに除菌しておけば発癌を抑制できます。

 JGSGの報告では,3年の追跡期間で抑制が出ています。対象はハイリスクグループですから,いわゆる潜在癌のようなものが既にあり,それが除菌によって成長せずそのままとどまっている状況と理解しています。

 今回は二次癌を対象としましたが,一次癌と二次癌では発生率が10倍程度異なります。一次癌を対象にRCTを組むと,統計上10年間で5000人以上を登録しないと差が出てきません。「一次癌にも当てはまるのか」という意見は確かに多くあるのですが,二次癌といっても新規に起こる癌ですので一次癌とほぼ同じと考えています。

上村 除菌治療後には胃粘膜の状態も変わってきますよね。

加藤 ええ。除菌によって,未感染の人の胃に近づく傾向があります。除菌後半年や1年の早い段階では,いわゆる点状発赤や襞の肥厚・浮腫が最初に改善します。また,数年後の長期になると,未感染の人の胃の粘膜にかなり近づきます。ただし,高度な萎縮性変化はなかなか改善しないのも事実です。

藤城 胃粘膜の粘液が取れて胃がツヤツヤとした状態になりますから,病変も発見しやすくなります。ですから,もし癌が発生してもそれを早期に発見しやすくなっていると思います。

上村 胃がきれいになり,内視鏡の観察能力・精度も高まりますね。

加藤 はい。さらに癌の発育するスピードも除菌によってある程度抑えられるので,除菌後に内視鏡検査を定期的に行うことで早期に癌を見つける機会を増やせると思います。

胃癌発症リスクを見極める“ABC検診”

上村 日本は胃癌大国です。従来からの間接X線を用いた胃がん検診が,死亡率を低下させてきたことは事実ですが,内視鏡が胃癌検査の主流となるなかその課題が大きいのも実情です。

藤城 胃がん検診は1960年代から行われてきましたが,放射線被曝とともに低い受診率が長年の課題であり,無症状の方の胃癌をより早期に発見する必要もありました。そこで,胃癌発症リスクを取り入れる新しい検診の考えかたが生まれてきています。

 これは三木一正先生(日本胃がん予知診断治療研究機構)が行ってこられた,血清ペプシノーゲン(PG)検査で胃癌のハイリスク群を絞り込み内視鏡を実施する試みが先駆的なものとして挙げられます。さらに現在では,乾先生が提唱された「ABC検診」が始まっています。

 ABC検診におけるリスク分類
 ABC検診は,血清PG値と血清ピロリ菌抗体価の両方を同時に測定し,その結果でA-C群にリスクを層別化し精密検査を行っていくものです()。

 2006年にABC検診を導入する前は,私たち高崎市医師会も血清PG単独で検診を行っていました。しかし,それだけではどうしても血清PG陰性の進行癌が発生し,悩みの種となっていました。そのとき井上和彦先生(川崎医大)が血清PGとピロリ菌を組み合わせる人間ドックを実施していると聞き,それをマス・スクリーニングに応用できないかと考えたのです。

 現在一般的に実施されている検診と最も大きく異なるのは,胃癌の1次予防をメインとし,2次予防も可能という部分です。現在の検診は単年度に胃癌を発見することが目標であり,要するに胃癌の2次予防を目的としたものです。一方,ABC検診はピロリ菌陽性の方には全員除菌を勧めていますので,除菌という1次予防がメインとなります。

上村 リスクを層別化して内視鏡で胃癌を早期に発見しようとするABC検診は,従来の胃がん検診とは全く性格の異なったものであり,今後の普及が期待されますね。

いま望まれる高齢者への胃癌対策とは

上村 ピロリ菌の感染率は次第に減っているので,おそらく数十年後には胃癌はまれな病気になるのでしょう。しかしいま重要なのは,感染率の高い60代以上がこの20年間に胃癌を発症する可能性が大きいことです。莫大な医療費も見込まれるため,高齢者の胃癌予防が喫緊の課題となりますが,どのような対策が必要になるのでしょうか。

加藤 高齢者に対してもピロリ菌感染を調べ,胃癌リスクを判断した上で,除菌治療を行っていくことがやはり大事だと思います。胃癌のリスクを本人に伝え,希望者は除菌治療が受けられるシステムの整備は必須です。血清PGやピロリ菌検査への助成を含めた国を挙げての対策が必要で,しかもそれをどれだけ迅速に行えるかでこの20年の胃癌発生数が変わってくると思います。

藤城 既に胃癌を発症してしまった方には,内視鏡による診断・治療がゴールドスタンダードです。しかしながら,内視鏡の受診を避けようとする方もいますので,そういう方に内視鏡を受けていただくための環境整備や助成も必要になります。

上村 高齢者への除菌治療と内視鏡検診の体制の充実を,国に対して働きかけていくことが重要なわけですね。

胃癌撲滅へ向けて

上村 除菌治療による胃癌予防に光がみえるようになったことで,“胃癌の撲滅”が話題となっています。胃癌の撲滅のためには何が必要なのか,先生方のお考えをお聞かせください。

加藤 一般論ですが, ABC検診のような一次予防を中心とした取り組みが最も基本になるべきだと私は考えます。ピロリ菌感染の有無は一生に一度調べればよいものです。検診受診者が少ない現状を考慮すると,学校健診や企業健診など現在ある健診システムのなかで感染を検査するのがよいと思います。

 感染者には可能であれば血清PG検査も同時に行い,胃癌のリスクがどの程度あるかを伝えて1次予防として除菌治療を行います。ただし,除菌治療だけでは100%抑制はできないので,その後発生する癌を早期に見つけるため,2次予防として内視鏡によるサーベイランスを行います。ただ,内視鏡検査も現在のような年1回,一律に行うものでは効率が悪いので,胃癌リスクの高い人ほど短い間隔,また低い人は数年に一度検査していくのが最良の方法だと私は思います。そうすることで,胃癌のかなりの割合を減らすことができ,早期に発見される確率が増すことで癌死も防げます。

 肝炎ウイルスによる肝癌や,HPVによる子宮頸癌と同様,感染症が原因となる胃癌は予防できる癌です。ですから撲滅には予防が重要ですね。

藤城 ひと昔前のピロリ菌感染者が非常に多かった時代には,血清PG,ピロリ菌ともに陽性の胃癌リスクの高い方がたくさんいました。しかしピロリ菌感染者が激減した今日,胃癌のハイリスクグループを絞り込むことができます。絞り込むことで,検診の予算も有効に使うことが可能となります。

 内視鏡自体も,経鼻内視鏡の誕生や高画質化で,身近になるとともに精度が高くなりました。早期に胃癌を見つけ治療可能な時代となりましたので,この点でも胃癌の撲滅へと近づいてきていると思います。

上村 除菌による胃癌の予防は完全ではなく,やはり除菌治療後にも胃癌が見つかる方もいますのでその対策が重要ですね。

 最後に,一般医家として長年健闘してこられた乾先生から,胃癌撲滅に向けてひと言お願いいたします。

 浅香先生が提唱されている「胃癌撲滅プロジェクト」4)に大賛成です。これからの胃がん検診は胃癌撲滅プロジェクトの一環として存在し,従来の2次予防のみを目的とする検診ではないことをまず伝えたいと思います。胃癌は「ピロリ菌感染症」であるため,検診は肝炎と同様に「胃炎」をターゲットとしたものとすべきなのです。

 私はABC検診を「胃炎検診」として,現在の特定健診に組み込むのが一番よい形ではないかと考えています。さらに言えば,究極の胃癌1次予防は若年時の除菌です。現在高崎市と折衝中ですが,例えば20歳の成人式に検査を行いピロリ菌を除菌する。そのような1次予防を通じて,胃癌リスクをゼロに近づけたいと考えています。

上村 本日は「胃癌撲滅への道しるべ」に関して,その現状と具体的な方策についてご紹介いただきました。先生方,ありがとうございました。

(了)

参考文献
1)Asaka M, et al. Relationship of Helicobacter pylori to serum pepsinogens in an asymptomatic Japanese population. Gastroenterology. 1992; 102(3): 760-6.
2)Yoshida S, et al. Detection and treatment of early cancer in high-risk populations. Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2006; 20(4): 745-65.
3) Fukase K, et al; Japan Gast Study Group. Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection of early gastric cancer: an open-label, randomised controlled trial. Lancet. 2008; 372(9636): 392-7.
4)浅香正博.わが国からの胃癌撲滅を目指して.日消誌.2010;107:359-64.


上村直実氏
1979年広島大医学部卒。87年米国アラバマ大消化器科留学。89年呉共済病院を経て,2002年国立国際医療センター内視鏡部長。10年4月より現職。呉共済病院時代より,ピロリ菌の感染と胃癌との関連およびその予防に関する研究に従事し,世界的な注目を浴びる。日本消化器病学会財団評議員,日本消化器内視鏡学会社団評議員,日本ヘリコバクター学会理事。編著書に『臨床に直結する消化管疾患治療のエビデンス』(文光堂)など。

乾純和氏
1965年信州大医学部卒。インターン後,群馬大第一内科入局。67-70年国立がんセンター病院(当時)に国内留学。82年群馬県高崎市に乾内科クリニックを開業し,現在に至る。78-83年筑波大講師(非常勤)併任。95-2005年高崎市医師会理事。06年からは高崎市医師会主導でABC検診を実施し,その普及に力を注ぐ。97-06年厚労省PG研究班(三木班)の研究協力者。日本胃がん予知・診断・治療研究機構副理事長。

加藤元嗣氏
1982年北大医学部卒,同年同大にて内科研修医。市立稚内病院内科,国立療養所西札幌病院,米国ベイラー大留学などを経て,99年北大病院光学医療診療部助教授。2007年同部長・准教授,10年より現職。主な研究テーマは,消化器内視鏡の診断・治療とピロリ菌を中心とした上部消化管疾患の病態研究。日本消化器内視鏡学会社団評議員等を務め,日本ヘリコバクター学会ではガイドライン策定委員会のメンバーでもある。

藤城光弘氏
1995年東大医学部卒。97年国立がんセンター中央病院(当時)レジデント,2000年東大医学部消化器内科。同助手,助教を経て09年より同大准教授・光学医療診療部部長。専門分野は消化器内視鏡学,特に消化管腫瘍の内視鏡診断・治療。ESDの開発・改良にかかわり,国内にとどまらずアジアを中心とした海外への最先端内視鏡技術の普及活動を精力的に行っている。日本消化器内視鏡学会学術評議員。