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第2885号 2010年6月28日


【視点】

物理療法の効果と今後の展望

菅原 仁(日本工学院専門学校 理学療法学科)


 理学療法では治療手段として,運動療法と物理療法が使われている。この2つは両輪であると言われ,併用により相乗効果を得ることができる。物理療法で使用される物理的刺激には,温熱・寒冷・高周波・超音波・電気・機械(伸張・振動・圧迫)などがある。これらの刺激を利用して,痛みの鎮静化,組織伸張性の向上,筋再教育,筋力強化,創傷治癒などを図っている。

 また,健康維持や改善のために物理療法で使用されている機器(低周波治療器,温熱器具,バイブレーター等)が一般に市販されている。では,家庭において物理的な刺激を正しく使っているのであろうか。おそらく理学療法士よりアドバイスを受けていないために適切な使用はできていないと考えられる。そのため,医療機関を受診し,必要なアドバイスを受けておく必要がある。どんな医療行為であっても間違った使用では効果は得られない。

 ここで,効果を得るために必要な条件を考えてみる。重要な条件としては,物理療法手段の選択と物理的刺激のdose(強度・時間・頻度)が挙げられる。これらを適切に決定するためには,患者のアセスメントを正しく行い,かつ適切なdoseを決定するための知識を備えていることが必要である。例えば,最近の研究では,非特異的腰痛に対して温熱療法が効果的であると報告されているが,従来の10分から15分などの短時間の使用ではなく,長時間の使用(研究では8時間/日)で効果が得られるとされている。もちろん個々の機能障害により標的組織とdoseは異なるため,医療機関での判断は欠かせない。

 現在,理学療法士を対象とした物理療法の研修会が各地で開催されており,物理療法の理論的な背景と正しい物理療法の使い方について知識を深めている。物理療法は決して真新しい療法ではないが,昨今の基礎的実験研究からのフィードバックにより効果的な治療が可能になっている。

 その一方で,未開拓な分野も残されている。例えば,褥瘡・創傷治癒に関しては,米国の臨床現場では物理療法(電気刺激,超音波)が使用されているが,わが国では使用されていない。このほかにも,胸部や腹部術後の疼痛抑制や嚥下障害改善のための電気刺激が可能であるにもかかわらず,臨床現場で使われていない現状がある。この現状を打破するためにも医師,看護師への物理療法の啓蒙活動と併せて,理学療法士による臨床実践の普及が課題である。


菅原 仁
1986年高知医療学院理学療法学科卒。牛久愛和総合病院,茨城県立医療大病院を経て,現職。2007年に物理療法の専門理学療法士を取得。日本理学療法士協会専門領域研究会物理療法研究部会運営委員。