第28回日本看護管理学会学術集会開催
取材記事
2024.09.12
第28回日本看護管理学会学術集会が8月23~24日,秋山智弥学術集会長(名大病院:写真1)のもと,「看護のルネサンス——より自由に,より人間らしく,看護を描き出す」をテーマに名古屋国際会議場(名古屋市)にて開催された。医学界新聞プラスでは,シンポジウム「病院と地域をつなぐ外来看護」(座長=岐阜保健大・藤原奈佳子氏,手稲渓仁会病院・田中いずみ氏)の模様を報告する。
◆ジェネラリストとして外来看護師の専門性を発揮する
初めに登壇したのは糖尿病看護を専門とする柴山大賀氏(筑波大)である。外来看護師は患者の日常生活での具体的なアドバイス提供,心理的サポートの提供において中心的な役割を担っていると述べたうえで,①糖尿病看護認定看護師による外来での個別的な療養相談の効果と,②糖尿病透析予防指導管理料に基づく多職種アプローチと療養相談の質との関連に関する自らが行った研究結果1,2)から,外来看護の質を維持し継続的なケアを提供するには,財政的基盤となる適切な診療報酬の設定および外来看護の専門性を証明していくことが不可欠だと訴えた。また氏は,糖尿病と歯周病の関連から医科歯科連携の必要性を共有し,口腔内のアセスメント,歯科受診の勧奨,教育的なかかわりなど,ジェネラリスト看護師の力を糖尿病ケアで発揮してほしいと期待を述べた。
◆地域へつなぐ外来看護の多様な取り組み
手稲渓仁会病院の東谷朗子氏は,自院看護部の「これからは,生活と医療をつなげる外来看護が重要である」とのビジョンに基づいた看護部全体で外来看護に注力するための取り組みについて紹介した。具体的には,看護管理者の外来看護に対する意識改革や,外来看護を再考し再定義することからはじめ,多職種チームによる外来支援体制の強化,外来看護の標準化,外来・病棟間の連携強化,リソースナース(専門看護師・認定看護師)と協働など体制整備を進めたことを会場に共有。こうした試みの結果, 地域の行政機関やかかりつけ医と切れ目のない連携を図る「周産期メンタルヘルス支援」,救急搬送されたものの自院での治療適応のない軽症・中等症の高齢者患者を地域の医療機関へつなぐ「高齢救急患者連携搬送支援」など,現場からのボトムアップによるさまざまな取り組みが創出されていることを示した。「今後さらに外来看護のアウトカムを評価していきたい」と抱負を語るとともに,「外来看護をより強化していくための鍵は組織づくりにある」と結び,氏は発表を終えた。
2024年度の診療報酬改定では「外来医療の機能分化」が重要な視点になっていると述べた須川真規子氏(公立陶生病院)は,地域完結型の医療へのシフトチェンジに伴い,切れ目のない医療提供と地域連携の拠点として2018年に開設した自院の患者支援センターと外来看護の取り組みを報告した。多職種57人の専門職員から構成される患者支援センターでは,社会情勢に合わせた運営がスムーズな運営を行うべく自院で導入しているPFM(Patient Flow Management,註)が効果的に運用できていることを報告。また外来看護師は全ての患者に退院後初回受診時に面談を行い,現在の病状,苦痛の有無,生活状況,退院時に指導された内容や医療処置の継続状況など多岐にわたる情報の聞き取りからADL測定までを実施することで,退院後早期の状況把握によって適切な社会福祉サービスの見直しにつなげている。得られた面談結果は,病棟護師にも共有され,病棟看護師と外来看護師の連携に対するモチベーションアップにつながっているという。こうした取り組みの中で外来看護の役割は徐々に拡充され,外来看護師による在宅療養支援が進められてきた。
続いて会津医療センターの山田香代子氏は,外来における多職種での在宅療養生活支援について発表した。同院では,患者支援センターを中心に地域医療連携や外来通院患者の在宅療養支援,退院支援や調整,看護専門外来を行っている。特に外来看護師―患者支援センター―地域包括支援センター等で情報共有を行う際に 「外来患者支援連絡票」を活用している。外来患者支援連絡票の活用によって, 患者に声をかける機会が増え,業務を行う上でのモチベーションアップにもつながったと紹介。多職種が連携し「その人の看護」「切れ目のない看護」の充実に取り組み,外来看護師の役割認識,やりがいにつなげることで,外来での在宅療養支援の推進に取り組んでいきたいと抱負を語った。
◆治療と生活の視点から「健康」を支える外来看護師のかかわり
「フレイル対策のスペシャリストは外来看護に従事する看護師である」。こう述べた佐々木知輝氏は,所属する東京都健康長寿医療センターが設立したフレイル予防センターにおける外来看護師の活躍を紹介し,外来看護師がフレイル対策のスペシャリストとなり得るポテンシャルについて発表を行った 。同院のフレイル予防センター では,問診や測定を要する従来のフレイル検出指標より簡易に検出できるよう,高齢者の見た目から発見するための指標PAONスケール(prefrailty scale for appearance observation by nurses)を開発。信頼性と妥当性がすでに確認されていることを報告し3),「外来看護師は少しの学習や経験,ツールの活用によってフレイルを早期発見できる」と伝えた。また,外来看護師がフレイルを意識しながら高齢者と対話し,心身の状態に配慮しつつ楽しむことのできる地域の通いの場とつなげることもフレイル対策になると述べ,こうしたフレイル対策は高齢者のいきいきとした暮らしにもつながると語った。最後に氏は,治療と生活の両方の視点から「健康」を支えることのできる外来看護の専門性を発揮してほしいと呼びかけ,発表を締めくくった。
註:予定入院患者の情報を入院前に把握し,問題解決に早期に着手すると同時に,病床の管理を合理的に行うことなどを目的とした管理手法。
参考文献・URL
1)Diabetes Res Clin Pract. 2007[PMID:17049662]
2)柴山大賀,他.糖尿病腎症患者への療養指導状況と糖尿病透析予防指導管理料の算定がそれに及ぼす影響 糖尿病看護認定看護師・慢性疾患看護専門看護師の横断的調査から.日糖尿教看会誌 .2016;20(2):167-74.
3) Geriatr Gerontol Int. 2024[PMID:37964438]
タグキーワード
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
PT(プロトロンビン時間)―APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)(佐守友博)
連載 2011.10.10
-
事例で学ぶくすりの落とし穴
[第7回] 薬物血中濃度モニタリングのタイミング連載 2021.01.25
-
寄稿 2016.03.07
-
連載 2010.09.06
最新の記事
-
医学界新聞プラス
[第3回]腰部脊柱管狭窄症_保存的リハビリテーション
『保存から術後まで 脊椎疾患のリハビリテーション[Web動画付]』より連載 2024.10.07
-
医学界新聞プラス
[第2回]自施設に合ったSNSを選ぼう(前編)
SNSで差をつけろ! 医療機関のための「新」広報戦略連載 2024.10.04
-
取材記事 2024.10.04
-
医学界新聞プラス
[第2回]腰部脊柱管狭窄症_治療の概要
『保存から術後まで 脊椎疾患のリハビリテーション[Web動画付]』より連載 2024.09.30
-
取材記事 2024.09.27
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。