医学界新聞プラス
[第1回]Gen AIと最新ツールが拓く論文執筆の新時代
面倒なタスクは任せてしまえ! Gen AI時代のタイパ・コスパ論文執筆術
連載 中島誉也
2024.09.13
皆さん,こんにちは。連載「面倒なタスクは任せてしまえ! Gen AI時代のタイパ・コスパ論文執筆術」へようこそ。本連載を通じて,日々忙しい医師が効率的に論文を執筆するための最新ツールの活用法についてご紹介していきます。
AIと医師の協働――効率と専門性の新たなバランス
最新のテクノロジーが医療界にも浸透する中,私たち医師の強力な味方として台頭してきたのがAIです。しかし,AIは決して医師の代替ではありません。むしろ,医師の能力を最大限に引き出すパートナーとして考えるべきでしょう。AIと役割分担することで,医師はより高度な判断や患者ケアに集中できるようになります。
Gen AIを使うメリットとは
近年のAI技術の発展で特筆すべきは,ChatGPT,Gemini,Claudeといった生成AI(Generative AI:Gen AI)の登場です。自然言語処理技術の進歩により,これらのAIは人間の言葉を理解し,人間らしい文章を生成できるようになってきました。GenAIと最新ツールを活用するメリットとしては,以下が挙げられます。
時間の節約
論文作成プロセスはもちろん,統計解析や日常のメールやり取りの補助,当直表の作成など,あらゆる場面での活用により大幅な時間短縮が可能になります。
効率的な情報収集
医学分野では毎年膨大な量の論文が発表されています。Gen AIを使用することで,その中から自分の研究テーマに関連性の高い論文を素早く抽出できます。
アイデアの発想支援
異なる分野の知見を組み合わせることで,人間では思いつかなかったような新しい研究アイデアの創出を支援できます。
英語論文執筆の支援
英語を母国語としない研究者にとって,英語での論文執筆は大きな障壁となります。AIツールによる文法チェックや表現の提案によって,より自然で専門的な英語論文の執筆を可能にします。
論文執筆におけるツール活用の可能性
また,AI技術だけでなく,さまざまな便利ツールが開発されており,これらを活用することでより快適な執筆ライフを送ることができます。例えば,Paperpileのような文献管理を格段にしやすくするツールや,Grammarlyのような英文の構成や文法をチェックしてくれるツールが挙げられます。これらのツールを効果的に使用することで,執筆プロセスの効率化や品質の向上が期待できます。 論文執筆に必要な作業について順を追って考えてみましょう。
論文を書く(あるいは読む)という作業には,いくつかの要素が含まれています。
「こんなにもたくさんやらないといけないことがあるのか……」と思った方もいるかもしれません。しかし,実はこれらの要素の全てをAIが支援してくれる可能性があります。詳細については本連載で解説をしていきますので,ぜひお楽しみにしていただければと思います。
生成AIを使用する際の注意点
ここまでGen AIの可能性を中心にお伝えしてきましたが,本連載を読むに当たって押さえていただきたいことがあります。それは,AIの適切な使用と倫理的配慮です。特に以下の点に注意が必要です。
捏造(幻覚,ハルシネーション)のリスク
AIは,正しい情報であるかのように誤った情報を生成する可能性があります。必ず人間が内容を確認しましょう。
著作権の問題
AIが生成した内容にも著作権が発生します。最終的な責任は利用者にあることを忘れずに。 詳細については、文化庁が公開している「AIと著作権に関する考え方について」を参照。
バイアスや偏見
AIの学習データによっては,バイアスや偏見が含まれる可能性があります。常に批判的に内容を吟味しましょう。
個人情報保護
医療従事者として個人情報の保護は最重要事項です。AIに個人情報や機密情報を入力しないよう注意しましょう。
- これらを遵守するために意識すべきポイントは次の3つです。
- AI設定の確認:データや文章をアップロードする時は,患者の情報が学習されないように細心の注意を払いましょう。個人情報や機密情報は基本的に入力しないことを意識してください。
- 生成内容の検証:AIが生成した情報は必ず人間が検証しましょう。
- 適切な引用と参照:AIを使用した際は,論文内での明示や発表時の開示が求められる場合があります。投稿規定を確認することが重要です。
AIとの協働は,単なる業務効率化にとどまりません。医療の質の向上と,私たち自身の専門性のさらなる発展をもたらす可能性を秘めています。AIを賢く活用することで,私たちは本来の専門性を発揮し,より質の高い医療と研究に注力することができるのです。
この新しい協働の在り方が,私たちの働き方や研究活動をどのように変革していくのか。その可能性に,皆さんも期待を感じませんか? AIという新しい「同僚」と上手に付き合いながら,効率的で質の高い研究・論文執筆をめざしましょう!
中島 誉也(なかしま・たかや)氏 長崎大学病院麻酔科 修練医1年目
長崎大医学部医学科在籍時代から医療AIや臨床研究に興味を持ち,ベンチャー企業でのインターンや複数の臨床研究を手掛けてきた。2022年に同大を卒業。現在は麻酔・集中治療分野の大学院や国内外のデータベースを用いた臨床研究を行いつつ,麻酔科医として臨床業務にも携わっている。
X ID:@naka_takaya
タグキーワード
いま話題の記事
-
医学界新聞プラス
[第1回]心エコーレポートの見方をざっくり教えてください
『循環器病棟の業務が全然わからないので、うし先生に聞いてみた。』より連載 2024.04.26
-
PT(プロトロンビン時間)―APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)(佐守友博)
連載 2011.10.10
-
事例で学ぶくすりの落とし穴
[第7回] 薬物血中濃度モニタリングのタイミング連載 2021.01.25
-
連載 2010.09.06
-
寄稿 2016.03.07
最新の記事
-
対談・座談会 2024.10.08
-
対談・座談会 2024.10.08
-
神経病理の未来はどこへ向かうのか?
脳神経内科医と病理医の有機的なコラボレーションをめざして対談・座談会 2024.10.08
-
インタビュー 2024.10.08
-
寄稿 2024.10.08
開く
医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。