医学界新聞

寄稿

2008.07.21



【視点】

助産分野における専門職
大学院の評価始まる

堀内成子(聖路加看護大学教授・助産学)


 NPO法人日本助産評価機構(理事長=恵美須文枝氏)は,2008年4月8日付で,学校教育法第110条の規定にもとづく専門職大学院のうち助産分野の評価を行う認証評価機関として文部科学大臣より認証された。筆者は,本機構の助産専門職大学院認証評価部部長の役割を担っている。2004年度から,国公私立のすべての大学・短期大学および高等専門学校は,国による認証を受けた評価機関から,定期的に評価を受けることが義務づけられ,大学等の総合的な機関別評価は7年以内ごと,専門職大学院の専門分野の評価は,5年以内ごとと定められた。

 2004年4月にわが国で初めての助産分野の専門職大学院が誕生した。当時,助産分野の認証評価を担う団体はなかったため,日本助産師会,全国助産師教育協議会,日本助産学会の3団体が協力して,本機構を創設し認証を得るに至った。

 途中,第三者評価の文化が定着している米国,スウェーデン等に視察に出かけ,基準の選定,運用の実際,組織作りを学んだ。海外の助産教育事情は,看護教育を基礎に置くものと,助産学だけで教育課程を構成するものとに二分しているが,いずれにしても卒業時には自律した助産師として活躍できるだけの能力を付与している。本邦のように指定規則で6か月以上,正常分娩10例程度という最短最低ラインは珍しい。5月末に英国で開催されたICM(国際助産師連盟)では助産業務の範囲について,正常分娩を独占するだけでなくさらに,業務を拡大するかで熱い議論が交わされた。

 少子化や周産期医療の危機など母子保健・家族の健康をめぐる社会状況は刻々と変化しており,助産師の働きは今後ますます真価が問われる時代がやってくる。ニーズに即した,助産師一人ひとりの思慮ある行動が国民の将来,子どもたちの未来を左右すると言っても過言ではない。社会全体が,事後評価やピア(同僚)評価を重要視するようになり,またその結果やプロセスの公表を通じて説明責任を問うようになってきた。

 移り変わりゆく助産教育に携わっている者の一人として,誰のための教育,臨床,研究なのか,目的を見失うことなく,情熱を持って謙虚に学生とともに歩んでいく使命を果たしたい。

日本助産評価機構 URL=http://www.josan-hyoka.org/


堀内成子
聖路加看護大卒。聖路加国際病院勤務,東大大学院(修士),聖路加看護大大学院博士後期課程修了。2003年度より現職(学部長)。2000年より日本助産学会理事長。

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