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第2717号 2007年1月29日


看護のアジェンダ
 看護・医療界の“いま”を見つめ直し,読み解き,
 未来に向けたアジェンダ(検討課題)を提示します。
〈第25回〉
最期の場所の選択

井部俊子
聖路加看護大学学長


前回よりつづく

 2007年を迎え,団塊の世代たちはまたひとつ「高齢者」のカテゴリーに近づいた。私の願望であった「美人薄命」はもう完全に通用しなくなった。我々の世代は多産時代から多死時代に入ろうとしている。

高齢者の「住まい」問題

 先日の厚生労働省老健局「介護施設等の在り方に関する委員会」(委員長=東京大学名誉教授・大森彌,筆者も委員のひとり)では,わが国における高齢者の住まい等の状況について35枚の資料を用いた審議が行われた。内訳は,〈高齢化関係資料〉が5枚,〈住まい関係資料〉が18枚,〈療養病床関係資料〉が8枚,〈介護施設の現状関係資料〉が4枚であった。

 それによると,わが国の総人口は2004年にピークを迎えその後減少していくが,20-64歳人口は1999年から減少が始まっており,2030年には54.9%となる。一方,高齢者人口は増加を続け,2005年に20.1%である高齢化率は2030年には29.6%に達すると予測される。しかも高齢者人口は今後20年間,首都圏を始めとする都市部を中心に増加し,高齢者への介護サービス量の増加が見込まれるとともに,高齢者の「住まい」の問題への対応が不可欠となる。高齢化の進展に伴い,高齢者世帯が増加しているが,特に単身世帯と夫婦のみの世帯の増加が著しい。高齢者の一人暮らし世帯の数は,2025年には2005年の1.7倍になり,高齢者人口に占める割合は19.6%に達する。

 各国の全高齢者における介護施設・高齢者住宅等の定員数の割合をみると,スウェーデン(2005)は6.5%,デンマーク(2006)は10.7%,英国(2001)は11.7%,米国(2000)は6.2%であるが,日本は(医療療養病床を除くと)4.4%と少ない。

最期の療養として望む場所

 私の最も関心が高かったデータは,「最期の療養の場所の希望(本人)」(図)であった。つまり,自身が高齢となり,脳血管障害や認知症等によって日常生活が困難となり,さらに治る見込みのない疾病に侵されたと診断された場合に最期まで療養したい場所として,「一般」は22.7%が自宅,38.2%が病院,24.8%が老人ホームを選んでいる。ところが「医師」は,48.9%が自宅,25.5%が病院,10%が介護施設と回答している。では「看護職員」はどうか。41.2%が自宅,29.4%が病院,17.7%が介護施設を選択している。医師,看護職員とも,「一般」の回答と比較して「病院」よりも「自宅」の割合が高いことが明らかである。一方,「介護施設職員」は,38.0%が自宅,20.9%が病院,27.9%が介護施設を選んでおり,介護施設の割合が「一般」よりも高いことが特筆すべき点である。

 医師や看護職員が,病院での最期を選択する割合が低いことは,病院や医療の現実を批判的にみており,「病院幻想」を持たないからではないか。一方,介護施設職員が介護施設を肯定的にみていると考えられるのではないかと,私は委員会で発言した。医療者が病院でのサービスを肯定的にみていないことは問題だという意見や,「自宅」で最期を迎えることを希望するのは,圧倒的に男性ではないかといった意見があり興味深かった。さて読者はどう解釈されるであろうか。

つづく

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