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第54回日本創傷治癒学会開催
取材記事
2024.12.11
第54回日本創傷治癒学会が12月5~6日,木山輝郎会長(武蔵野徳洲会病院)のもと,「New innovations in wound healing:創傷治癒の新たなイノベーションを求めて」をテーマに一橋講堂(東京都千代田区)にて開催された。医学界新聞プラスでは,シンポジウム「働き方改革・タスクシフトに伴う創傷管理の新たな展開」(座長=石川県立看護大・紺家千津子氏,日医大・吉田寛氏)の模様を報告する。
◆早期発見・治療で医師の負担を軽減する
「目立つ瘢痕(肥厚性瘢痕およびケロイド)の管理には早期診断・治療が重要だ」。そう訴えるのは形成外科医の土佐眞美子氏(日医大)である。同氏は術後瘢痕の評価・治療で収集した1万人以上の患者データに基づき,術後1か月目の瘢痕をタイプ分類した上で,瘢痕化が目立つリスクの高いタイプに関しては,早期治療で瘢痕化率を効果的に抑制できたことを報告した。一方で,早期受診率が低い背景には患者が早期受診の重要性を知らない現状があると考え,患者が自ら瘢痕化を評価し受診につなげられるセルフチェックアプリの開発を進めている。アプリによる早期受診・治療で治療期間を短縮することで,医師の負担軽減にも寄与したいと抱負を語った。
◆皮膚・排泄ケア認定看護師の専門性を生かしてタスク・シフト/シェアへ
「超高齢社会の現在,独居高齢者や入所施設等からの救急搬送も多く,搬送時に褥瘡を多数保有している症例が少なくない」。こう語るのは,急性期病院の千葉医療センターで皮膚・排泄ケア認定看護師として活動する谷明美氏だ。同氏は医師による処置が行われるまでの待機時間の長さに伴う患者の身体的,精神的な苦痛や病棟の業務負担を改善する必要性を感じ,特定行為研修を修了した。平常時は多職種で編成された褥瘡対策チームで褥瘡管理に携わっているが,緊急入院の患者が褥瘡を保有している場合はチーム介入に先行して状態を把握。褥瘡の状態を形成外科医に報告し,必要に応じて早急なサージカルデブリードマン等の処置を依頼する。全身状態が安定してからはメンテナンスデブリードマンを実践し,悪化防止および治癒促進に努めているといった緊急入院における一連の対応を会場に共有した。こうした看護師による特定行為の実践が,常勤医が少なく多忙な形成外科医との「タスク・シフト/シェア」に寄与していると述べた。
続いて,皮膚・排泄ケア認定看護師であり診療看護師資格を有する佐々木多恵子氏(公立黒川病院)が,自らの訪問看護師の経験を生かし,患者の退院先が在宅や高齢者施設の場合であっても多職種と協働して創傷管理できる体制整備について発表した。褥瘡や下肢潰瘍などの慢性創傷を持つ入院患者の退院先で多職種がタイムリーに相談できる連絡体制の整備だけでなく,退院先へ出向き多職種に対して創傷処置・管理の講義や実技指導を実施していることを共有。院内と在宅や他施設の多職種が連携し,継続した創傷ケアを実践することで,創傷悪化による緊急処置・入院が回避できていると成果を述べた。患者にとって最善の創傷管理を多職種で支えることを目標にタスク・シフト/シェアすることで,多職種がぞれぞれのプロとしてかかわるシームレスな関係づくりができ,地域における質の高い創傷ケア提供が可能であると結んだ。
最後に登壇した松岡美木氏(埼玉医大病院)は,特定行為研修を修了した皮膚・排泄ケア認定看護師が入院,外来患者だけでなく,同大病院に併設する関連施設に往診して医師からの包括的指示のもとに特定行為を実践していることを会場に共有した。看護師による往診は,患者の通院負担をなくすだけでなく,医師が医師にしかできない治療に専念することを可能としており,タスク・シフトに寄与していると述べた。一方で,タスク・シフトについて院内で取り決めた主だったルールはなく,各診療科とのやり取りからタスク・シフトが成立している状況であるため,今後どのように進めていくか検討の余地があると語った。最後に,特定行為研修を修了した看護師は,タスク・シフトで求められる役割や業務をどのように受け止め,実践しキャリアを重ねていくかが重要であるとし,発表を終えた。
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