医学界新聞プラス

取材記事

2024.10.04

日本家族看護学会第31回学術集会が9月14~15日,井上玲子大会長(東海大大学院)のもと,「いま,語り合おう! 臨床家の実践知,研究者の探究知,そして家族の体験知――ダイナミックな融合をめざして」をテーマに鎌倉芸術館(鎌倉市)にて開催された。医学界新聞プラスでは,シンポジウム「日本文化から家族看護の高度実践をデザインする」(座長=井上氏,兵庫県立大・本田順子氏)の模様を報告する。

家族の形態や価値観が多様化する中,家族看護を展開していくことはこれまで以上に高度な取り組みになってきており,日本らしい家族看護実践を言語化すること,可視化することが求められている。シンポジウム「日本文化から家族看護の高度実践をデザインする」は,米国のFamily Nurse Practitioner(FNP)とClinical Nurse Specialist(CNS),そして国内で活躍する家族支援専門看護師が登壇し,高度実践者がどのような視点で家族看護を実践しているのかを開示することで,文化や制度の違いを踏まえた日本における家族看護の高度実践を描くことをめざしたもの。「国内の家族看護をデザインするためにディスカッションを行いたい」と座長の井上氏は参加者らに呼び掛け,セッションが始まった。

◆家族の在り方が多様化していく中で看護に何ができるのか
まず登壇したのは,米ハワイ州で健康診断,慢性疾患の管理などのために定期的に来院する患者や,突然のけがや病気のために来院する観光客を含む患者の外来を担当するFNPの西村ちえ氏(聖ルカクリニック・アラモアナ)である。1950年代以降の米国の医療事情にも触れつつNPの発展の歴史を解説した上で,「移住者が多い米国だからこそ,さまざまな文化・言語に配慮しながら,年代や性別を問わず幅広い患者層に対応していく必要がある」と,FNPとして働く難しさを共有した。続けてFNPとして働く日々の様子を写した写真を供覧。「診断・検査・治療が一人で完結でき,(患者の要望に対して)小回りが利きやすい」という看護の視点を持つFNPならではの利点を挙げた。

「単一の事例の解決で終わるのではなく,場合によっては病院組織をも巻き込んで安全な看護や医療の提供をめざすところにCNSの役割がある」。こう語るのは,米ハワイ州のクイーンズメディカルセンターで勤務していたCNSのヴァンオメン里香氏だ。同氏はCNSの働き方を示す具体例として,敗血症性ショックで救急搬送されたものの医療者からの治療提案を断り一刻も早く退院を希望する70代男性の事例を含む2事例を用いて,患者・家族へのかかわり方の可能性を紹介した。その例をもとに米国のCNSは直接的な看護ケアのほか,組織ポリシーの変革まで踏み込んだ介入を行うのが強みであると述べた。

急性期病院の入退院支援部門で在宅移行支援に携わる髙見紀子氏(北里大病院)は,少子高齢化が進み家族の在り方がさらに多様化していく今後の日本社会において,家族看護支援専門看護師の活動範囲が「病院から在宅へと広がる」と指摘する。近年,地域包括ケアシステムに基づく在宅移行が急速に進んでいること,また在宅医療機器の高度化も相まって患者家族に求められる介護力が上がっていることに言及。こうした課題に対し,「病院と地域をつなぐ役割」としての家族支援専門看護師の存在意義を説き,家族の多様化,施策や制度改正など,時代に即したマネジメントを実践していくべきとし,発表を終えた。

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写真 シンポジウムの様子

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