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[第3回] 本書の目的と構成
『トップジャーナルへの掲載を叶える ケースレポート執筆法』より
連載 向川原充,金城光代
2023.02.10
トップジャーナルへの掲載を叶える ケースレポート執筆法
臨床で出合った症例を報告するのは,臨床医として大切な役割である――。
一人でも多くの患者さんを助けるため,あるいは医学の発展に貢献するためにケースレポートの執筆は必要である。そう理解しながらも,「この症例は報告に値するのだろうか?」「どうすればアクセプトされるのか?」といった悩みから,二の足を踏んでしまう人も少なくないだろう。 そんな時に手に取りたいのが『トップジャーナルへの掲載を叶える ケースレポート執筆法』だ。臨床医の多忙な業務の合間でも執筆を進められる戦略とは何か。本書では,初学者向けの基礎から,熟練者による指導方法まで,効果的な執筆プロセスを解説する。
医学界新聞プラスでは,本書の「序章」の内容を抜粋し,症例報告の種類と考え方,本書の目的と活用方法を4回に分けて連載していく。
本書の目的は,いわゆるトップジャーナルと呼ばれる医学ジャーナルに,多忙な臨床業務の合間を縫ってどう症例報告を発信するかを,上記の考え方と執筆方法に基づいて紹介することです。本書はこれらを効果的に学べるよう,次のように構成されています。
第1章 症例の学びを抽出する
初めに紹介するのは,症例の教訓を抽出するための考え方です。第1章では,まず臨床医としての学びと,症例報告としての学びが本質的に異なることを説明します。読者を明確に想定し,誰の,何に関する考え方を変えるのかを十分検討することが,症例選択の鍵となります。
続いて,報告に適した症例を見極めるための方法を紹介します。診断が明らかになるプロセス,教訓と症例の関係などを検討することで,どのような症例が報告に向いているかを見いだすことができます。その上で,学びを洗練させるための方法や,その質の確認方法を提示していきます。
第2章 ストーリーを抽出する
教訓を検討したら,次に行いたいのはストーリーの抽出です。第2章では,症例からストーリー性を抽出する方法について考えます。ここでは,パブリック・ナラティブ(Public narrative)10)と呼ばれる,症例報告にも活用しやすい物語の型を提示し,症例のストーリー性について考えます。その上で,実際に症例提示を執筆する過程について検討します。現場で効率的に執筆を継続するために,執筆作業を分割して取り組みやすくする方法を紹介します。最後に,執筆した文章の推敲方法についても,その要点を提示します。
第3章 執筆チームを構成する
教訓とストーリーの抽出が終わったら,次に執筆チームの効果的な構成を考えましょう。これまでの症例報告や論文執筆に関する類書では,どのようなチームが効果的で,それをどう構築していくかの視点があまりありませんでした。ですが,症例報告といえどもチームとして執筆することになります。どのような役割のメンバーが必要で,それをどう選んでいくかを紹介します。また,指導者と学習者の双方の視点から,どう効果的に指導をする/受けるかについても提示していきます。
第4章 ディスカッションを組み立てる
続いて行うのは,ディスカッションの執筆です。多忙な現場で文献を執筆するためには,効果的かつ効率的に作業を進める必要があります。ここでは,ディスカッションに必要な4つの要素,ディスカッションの段落構成,そして英文執筆や文献検索/批判的吟味について,私たちのグループが行った実際の症例報告に基づいて紹介します。
第5章 投稿できる体裁に整える
原稿がある程度形になったら,次に考えるべきは体裁の調整や著者基準などについてです。第5章で提示するのは,著者基準,投稿要件,カバーレターなど,実際の投稿に必要な手続きについてです。なお,著者基準については実際の執筆への貢献を見ずには判断できないため,本書ではあえて執筆後に検討する形をとっています。ここでは,まず投稿要件と医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)の著者基準11)について確認し,そのピットフォールについても紹介します。
続いて,患者と家族の想いや,医療従事者の想いに配慮できる文献を作成するために必要な事項を提示します。症例報告において最も重要なのはその科学的妥当性です。しかしながら,現場にいる医師として症例報告を発信していくとき,症例に関わる方々の想いを可能な限り汲み取ることも,それと同じくらい大切なことです。これらを紹介した後,最後にカバーレターの執筆方法について,具体的な事例を踏まえつつ提示します。
第6章 フォローアップを確実に行う
最終章では,投稿や掲載後のフォローアップに関する内容を紹介します。査読コメントに効率よく対応する方法や,コメントを踏まえた再投稿のための戦略のアップデート,さらに編集作業や掲載日までの対応について説明します。また,著者としての責任は,論文掲載後も続くものです。責任ある著者として,掲載後に何が求められるのかについても紹介します。
文献
10)Ganz M:What is public narrative? 2016. https://projects.iq.harvard.edu/files/ganzorganizing/files/what_is_public_narrative.pdf
11)ICMJE:Recommendations for the conduct, reporting, editing, and publication of scholarly work in medical journals. 2021.
http://www.icmje.org/icmje-recommendations.pdf
トップジャーナルへの掲載を叶える ケースレポート執筆法
アクセプトの鍵は、ロジックと記憶に残るストーリーにある
<内容紹介>症例報告をテーマとした類書はあるが、その多くは掲載されるためのテクニック集であり、指導医の目線から論文執筆の指導法を解説したものはない。本書はインパクトのあるジャーナルに掲載されるための要素(症例の物語性、重層化されたすぐに活かせる学びのポイント、効果的な執筆チーム編成など)を概説し、症例報告を執筆する「考え方」や「方法論」を提示する。
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