医学界新聞

未来の看護を彩る

連載 新福 洋子

2020.03.23



未来の看護を彩る

国際的・学際的な領域で活躍する著者が,日々の出来事の中から看護学の発展に向けたヒントを探ります。

[DAY 9]国連本部でのスピーチ

新福 洋子(広島大学大学院 医系科学研究科 保健学分野教授)


前回よりつづく

 2月11日は,国際連合で定められたInternational Day of Women and Girls in Science(科学における女性と女児の国際デー)です。昨年末に第5回集会の招待状が届き,国連本部でのイベントということと,私自身が女性研究者である上に,アフリカにおける女性の健康向上を専門にしているため,研究の情報収集やネットワーキングの意味合いでもぜひ参加したいと思い,参加登録をしました。Royal Academy of Science International TrustとInternational Chamber of Commerceが主催であり,それらの事務局長であるNisreen El-Hashemite王女(医師)とJohn Denton氏からの招待状でした。

 私は2日間のイベントのうち2日目のセッションで,首相や大統領がよくスピーチする本会議場での登壇となること,また王族や使節に対する適切なご挨拶の仕方などの説明が事前に届きました。王族や使節へのご挨拶は初めてで戸惑いもあり,本当にあの有名な会議場で話すのか半ば信じられない気持ちでニューヨークに向かいました。

 初日は本会議場とは別の会議室で行われ,15歳のインドネシア系英国人のLara Louise Bevan-Shirazさんが司会を務め,António Guterres国連事務総長のビデオメッセージ,Nisreen王女,Zain El-Hashemite 王子らの挨拶に続き,11歳の米国人Olivia Cohnさんが女児へのSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)教育アクセスの拡大,科学やビジネスの未来展望を語ったことが印象的でした。その他にも大勢の女子中高生たちが会場に集まり,それぞれにロボットコンテストやAIプロジェクトなどの取り組みを紹介してくれました。これから科学者になりたいという若い世代のキラキラと輝く瞳に,これまで逆境があっても道を築いてきた女性科学者たちはとても誇らしい気持ちになるような集会でした。

 2日目は,事前の説明の通り本会議場での開催でした。Tijani Muhammad-Bande第74回国連事務総会議長の挨拶に始まり,Ilker Ayciトルコ航空理事長がトルコ航空ではこの10年間で女性パイロットを5倍に増やしたとの報告をしました。Sarah Mbi Enow Anyang Agborアフリカ連合委員会人的資源・科学・技術委員は,特にアフリカでは女性が家庭内の仕事を担うことが前提となっており,研究と家庭生活を両立できないこと,ジェンダーの公平性と,ただ人数が半々であることとは意味が違うことを力強く訴えました。

 その後のスピーチでは,司会のReema Khanグリーン・サンズ・イクイティ代表より,数字や統計よりもそれぞれのライフストーリーを主観的に語り合うことが促されました。起業家や投資家からは,STI(Science, Technology and Innovation)分野での女性への投資が少ないことへの無念や,今よりも女性支援が少ない中でシニアの科学者が道を切り開いてきた人生の語りがあり,「自分の夢のために何かを犠牲にしないといけない状況は許されない」という言葉が心に響きました。

 私はスピーチで自分の研究への思い,国際保健においては政策分野での知見やネットワークも重要であること,若手科学者支援,特に女性科学者支援に,Global Young Academyや日本学術会議若手アカデミーの横のつながりやサポートが有用であることを述べました()。国連本会議場のスピーチということで,かなりの反響がありました。特に未来を担う若い人材には勇気とエンカレッジメントをもらうことのできる機会であるため,今後私以外の女性研究者にもぜひ参加していただきたいと思いました。

国連本部でスピーチする筆者(前列)。後列右よりNisreen王女と司会のReema氏。

つづく

:当日の様子は下記URLで視聴可。
 https://bit.ly/2W5njxf

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