カリキュラム改正のポイントとその対応(看護教員「実力養成」講座2019の話題より)
2019.11.25
カリキュラム改正のポイントとその対応
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厚労省の看護基礎教育検討会(以下,検討会)は10月15日,「保健師助産師看護師学校養成所指定規則」および「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン」の改正案を最終の報告書にまとめ提言した(表1)。第5次となる本カリキュラム改正の内容は,保健師,助産師,看護師 3 年課程,准看護師課程で2022年度入学生から,看護師2年課程で2023年度入学生から適用される予定だ。
表1 看護師の教育内容見直しのポイント(文献1より) | |
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本カリキュラム改正のポイントと求められる対応は何か。検討会構成員として尽力してきた山田雅子氏(聖路加国際大大学院教授)と池西靜江氏(日本看護学校協議会会長,Office Kyo-Shien代表),教育方法学が専門の西岡加名恵氏(京大教授)が解説した医学書院主催セミナー「看護教員『実力養成』講座2019」(11月2日,大阪市)の模様を報告する。(写真:左から山田氏,池西氏,西岡氏)
社会における看護ニーズの変化に応じた改正
看護基礎教育の現場では今,高齢化の進展による成人看護学実習と老年看護学実習対象者の重複,少子化による小児看護学実習や母性看護学実習の実習施設確保困難などの現状がある。さらに,看護職員の就業場所が医療機関以外に訪問看護事業所や介護保険施設あるいは地域にある多様な看護の拠点などに広がり,求められる能力が多様化している。こうした背景の中,看護基礎教育をどのように行っていくべきか。
はじめに,検討会の看護師ワーキンググループで座長を務めた山田氏が,本改正のポイントとして,看護師教育では「〇〇看護学」などといった教育内容の枠組みは基本的に維持された一方で,「専門分野I」「専門分野II」「統合分野」の区分がなくなり,「専門分野」に一本化された点を挙げた。統合分野として3年次から学ぶことの多い「在宅看護論」は,「地域・在宅看護論」として1~3年次まで通して学ぶ科目に位置付けられた。さらに,単位数は合計5単位増えた(表2)。また,「看護師に求められる実践能力と卒業時の到達目標」は,到達度を示す「技術」は「手技」であるとした上で,項目が整理・統合された。
表2 看護師教育の内容と単位数の変更箇所(文献1より一部抜粋・改変) |
続いて西岡氏が,教育目標の達成に向けたカリキュラムの作成,評価,改善の方法を示した。氏は,カリキュラムの「逆向き設計」を推奨。達成すべき目標をあらかじめ明確にし,その評価方法を決定してから,指導法を計画する方法だ。測りたい学力に応じた評価方法を紹介した上で,「看護現場で必要とされる知識やスキルを活用・応用・総合して使いこなす能力が最も的確に測れるのは実習の場だ」と述べた。実習は教育学でいう「パフォーマンス課題」の集合体であるとし,その評価方法の考え方や進め方を具体的に解説した。
柔軟なカリキュラム編成や学生が主体的に学べる教育方法を推進するため,臨地実習における1単位当たりの時間数の設定は弾力的に運用できるように見直され,総時間数は示さないことになった。領域横断科目の考え方を用いた柔軟なカリキュラム編成に2010年から取り組む池西氏は,「これまでのカリキュラムは全国ほぼ共通であったが,今後は指定規則,指導ガイドラインに示される範囲内で,地域のニーズ,養成所の設立趣旨や理念,教員の願いなどを反映し各校が工夫して編成する必要がある」と指摘。今後強化すべき看護師の能力として,①保健指導能力,②臨床判断能力,③多職種と協働する能力,④地域・家族をみる能力,⑤ICT活用能力の5つを挙げ,①~④は領域横断型カリキュラムにより対応可能であると,自身の実践を紹介した。
在宅看護に長年かかわる山田氏は,「なぜ在宅看護論の位置付けが変わったのか,なぜ在宅看護論に『地域』が付くのか考えてみてほしい」と会場に投げ掛けた。地域包括ケアの中では看護師が働く場も対象も多様になる。将来的に実習施設の要件がさらに緩和されれば,何を学習するためにどの実習の場を選ぶかの自由度がさらに上がると指摘した上で,「自校の周囲にある関係機関や住民と出会い,共に学ぶ場を作ってほしい」と期待を示した。
セミナー終了後,参加者からは「カリキュラム改正に向けて取り組むべき点が明確になった」「教員である私たちも地域の一員として未来の創造に関与できることが楽しみになった」などの前向きな声が聞かれた。
参考文献
1)厚労省.看護基礎教育検討会報告書.2019.
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