医学界新聞

取材記事

2025.04.08 医学界新聞:第3572号より

◆第9回生体の科学賞は熊本大の中尾光善氏に

 第9回生体の科学賞授賞式が3月6日,医学書院(東京都文京区)にて行われた。本賞は金原一郎記念医学医療振興財団(代表理事=上武大・澁谷正史氏)の基金をもとに,2016年度に創設。基礎医学医療研究領域における独自性と発展性のあるテーマに対して,研究費用全般への支援を目的に,1件500万円の助成を行うものである。

 今回は,中尾光善氏(熊本大発生医学研究所)による「エピゲノム機構による細胞制御と病態の分子基盤」が受賞した。

 あいさつに立った氏ははじめに,「健康とは何か」について考察。同じ遺伝素因を持つ人でも環境要因や生活習慣によって健康から病気まで幅広くバリエーションを生じるのは,エピゲノムで形成される体質に起因すると考えられるとした。受賞の契機となった研究では今後,環境因子が細胞・個体に作用してエピゲノムの特性を転換し,健康や疾患感受性につながる基本メカニズム,およびその評価・制御技術の創出をめざしていく。「エピジェネティクスは『生体の科学』そのものであり,今回の受賞をひときわ感慨深く思っている。本研究が進展することで,将来の医学・医療の進歩につながることを期待している」と語り締めくくった。

 澁谷氏は代表理事の立場から,「研究者を取り巻く状況は厳しさを増すばかりだが,今回の受賞を糧として,中尾先生が大いに活躍されることを祈る」と激励の言葉を述べた。

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写真 中尾光善氏

◆第77回認定証(研究交流助成金・留学生受入助成金)贈呈式

 金原一郎記念医学医療振興財団は3月6日,医学書院にて第77回認定証贈呈式を開催した。同財団は基礎医学の振興を目的に,助成金を年に2回交付している。下期である今回は,海外で行われる基礎医学医療に関する学会等への出席を助成する研究交流助成金と,基礎医学医療研究を目的に日本へ留学する大学院生等を助成する留学生受入助成金が交付された。今回の助成対象者は16人で,贈呈式には研究交流助成金対象者代表の石坂彩氏(東大医科研),野口玲氏(国立がん研究センター)の2人が出席した。

 開会に際し,金原優同財団業務執行理事(医学書院)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された同財団の概要を紹介。「今回の助成金を研究の増進・進展に役立て,今後さらに活躍してほしい」と呼びかけた。

 研究交流助成金交付対象者を代表して,HIV感染症の進行における腸内細菌叢の役割について研究する石坂氏があいさつに立った。氏は本年3月にアメリカ・サンフランシスコにて開催されるThe 32nd Conference on Retroviruses and Opportunistic Infe ctionsへの参加を予定しており,「基礎研究と臨床研究の最新データが議論される活気ある学会で新しい情報を得ることを今後の研究の糧と...

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