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『レジデントのためのビジネススキル・マナー――医師として成功の一歩を踏み出す仕事術55』より

連載 松尾 貴公

2024.04.12

企業に入職した会社員は新人研修で一通りの社会人としての基本的なマナーや仕事術を系統的に学ぶことが多いものの,医師にはそのような機会が乏しいのが現状です。その結果,医療者以外の方と共に仕事をしたり,コミュニケーションをとったりする中で,恥をかく経験やトラブルに至ってしまうケースもあります。そんな状況を防ぐために,社会人として必要な基本的な心得,院内・院外で必要なマナー,医師として必要な仕事術について紹介したのが『レジデントのためのビジネススキル・マナー』です。「医学界新聞プラス」では,本書の中から全3回にわたって内容を一部抜粋して紹介をしていきます。

学会でのコミュニケーションを通して自分を売り込む!

その道の大家と知り合いになれる絶好のチャンス!

#自分を売り込む #学会でのスキル 

POINT
  専門家に積極的に声をかけよう
  同世代の活躍を見て刺激を受けよう
  ネットワーク作りを通して今後の活動の幅を広げよう

 

学会は発表以外にもメリットがたくさん

皆さんのなかには、すでに学会に参加したことがある方もこれから挑戦したいと思っている方もいると思います。

学会に参加する方のほとんどが、症例報告や研究報告など、ご自身の発表のために準備をして学会に参加するでしょう。学会に参加する目的に関しては人によってさまざまだと思いますが、ここでは特に強調したいポイントとしての「ネットワーク作り」を中心に、いくつかの心得とテクニックについて紹介します。また、『レジデントのためのビジネススキル・マナー』前項32「名刺を使いこなす」で詳述しましたが、名刺は必須アイテムになります。

専門家に会えるチャンス


学会は、トップジャーナル、教科書、ガイドラインを執筆している一流の専門家に会える絶好の機会です。セッションの中で質問することもできますし、講演後に個人的に質問をすることも可能なことが多いです。積極的に自分から挨拶をして顔と名前を覚えてもらいましょう。超一流の先生の名刺をもらえたらラッキーです。

一流であればあるほど捕まえることは難しくなりますが、「エレベーター・ピッチ」テクニックが役に立ちます。

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同世代から刺激を受ける


学会では他の施設で頑張っているあなたと同じ世代の姿をたくさん見ることができます。個人的に上述の専門家に会えることに加えて、この同世代の活躍の刺激は学会の最大のメリットだと思っています。自施設のみでは得られない刺激から自分がさらに頑張ろうという大きなモチベーションにつながります。学会によってはYoung Investigator Awardや若手研修医賞などを設定しているものもあり、聴講すると、「同世代なのにどうやったらこのような素晴らしい研究や発表ができるのだろう」と思うことが何度もあり刺激を受けました。

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多くの人と知り合いになりネットワーク作りを


学会によっては懇親会が企画されていたり、ネットワーク作りのためのイベントが開催されたりしますので、積極的に参加し活用することをお勧めします。例えば若手部会などを通して同世代と仲良くなり情報交換に役立つこともあるでしょうし、海外学会では日本人会と称されるイベントもあります。海外での日本人コミュニティで得た出会いは貴重な財産です。少し年次が上がり研究を実践するようになると、他施設の先生とのつながりから多施設共同研究が可能になることもあります。ここでも『レジデントのためのビジネススキル・マナー』前項32「名刺を使いこなす」で紹介した「名刺」は必須アイテムです。海外学会ではもちろん英語版も用意しておきます。

学会に参加する際の必須テクニック

3-3-3を意識して最大効果の学びを発揮する

#自分を売り込む #学会でのスキル

POINT
  学会前にスケジュールや抄録をレビューしてみよう
  セッションでは発表者、司会者、質問者の3つを意識する
  学会後にすぐアウトプットを行ってみよう

 

①学会前にやること3つ


学会前に全体像を把握し効率よく時間を使う
学会での学びを最大限にするためには、どのセッションに参加するかを事前に計画することが必須です。

まず、プログラムやスケジュールを把握し、参加したいものをチェックします。これは「テーマ」で選ぶ軸と、「人」で選ぶ軸があります。自分の興味のある分野の周辺テーマをチェックしたい場合は前者、前項で紹介した「自分が目当てとする人」と挨拶をしたい、有名プレゼンターの手法を学びたい、ということであれば後者かと思います。同時に開催されている場合などはオンデマンド配信の有無も確認し、後からでも視聴できるものかどうかを確認します。また、大きな会場で開催される場合は、部屋の移動に必要な所要時間も加味して事前に計画する必要があります。

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抄録を素早くチェックして人、テーマをおさえる
事前にセッションのテーマと興味がある分野の抄録に目を通すことも重要です。これにより事前に聞くべきポイントを明確にすること、また質問したい内容を考えることが可能になります。すべてを読むことは難しいですが、時間がなくても学習効果を高めるために是非時間を作って実行してみてください。


ミーティングのアポイントを事前に取る
以前お世話になった恩師や、自分が会いたいと思っている人には事前に余裕をもってアポイントをとっておくことも重要です。

研究の相談やアドバイスの依頼など、メールのやり取りだけで難しい場合、実際に短時間でもミーティングを企画することで一気に進む場合があります。
 

②セッション中に着目すべき3つ


発表者に着目する
他の発表を聴講するメリットは大きく2つあります。1つ目はその分野についての知識を得られること、そして2つ目は、プレゼンテーションそのものについて参考にできるということです。個人的に特に研修医の皆さんにとっては2つ目が重要ではないかと思います。例えばレクチャー形式のセッションで毎年人気のあるプレゼンターの場合は会場がすぐに満員になります。

内容はもちろんそうですが、発表の際のDelivery(伝え方)、具体的には話し方、スライドの見せ方、間の置き方などです。また、質問に対する回答の仕方も参考にすることができます。他の人の発表の良いところを今後の自分の発表に活かすことができます。

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質問者に着目する
これは気づきにくいですが、質問する人がどのような視点で発表について質問しているかを参考にすることができます。「良い質問」は発表では取り上げなかった別の視点や聴衆が思っている疑問を明確にするためにセッションを盛り上げることができます。どのようなタイプの質問かを分析することで自分の質問力の向上にもつながります。(『レジデントのためのビジネススキル・マナー』別項41「質問力」参照)


司会者に着目する
上記の質問者以外に、追加でコメントをしてくれたり質問をしてくれたりする司会者もいます。司会者は事前に発表内容について把握していることがほとんどなので、特に鋭い切り口で質問をすることもあります。司会者がどのような質問を投げかけるかを意識することで自分の発表でも想定される質問を意識して準備することができます。また、将来司会をする機会が皆さんも必ずあるはずなので、その際の参考にもなります。
 

③学会後にやること3つ


学びをアウトプットに変える
詳しくは『レジデントのためのビジネススキル・マナー』別項42「情報整理力」で解説しますが、学会で聞いたことをメモして学んだつもりになっていることを多く経験しました。やはり誰か別の同期に伝える、所属先のチームに報告する、ブログなどで発信する、など皆さんの一番良い方法でアウトプットすることをお勧めします。早ければ早いほど良いです。


お礼のメール
前述しましたが、名刺交換をした人にはすぐにお礼のメールをします。また発表に際してお世話になった指導医や同僚にも発表のご報告とお礼のメールをします。これは学会後でなく学会中でもすぐにやるべきことの1つです。できるだけ早く、遅くとも別れてから2時間以内に。


研究計画
学会中はさまざまな学びがありますが、最大のメリットは自分の興味がある内容の周辺テーマや、参考になる研究デザインなどを通して、次の研究テーマが思いつくことがあることです。学会はアイデアを蓄える場所として、例えば口演だけではなく掲示されているポスターをゆっくり回る時間も重要だと思います。そこでいかに自分なりにアンテナを張ってクリエイティブな仕事や研究につなげるか、これが学会の醍醐味だと思います。


上記のように学会はさまざまな学びと人との出会いの場所として重要な位置づけを持つと思っています。日常臨床を離れて観光や美味しいものを食べることも大事ですが、意識づけ次第で学会が今後の皆さんにとって何倍もの成果をもたらすことができると思っています。是非とも上記を意識して積極的にチャレンジしてみてください。

 

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