金原一郎記念医学医療振興財団
第76回認定証(第39回基礎医学医療研究助成金)贈呈式開催
取材記事
2024.11.12 医学界新聞(通常号):第3567号より
金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=上武大学長・澁谷正史氏)は,このほど「第39回基礎医学医療研究助成金」の交付対象者を選出(助成金額2130万円,32人)。10月16日,医学書院(東京都文京区)にて第76回認定証贈呈式が開催された。
開催に際し,金原優同財団業務執行理事(医学書院代表取締役会長)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継ぎ,基礎医学研究への資金援助と人材育成への助力を目的として1986年に設立された同財団の背景を紹介。選出された交付対象者をたたえ,「助成金を研究活動に有効活用し,日本の基礎医学の進歩にいっそう貢献してほしい」と激励の言葉を述べた。次に,本助成金の選考委員長も務める澁谷氏は,「近年の医学・医療の発展は目覚ましいものがあるが,研究を進めるほど奥が深く,まだまだ未知の領域が広がっていることに気づく。探求心を忘れず,今後ますます研究活動に励んでほしい」と述べ,祝辞とした。
続いて,交付対象者を代表し,髙野晴子氏(日医大教授・助成対象「肺胞形成に関わる内皮細胞集団の発生機序解明と医療応用」)が壇上に上がった。氏は血管内皮細胞特異的な低分子量Gタンパク質ノックアウトマウスを解析し,内皮細胞が筋線維芽細胞の足場となる基底膜を形成することによって,筋線維芽細胞の収縮を促進し,肺胞形成を制御していることを突き止めた。これにより血管内皮細胞が肺胞の形成において積極的に形態形成に寄与することが明らかになり,今後さらに研究が進むことで,損傷肺に対する再生治療への応用も期待される。あいさつの最後に氏は日本の科学技術力および研究力の低下が懸念されている現状に触れ,「研究は楽しい時ばかりではないが,日本の医学の基盤を支えていけるよう,着実に歩みを進めたい」と締めくくった。
第39回基礎医学医療研究助成金交付対象者
No. | 氏名 | 所属機関(応募時) | 研究テーマ(和文) |
1 | 青山 慧 | 東医歯大学院/医歯/臨床腫瘍学分野 | 新規キメラ抗原受容体を用いた革新的ながん治療の開発 |
2 | 磯部 更紗 | 国際医療福祉大/循環器内科 | 薬剤誘発性肺高血圧症の新規メカニズムの解明 |
3 | 井上 大地 | 阪大学院/医学/がん病理学教室 | レドックスから解く造血制御機構の解明 |
4 | 梅根 隆介 | 長大学院/医歯薬/内臓機能生理学 | 腎交感神経の光遺伝学的制御手法を活用した新規腎臓病保護機構の解明 |
5 | 大澤 志津江 | 名大学院/理学/ 生命理学専攻 遺伝学グループ |
がん微小環境で生じた局所的な細胞間相互作用とその腫瘍成長制御機構の解明 |
6 | 大脇 貴之 | 名大/医学/臨床研究教育学講座 | 腫瘍免疫微小環境を上流調節するがん関連線維芽細胞の働きに着目した免疫チェックポイント阻害剤リチャレンジ療法の開発 |
7 | 小林 天美 | ハーバード大/医学/脳神経内科 | tRNA断片を標的としたタウ蛋白凝集・細胞間伝播の制御による神経変性疾患薬治療の開発 |
8 | 小松 哲郎 | 群大生体研/ 代謝エピジェネティクス分野 |
代謝物である乳酸は脂肪細胞エピゲノムに代謝記憶を形成するか |
9 | 小松 紀子 | 東医歯大難治研/免疫制御学 | 自己免疫疾患における間葉系細胞の悪性化機構の解明 |
10 | 昆 彩奈 | 東大医科研/血液・腫瘍生物学分野 | 胚細胞変異と後天的ゲノム異常の協調による骨髄系腫瘍発症の分子病態の解明 |
11 | 邵 文華 | 徳大学院/医歯薬/分子病理学分野 | 有機フッ素化合物(PFAS)の長期曝露による肝疾患の病態修飾機序の分析病理学的検討 |
12 | 髙野 晴子 | 日医大/ 先端医学研究所 病態解析学部門 |
肺胞形成に関わる内皮細胞集団の発生機序解明と医療応用 |
13 | 田崎 慶彦 | 名市大学院/医学/臨床薬剤学 | 空間トランスクリプトーム解析を用いた好酸球の腫瘍組織と正常組織で異なる免疫応答の解析 |
14 | 田村 昌子 | 都医総研/フロンティア研究室 | アストロサイトGlut1に着目した脳内グルコース取り込み機構の解明 |
15 | 田村 友和 | 北大学院/院医研/病原微生物学教室 | フラビウイルス感染動態の時空間的解析 |
16 | 中嶋 藍 | 東大学院/理学研/薬品作用学教室 | 嗅覚受容体創薬への構造基盤型アプローチ |
17 | 中村 修平 | 奈良医大/生化学講座 | オートファジーの加齢変容による発がん機構の解明 |
18 | 鍋倉 宰 | 愛知がんセンター研/ 腫瘍免疫応答研究分野 |
次世代ナチュラルキラー細胞療法の開発に向けた基盤技術の構築 |
19 | 納富 昭司 | 九大学院/眼科学分野 | 単核貪食細胞系におけるミトコンドリア分裂とオートファゴソーム成熟の役割:網膜変性の病態への関与 |
20 | 橋本 恵 | お茶の水女大/ ヒューマンライフサイエンス研究 |
生理活性脂質によるミクログリオーシス制御を応用した認知症治療法開発 |
21 | 羽鳥 恵 | 名大トランスフォーマティブ 生命分子研究所 |
うつ病の新規分子機構解明 |
22 | 藤原 奈津美 | 徳大学院/医歯薬/ 口腔保健医療管理学分野 |
口腔がん患者由来Fusobacterium nucleatumの亜種同定と口腔がん進展に及ぼす影響 |
23 | 古家 雅之 | 阪大学院/医学/ 器官制御外科学(整形外科 |
細胞間接触を介した破骨細胞・骨芽細胞連関によるカップリング機構の解明 |
24 | 北條 宏徳 | 東大学院/医学/疾患生命工学センター | 骨格系・造血系疾患の研究基盤の構築に向けたヒト骨オルガノイド法の確立 |
25 | 牧野 浩史 | 慶大/医学/生理学II教室 | アルツハイマー病認知障害の理論・実験的理解 |
26 | 丸山 和晃 | 三重大学院/医学/修復再生病理学 | リンパ管機能阻害による革新的悪性腫瘍治療開発 |
27 | 三宅 崇仁 | 京大学院/薬学/ システムバイオロジー分野 |
非典型薬物代謝酵素発現制御メカニズムに基づく医薬品-医薬品相互作用への理解の深化 |
28 | 森下 英晃 | 九大学院/生体機能学分野 | 大規模細胞内分解現象の分子基盤の解明 |
29 | 箭原 康人 | 阪大学院/生命機能/免疫細胞生物学 | 造血発生と骨髄腔形成の協奏的ネットワークの探求 |
30 | 山本 隆広 | 熊大病院/ 脳神経外科学講座脳神経外科学講座 |
悪性脳腫瘍におけるmRNAエピトランスクリプトミクス機構の解明と治療応用 |
31 | 山本 毅士 | 阪大学院/医学/腎臓内科学 | 腎老化に対抗するMondoAとオートファジーの協調的な代謝調節機構の解明 |
32 | 吉田 彩舟 | 東邦大/理学/生物分子科学科 | Hedgehogシグナルの新規活性化メカニズムの解明と創薬応用 |
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