学会SNSワーキンググループが発足
第21回日本臨床腫瘍学会学術集会の話題より
取材記事
2024.03.11 週刊医学界新聞(レジデント号):第3557号より
第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(会長=愛知県がんセンター・岩田広治氏)が2月22~24日,「Break the Borders and Beyond――for our patients」をテーマに名古屋国際会議場(名古屋市)にて開催された。本紙では,学会SNSに関するシンポジウムを報告する。
◆JSMO SNS元年,欧米学会の活況をめざして
日本臨床腫瘍学会(JSMO)では,広報渉外委員会の下部組織として,専攻医からがん薬物療法専門医まで幅広い世代のJSMO会員から成る「SNSワーキンググループ(SNS-WG)」が2023年4月に発足。会員のSNS利用を活発にするための環境整備,医学生・研修医や一般市民に向けた腫瘍内科・JSMOの認知度向上,JSMOの国際化を主目的として活動している。委員会企画 「SNS-WGシンポジウム」(司会=滋賀県立総合病院・後藤知之氏)では新たな試みとして,写真撮影・SNS投稿(ハッシュタグ:#JSMO2024)を推奨する形で開催された。
「JSMO SNS元年」と題して登壇した山口祐平氏(名古屋医療センター)は学会としてのSNS利用指針の作成など,WGのこれまでの活動を報告した。さらに現在進行中のプロジェクトとして,SNSへの学会発表スライド投稿許可申請の準備を進めていることを表明。「米国臨床腫瘍学会(ASCO)・欧州臨床腫瘍学会(ESMO)では当たり前となった光景をJSMOでも実現したい」と抱負を語った。続いて上原悠治氏(都立駒込病院)がアカデミアにおけるSNSの使い方を考察した。SNSを活用するメリットとしては①最新情報アップデート,②自らの研究内容の認知度向上,③新たなコネクションの形成,④患者・市民参画の促進,⑤若手リクルートの5点を提示。特に③については,海外の学会では参加者バッジにXのハンドルネームを記載することが推奨され,学会終了後も関係性の維持につながったという実体験を語った。
最後に登壇したのは,本邦での学会公式SNSの黎明期にある2018年より日循の情報広報部会副部会長としてその活動を牽引してきた岸拓弥氏(国際医療福祉大)。日循X公式アカウント(ID:@JCIRC_IPR)のフォロワー数は国内学会最大級の約2万人に達し,SNS活動の効果を検証する多数の解析論文も発表している。さらに今年は,演者許諾を得た発表については学術集会参加者は誰でも撮影可能になるよう指針を改訂。実現すれば日本医学系学会初となる。岸氏はこれらの成果と同時に,学会SNS運用の限界や注意点にも言及。「誰に,何を伝えたいのか」「どの時点の何の数字で効果判定をするのか」を明確にすることが肝要であり,後者について日循の場合はガイドラインのダウンロード数をエンドポイントにしていることを明らかにした。
3人の演者の口演のあとは,扇屋大輔氏(東海大),尾崎由記範氏(がん研有明病院),高見澤重賢氏(NTT東日本関東病院)も加わり,個人がSNSを運用する意義や学会SNSの在り方が議論された。SNSを運用する上では著作権や個人情報保護に配慮する必要があり,特に後者については「患者が特定される恐れがあるため,症例報告は投稿しない」といったTipsも共有された。岸氏からは,学会WGのこれまでの活動を評価した上で,「とにかく真面目に,継続的に」とエールが贈られた。
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