医学界新聞

寄稿 河原加奈枝,三島就子

2023.06.12 週刊医学界新聞(レジデント号):第3521号より

 母性内科という分野をご存じでしょうか。母性内科は平たく言うと,「妊婦さんのための内科」です。妊娠中だけでなく,妊娠前から産後,そして次の妊娠や更年期に向けて,女性の健康を内科的側面から全力で支えることで,より良い妊娠転帰と長期的な母児の健康維持をめざします1)

 私(河原)は,多摩総合医療センターでの内科後期研修中に母性内科の存在を知り,卒後7年目のタイミングで国立成育医療研究センター母性内科に6か月間の短期研修をする機会に恵まれました。本稿では,母性内科研修を通して学び得る知見を報告します。

◆妊娠変化に合わせた診療

 多摩総合医療センターでは,総合診療科の中に母性内科部門2)が展開されています。同センターでの研修では妊娠高血圧症候群を中心に,貧血,喘息,胸やけ,頭痛など,妊娠中に偶発的に出てきた症状への対処法を学びました。母体のおなかに隠れた「子」の存在を意識しながらの診療は,さながら上級医の援助が常に必要な初期研修医時代に戻った気分でした。毎日の血圧測定や内服,体重管理など,わが子のために自己管理を頑張ってきた妊婦さんが無事に出産し,お母さんになっていく姿を見ることがとても嬉しく,母性内科診療にやりがいを感じるようになりました。

 そして,母性内科をさらに深く知るため,2022年4~9月に国立成育医療研究センター母性内科3)で診療部長の 金子佳代子先生,日本母性内科学会理事長である村島温子先生4)のもとで研修させていただきました。同センターは妊娠にかかわる診療ガイドライン作成の中心になっており,各科で専門性の高い妊娠症例を管理していました。土地柄もあり,多摩総合医療センターの母性内科と比べると受診者は40歳以上の女性や不妊治療後の妊娠例が多く,必然的に妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病での管理を要する症例も多い印象でした。さらにCOVID-19が猛威を振るっていた時期でもあり,多くの妊婦さんは感染が与える子への影響や妊娠中のワクチン接種の是非,治療薬の安全性について不安を抱えていました。そのような中でも,母性内科の先生方は少ない情報を吟味して治療薬を使用するか否かを判断し,患者さんの質問に丁寧に答える診療をされていて,とても勉強になりました。

◆ジェネラリストが活躍できる母性内科

 今回の研修を通して,妊婦さんの多くは慢性疾患を持っていなくても,気軽に相談できるかかりつけ医がそもそも存在しない,妊娠後に一般内科的な主訴で医療機関を訪れても「妊娠」というタグが付くだけで十分な治療を受けられないといった現状が多くあることを知りました。そのため,母性内科では一般内科と同様に総合的に診療できる医師の存在が重要であると実感しました。例えば膠原病合併妊娠の症例では,全身管理がとても重要です。原疾患以外の血圧や血糖など,妊娠変化に合わせた多角的な視点からの対処は,総合内科/総合診療科を基盤に内科研修を積んだ医師にとっても学びが多く,やりがいを感じやすいと思います。

 以上の点から,母性内科とジェネラリストは非常に親和性が高く,総合内科・総合診療科で診療をされている医師には,母性内科という活躍できる土壌が広く存在し,研修を受けられる環境があることを知ってほしいと強く願っています。

 その他,母性内科の診療については,2018~20年にmedicina誌で三島が連載『母性内科の「め」妊婦・授乳婦さんのケアと薬の使い方』を執筆しています。ぜひご覧ください。


謝辞:多摩総合医療センターでの研修と本執筆の機会をいただきました綿貫聡先生,国立成育医療研究センターでの研修機会を与えてくださいました金子佳代子先生,村島温子先生に心より感謝申し上げます。

1)日本母性内科学会.
2)東京都立多摩総合医療センター.母性内科について.
3)国立成育医療研究センター.母性内科.
4)村島温子.内科医が知っておきたい,母性内科の視点.週刊医学界新聞第3263号.2018.

東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療科 母性内科部門

2016年筑波大卒。同年東京都立多摩総合医療センター初期臨床研修医,18年同院総合内科専攻医。22年より現職。

東京都立多摩総合医療センター 救急・総合診療科 母性内科部門

2009年福岡大卒。同年天理よろづ相談所病院総合診療教育部研修医,14年同院総合診療教育部/総合内科医員。15年国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター母性内科フェロー。19年より現職。