金原一郎記念医学医療振興財団助成金
取材記事
2023.04.03 週刊医学界新聞(通常号):第3512号より
第7回生体の科学賞は熊本大の須田年生氏に
第7回生体の科学賞授賞式が3月8日,医学書院(東京都文京区)にて行われた。本賞は金原一郎記念医学医療振興財団(代表理事=上武大・澁谷正史氏)の基金をもとに,2016年度に創設。基礎医学医療研究領域における独自性と発展性のあるテーマに対して,研究費用全般への支援を目的に,1件500万円の助成を行うものである。
今回は,須田年生氏(熊本大)による「造血幹細胞の自己複製機構に関する解析」が受賞した。氏はマウスの胎児肝における幹細胞の大半が自己複製をしており,観察される血液細胞の大部分は造血幹細胞には依存せず,血管内皮細胞から独立して発生していることを発見。この発見は,造血幹細胞の試験管内誘導法の開発に寄与すると考えられ,自己複製と分化イベントはそれぞれ切り離してとらえるべきとの見解を示した。
受賞のあいさつに立った須田氏は,「幹細胞の基礎研究はますます本質に近づいている。こうした時期に研究助成をしていただけたことに深く感謝する」と語った。
澁谷氏は代表理事の立場から,「研究者のポストや補助金の減少など,国内の基礎医学研究における課題は多くある。今回の受賞を糧として,須田先生が基礎医学研究のリーダーとしてさらに活躍されることを祈る」と激励の言葉を述べた。
第73回認定証(研究交流助成金・留学生受入助成金)贈呈式
金原一郎記念医学医療振興財団は3月8日,医学書院にて第73回認定証贈呈式を開催した。同財団は基礎医学の振興を目的に,助成金を年に2回交付している。下期である今回は,海外で行われる基礎医学医療に関する学会等への出席を助成する研究交流助成金と,基礎医学医療研究を目的に日本へ留学する大学院生等を助成する留学生受入助成金が交付された。今回の助成対象者は13人で,贈呈式には研究交流助成金対象者代表のNur Zeynep Gungor氏(理研),留学生受入助成金対象者代表のGe Peng氏(順大),他3人が出席した。
開会に際し,金原優同財団業務執行理事(医学書院)が,医学書院の創業者・金原一郎の遺志を継いで設立された同財団の概要を紹介。「今回の助成金を研究の増進・進展に役立て,今後さらに活躍してほしい」と呼びかけた。
研究交流助成金交付対象者を代表して,恐怖と不安を処理する神経メカニズムについて研究するGungor氏があいさつに立った。氏は本助成金を活用し,本年7月にスペイン・バルセロナにて開催される「感情,認知,疾患における扁桃体の機能」研究会議と同名の研究セミナーに参加予定。マウスを用いた実験により扁桃体中心核エンファリン(CeA-ENK)細胞がネガティブな体験やトラウマからの回復に重要な役割を果たすことを発見した自身の研究に触れ,「世界の著名な研究者との意見交換を通じて,研究の考察を深める絶好の機会にしたい」と研究会議参加への意気込みを語った。
続いて,留学生受入助成金対象者を代表してPeng氏が登壇。氏は,2019年に来日しFrancois Niyonsaba氏(順大)の下でアトピー性皮膚炎と抗菌ペプチドの研究に携わり,本年4月よりポスドク研究員としてアトピー性皮膚炎の分子標的治療の制御・治療法の開発研究に従事する。今回の助成金の交付に感謝の言葉を述べた後に,「研究活動に全力を注ぎ,社会に貢献できるよう努力する」と今後に向け...
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