患者報告アウトカムの実装へ
第43回日本臨床薬理学会学術総会の話題より
取材記事
2023.01.09 週刊医学界新聞(レジデント号):第3500号より
臨床研究や日常臨床における患者評価の中で,患者報告アウトカム(Patient Reported Outcome:PRO)の利用が広がっている。患者自身が評価を行うことで有害事象や症状悪化の早期発見,評価の高精度化につながることが期待される一方,現在の利用法が最適化されているとは言い難い。それでは,今後どのような利用が望まれるか。第43回日本臨床薬理学会学術総会(2022年11月30日~12月3日,神奈川県横浜市)で開催されたシンポジウム「患者報告アウトカムの価値と活用」(座長=東北大・山口拓洋氏,東京医大・東加奈子氏)の模様を報告する。
◆患者の負担軽減とより高精度な患者評価に向けたePROの導入を
宮路天平氏(Meaningful Outcome Consulting)は,これまで用いていた紙媒体の調査票から,電子システムを用いてデータを収集するePROの導入が進んでいる点に言及した。課題としてePROシステム運用の方法論やノウハウが十分に共有されていない点を指摘。PROを用いた臨床試験の研究計画書ガイドライン「SPIRIT-PRO拡張版」を紹介し,データ収集において規制要件を満たした上で研究デザインを考慮した仕様や運用を決める重要性を会場に呼びかけた。
がんの支持療法において,医療従事者による患者の苦痛把握が困難である課題に対する自施設の取り組みを紹介したのは聖マリアンナ医大の堀江良樹氏。ePROと電子カルテの統合によって患者が来院日間の自宅療養中に記録した症状変化を外来で共有できることで,医療者―患者間のコミュニケーションや症状マネジメントの改善につながったと報告した。さらに患者状態の変化と抗がん薬・制吐薬投与などの臨床情報とが紐づくことで,「健康記録アプリ」などに比べてより意義のあるアセスメントが可能になるとの考えを述べた。
続いて登壇した佐野元彦氏(星薬科大)は,がんサバイバーであり薬剤師・研究者としての顔も持つ。氏は,上記3つの視点からePROの有用性を考察。告知直後や入院初期には患者の身体的・精神的負担が大きいことから,入院後期や外来治療におけるePROの活用に期待を寄せた。
この他,山口拓洋氏がPROの臨床的重要性と付加価値について,川口崇氏(東京薬科大/東北大)が有害事象を対象とした研究を中心に,本邦におけるePROの活用事例について報告した。
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