慢性疼痛診療に精神科医の参画を
第118 回日本精神神経学会学術総会の話題より
取材記事
2022.07.18 週刊医学界新聞(通常号):第3478号より
慢性疼痛患者の多くは睡眠障害,抑うつ,不安などの精神神経症状を併発するため,精神科医による診断・治療へのさらなる介入が望まれている。では実際に,どのようなかかわりが求められるか。第118回日本精神神経学会学術総会(6月16~18日,福岡県福岡市)で開催されたシンポジウム,「慢性疼痛」(座長=東医大/睡眠総合ケアクリニック代々木・井上雄一氏,順大・臼井千恵氏)の模様を報告する。
慢性疼痛に対する精神生理学的評価の必要性を呼び掛けたのは,西原真理氏(愛知医大)。従来の器質的要因の検索と合わせて,背景にある心理社会的状況を含めた精神症状としての側面を評価する重要性に言及した。また,これまで困難であった痛みを客観的に評価するための戦略として,痛覚情報処理システムの異常の検出,痛み以外の感覚性過敏の生理学的評価,大脳皮質的変化の評価の3点を挙げた。
吉野敦雄氏(広島大)は,慢性疼痛に対して実施される集団認知行動療法について,オンラインでの実践を報告した。集団認知行動療法が普及しない一因に,難治性で定期的な受診ができず,治療アクセスが困難な患者が多く存在する点を指摘。加えて近年のコロナ禍の影響もあり,オンライン化が強く求められることから実践に至った。自施設における対面実施との比較から,オンライン集団認知行動療法の効果の高さを示すとともに,実施時の注意点として事前面談等で治療同盟を十分得るよう強調した。
続いて臼井氏が,侵害受容性疼痛,神経障害性疼痛に続いて国際疼痛学会が新たに定義した第3の痛み,nociplastic pain(痛覚変調性疼痛)を紹介。侵害受容の変容によって引き起こされる痛みを指し,原因は不明とされる。代表的疾患として線維筋痛症を例に上げ,薬物療法だけでなく認知行動療法や運動療法,音楽療法などの非薬物療法を併せて行うべきとの見解を示した。
この他,加藤隆弘氏(九大)が線維筋痛症とミクログリアの関連について,井上氏が慢性疼痛と関連してレストレスレッグス症候群について報告した。
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