医学界新聞

取材記事

2022.06.13 週刊医学界新聞(レジデント号):第3473号より

 第33回「理学療法ジャーナル」賞贈呈式が,2022年4月16日,Web上で開催された。本賞は,前年の1年間に『理学療法ジャーナル』誌に掲載された投稿論文の中から特に優秀な論文を編集委員会が顕彰し,理学療法士の研究活動を奨励するもの。2021年は22編(原著3編,報告9編,症例報告10編)が受賞対象となり,下記3論文が準入賞と奨励賞に選ばれた。

【準入賞】山科俊輔,他:保存療法中の変形性膝関節症患者を対象とした観察に基づく歩行異常性評価の構築に向けた研究――評価の項目特性,因子妥当性,併存的妥当性および検者間信頼性(第55巻第8号,原著)

【準入賞】近藤千雅,他:大腿骨頸部/転子部骨折術後における急性期リハビリテーションの費用対効用(第55巻第10号,原著)

【奨励賞】吉田啓志,他:自立歩行が可能な脳卒中患者における日本語版Physical Activity Scale for the Elderly(PASE)を使用した身体活動量評価の妥当性および信頼性の検討(第55巻第11号,報告)

 準入賞の山科氏らの論文は,臨床で主に用いられる肉眼の動作観察による評価指標の構築をめざしたもの。変形性膝関節症患者59例を対象としたビデオ観察から,歩行異常性評価項目について項目特性・因子妥当性・併存妥当性・検者間信頼性を検証した。結果,①立脚初期の足角の増大,②立脚初期の足部接地角の減少,③立脚後期の足関節底屈の減少,④立脚初期の膝関節内反の増大,⑤立脚中期の膝関節伸展の減少,⑥遊脚期の膝関節屈曲の減少,⑦立脚後期の股関節伸展の減少の計7項目の指標により,歩行異常性評価を定量化できる可能性を示した。周到に準備された研究デザインに基づき,科学的に適切な解析が進められた成果が明確に示されている点,国際的にも信頼性の高い臨床評価指標との比較がなされた質の高さが評価された。

 同じく準入賞の近藤氏らの論文は,研究例がまだ少ない,急性期リハビリテーションの費用対効用を検討したもの。大腿骨頸部/転子部骨折術後患者67人へのリハビリテーションによる増分質調整生存年と増分費用を求め,増分費用対効用比(ICUR)を算出。医療経済学的に有用とされる新規治療に対するICURの基準は約500~600万円以下であり,本研究においては464万円となったことから,急性期リハビリテーションの費用対効用が認められたと結論づけた。健康寿命の延伸により社会保障費が増大するなかで,これからの理学療法モデルを示す重要な研究の視点と成果であると評価された。

 『理学療法ジャーナル』誌では本年も,掲載された投稿論文から第34回「理学療法ジャーナル賞」を選定する。詳細については『理学療法ジャーナル』誌投稿規定を参照されたい。

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