医学界新聞

取材記事

2022.05.09 週刊医学界新聞(通常号):第3468号より

 日本国際賞(Japan Prize)の授賞式が2022年4月13日,帝国ホテル(東京都千代田区)で開催された。本賞は,「世界の科学技術の発展に資するため,国際的に権威のある賞を設けたい」との日本政府の構想を基に1980年代前半に創設。全世界の科学技術者を対象とし,科学技術の動向を勘案して決められた2分野の中で,独創的かつ飛躍的な成果を挙げ,科学技術の進歩に大きく寄与した人物に授与される。2022年は「物質・材料,生産」分野からカタリン・カリコー氏(独ビオンテック社)とドリュー・ワイスマン氏(米ペンシルベニア大)が共同で,「生物生産,生態・環境」分野からクリストファー・フィールド氏(米スタンフォード大)が受賞した。本紙では,4月15日に開かれたカリコー氏とワイスマン氏への報道各社によるインタビューの模様を報告する。

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日本国際賞を受賞したカリコー氏(左)とワイスマン氏

◆mRNAの医薬品応用に向けたブレークスルー研究が評価される

 今回の受賞につながった業績は,「mRNAワクチン開発への先駆的研究」だ。氏らは,実用化が困難とされていたmRNAの医薬品利用をめざし,1998年に共同研究を開始。mRNAを構成するウリジンを修飾核酸のシュードウリジンに置き換えることで,医薬品として体内に投与した時の望まれない免疫反応が抑制できることを発見(Immunity.2005[PMID:16111635])した。これにより医薬品応用の道が開かれ,2020年の新型コロナウイルスに対する迅速なワクチン開発に結実した。

 論文化からワクチン開発に至るまで十数年もの間,諦めずに研究を続けられた理由を問われたカリコー氏は,「自分を見失わず,いま取り組まなければならないことは何かを常に考えてきた。できないからといって,簡単に諦めたりはしない」と回答。今回の受賞に当たっては,「これまでmRNA研究に携わってきた関係者全員を代表してわれわれに与えられたもの」と語り,氏らの業績の基礎を形作ってきた多数の人々の功績を讃えた。

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