医学界新聞

取材記事

2022.04.04 週刊医学界新聞(通常号):第3464号より

3464_04_01.jpg
坂野仁氏

 第6回生体の科学賞の授賞者が3月3日,坂野仁氏(福井大)に決定した。同賞は金原一郎記念医学医療振興財団(理事長=上武大学長・澁谷正史氏)の基金をもとに,2016年度に創設。基礎医学医療研究領域における独自性と発展性のあるテーマに対して,研究費用全般への支援を目的に,1件500万円の助成を行うものである。

 今回は,坂野氏による「新生仔の臨界期に於ける神経回路形成の可塑的な環境適応とその障害」が受賞した。これまで,臨界期に受けた感覚入力がその動物の行動に生涯にわたって影響する刷り込み現象について,神経回路のどのような変化によって起こるのかは未解明であった。坂野氏は生後一週間以内のマウスにおいて,入力された嗅覚情報に対して誘引的価値付けが強く刷り込まれる点に着目。臨界期に与えられる嗅覚刺激に対し,シグナル分子のSema7Aと受容体分子のPlxnC1が発現,活性化することで嗅覚情報伝達経路が永続的に増強されると発見した。さらに,伝達経路が増強された嗅覚情報を好ましく判断する原因として,オキシトシンの関与を併せて指摘した。さらなる研究の進展によりヒトの社会的親和性の形成に関するメカニズムが解明されることで,自閉症や愛着障害など,精神発達障害の予防や軽減への応用も期待できる。

 金原一郎記念医学医療振興財団は3月3日,第36回研究交流助成金・第36回留学生受入助成金対象者として12人を選定した。同財団は基礎医学・医療研究への資金援助と人材育成を目的に,年に2回,助成金を交付している。下期である今回は,海外で行われる基礎医学医療に関する学会等への出席を助成する研究交流助成金,基礎医学医療研究を目的に日本へ留学する大学院生等を助成する留学生受入助成金が交付された。

No. 氏名 所属機関(略称) 助成対象
1 大江 知里 関西医大/病理学講座 米国・カナダ病理学会 第111回学術集会
2 大本 晃弘 がん研/病院/総合腫瘍科 米国がん学会シンポジウム2022
3 田中 修 朝日大学/放射線治療科 欧州放射線腫瘍学会総会
4 中村 勇太 金大/病院/整形外科 国際手外科学会と国際ハンドセラピィ学会と欧州手外科学会との合同会議 2022年
5 原 敏文 愛知学院大/薬

この記事はログインすると全文を読むことができます。
医学書院IDをお持ちでない方は医学書院IDを取得(無料)ください。

開く

医学書院IDの登録設定により、
更新通知をメールで受け取れます。

医学界新聞公式SNS

  • Facebook