医学界新聞


第41回日本看護科学学会学術集会の話題より

2022.01.24 週刊医学界新聞(看護号):第3454号より

 第41回日本看護科学学会学術集会(大会長=愛知県立大・百瀬由美子氏)が12月4~5日,「共創による新たな看護科学の可能性」をテーマにWeb配信形式で開催された。新型コロナウイルス感染症の流行以前,国内の外国籍在住者は増加の一途をたどっていた。パンデミック終息後を見据えた際,長期的には増加が予想される一方で特有の課題も多い。本紙では,シンポジウム「新型コロナ感染症時代における外国籍住民の保健医療課題」(座長=愛知県立大・柳澤理子氏,慈恵医大・中村美鈴氏)の模様を紹介する。

◆異なる文化を理解し,共に解決策を探る姿勢を

 座長の柳澤氏は冒頭,「コロナ禍により情報不足や,収入源を失い困っている外国人が国内に多くいる。看護職に何ができるか検討したい」と議論のねらいを述べ,各地で外国人対応に尽力する演者が発表を行った。

 最初に登壇した大谷かがり氏(中部大)は,豊田市内で2003年から取り組むブラジル人集住地域におけるフィールドワークから得た知見を報告した。外国籍の国内在住者の中でも,不就学児への保健医療サービスの不足に言及し,その保護者の不安定な雇用状況や日本語の習得状況が,医療アクセスへの障壁につながっていると分析。加えて国や地域により健康観への差があると指摘した。課題の解決に向けては,看護師をはじめ支援者が文化人類学などの他学問の研究者と協力し国内で暮らす外国籍在住者の生活や文化への理解を深め,支援に当たる必要があると主張した。

 新型コロナウイルス感染症の流行下で,在留外国人が医療にアクセスする際の課題を分析したのは沢田貴志氏(神奈川県勤労者医療生協港町診療所)。流行時期にかかわらず一貫して共通する課題として①言葉の壁,②医療費の問題,③生活習慣・文化への配慮,④外国人を支える地域ネットワークが未発達の4点を挙げた。今後求められる対策として,施設レベルでの医療通訳者の確保や当事者への健康情報の提供を挙げ,医療従事者が外国籍患者の置かれた社会背景を理解し,解決策を共に探る姿勢を持つ重要性を強調した。

 この他,呉小玉氏(京都光華女子大)が外国人看護教員の立場から日々の教育実践について,坂本真理子氏(愛知医大)が外国にルーツを持つ親子への情報伝達における課題を報告した。最後に柳澤氏が,「(シンポジウムで)多くの課題が提案され,これから手探りで解決に向かう段階にある。ぜひ外国籍の方々が抱える困り事に関心を持ち続け,一緒に課題解決に取り組んでほしい」と視聴者に呼び掛けた。

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