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『「型」が身につくカルテの書き方』より

連載 佐藤健太

2021.05.21

日々のカルテ記載が「何となく」の作業になっていませんか? カルテの重要性は認識しているものの,系統立てて学ぶ機会もなく,独学に頼らざるを得ない場合も多いはずです。こうした状況に危機感を抱いた佐藤健太氏は,10年の歳月をかけて見いだしたカルテ記載法とその指導法を週刊医学界新聞の連載『「型」が身につくカルテの書き方』にまとめました。同連載を基に大幅加筆された書籍より,「おまけの型」を2回に分けて紹介していきます。

 「医師の仕事は,患者急変が多いから予測困難で,時間管理も難しい」と言われがちです。しかし,ビジネス書などで学べるタスク管理ツールをうまく使えば,それなりの時間管理が可能となります。予測可能・調整可能な予定をきちんと管理することで,急変に対応する時間的余裕を生むことができますし,「今日はあと二つくらい急変があっても,あの空き時間を充てれば業務時間内に吸収して対応できる」という見込みを持ちながら働けるようになり,心理的にもかなり余裕を持てます。

 ここでは,筆者が普段使っている「病棟患者管理シート(以下,管理シート)」を紹介します。これが最良というわけではありませんが,本書で紹介しているカルテ記載法と連動しており,カルテ上の問題リストやプランを適宜転記していくだけでかなりの業務効率化が可能になると感じています。みなさんもこれを参考に,「自己流の患者管理・時間管理方法」を編み出してください。

病棟管理シート.jpg

病棟管理シートの例(クリックで拡大) 

横軸にプランを転記, 縦軸でToDoを把握

 横軸に1週間分の曜日,縦軸に担当患者名(紛失したときの個人情報流出リスクを考えるとイニシャルやIDだけのほうが望ましい)を記入してあります。担当患者の診療を行いカルテのP欄記載を終えたら,該当患者の行を横に眺めながらプランの転記をします。

 数日先のプランは該当日に,数週先のプランは欄外(特記事項欄を作るか,筆者の場合は土日の欄を利用)に転記しておくと,後で忘れてしまって実行しそびれることはまずなくなります。例えば,肺炎治療を開始した日に,「3日後に喀痰培養結果確認」というプラン立てた場合,これを3日間覚え続けておくことは比較的労力を要し,担当患者数が増えてくるとかなり難しくなってきます。しかし,その患者の3日後の欄に「喀痰培養結果確認」と書いておけば,あとはいったん忘れてしまっても全く不都合はなく,該当日の朝にリストをみて思い出せば十分です。「覚えておくこと」を減らせるぶん,限られた脳の余力を「考えること」に割くことができるので,業務の質も効率も向上します。

 一日の始まりには,その日の列を縦に眺めながらToDoを把握します。全体としての空き時間(自由に動ける時間),タスク量(ToDoの数と質)を見て,優先順位を意識しながらその日の段取りを考えます。

 例えば,検査結果が11時ごろに出て,指示出しの締め切りが14時の病棟であれば,午前中が病棟単位(検査・処置,患者面談の予定なし)の場合は「9時から11時はフリーなのでその間に今日担当する新患の診察とカルテ記載をして,11時になってから他の担当患者の検査結果を確認して12時くらいまでには指示の修正を終える」といった段取りを組めるはずです。逆に午前中が検査・外来などで身動きが取れない場合は,12時から14時に指示出しに関わる業務(検査結果確認と点滴指示修正など)に絞って急いで取り組み,調べ物や患者面談,複雑な事例の検討などは14時以降にじっくり取り組むように配置することも可能です。

 実施したプランは斜線で消し,その患者についてやることを全てクリアしたら右上のボックスに「/」,カルテ記載を終えたら「\」,全患者のボックスに「×」印がついたらその日の業務は終了と考えて,自習や帰宅可能になります。多忙や体調不良,用事などで全てに「×」が付く前に病院を離れる必要がある場合は,未処理のプランを翌日に転記し,翌朝は転記したものから手をつけると病棟業務上は支障が出ません。逆に,予定より早く仕事が終わったものの,まだ勤務時間内で帰れない場合は,明日以降の予定を先に消化してもいいですし,「急がないけど重要なことリスト」(後述)を眺めて学習課題をこなしてもよいと思います。

医師業務を意識した欄外記載と 管理シートの更新・運用

 ここまでは一般的なビジネス書に書いてあるようなToDoリストやタスク管理方法とほぼ同じですが,医師の業務を意識した工夫としては以下のような記載があります。

1)「問題リスト」
 患者名だけでなく「問題リスト」も記載することで,「どんな患者を担当していて,サボっている課題が何なのか」をすぐに把握しやすくなります。カルテ上で問題リストを深化させたときには,管理シートにも反映させるとなお使いやすくなります。
 

2)「動かせない固定の予定」
 欄外にカンファレンス・会議,外来や検査・処置単位など「動かせない固定の予定」も表示しておくと,それ以外の「空き時間」が浮き出てきます。ひと目で一日の自由時間を把握しやすくなりますし,急に新しい予定が発生したときも速やかに空き時間に組み入れられます。医師の仕事は意外とルーチンの動かせない業務が多く,そのスキマで多彩な業務をこなす必要があるため,これはかなり効果的です。
 

3)「急がないけど重要なことリスト」
 「急がないけど重要なことリスト」を欄外に作っておくと,予定キャンセルによって突然発生したスキマ時間を有効活用しやすくなります。具体的には,学習したいこと,指導医に調べるよう言われたこと,手紙作成・他科コンサルト,担当学習会・抄読会の発表資料作り,サマリー未完成患者など「忘れやすいけど重要」なことや「急がないが今週中に済ませたい」ことを登録しておくと便利です。臨床以外の業務はどうしても後回しにしがちで,結果としていつまでも勉強ができなかったり,重要な発表のための資料作成が直前追い込み型になりやすいため,この工夫も有用です。

 筆者の場合,管理シートの更新は1週間単位でやっています。毎日やれればいいのでしょうがそこまでの時間はなかなか取れないですし,1か月単位だと急性期病棟患者の管理としては役に立たず,いろいろ試行錯誤した結果,1週間ごとの更新がベターと感じています。

 流れとしては前の週にExcelで入力したシートを印刷して持ち歩けるようにします。1週間の間に退院した患者名は斜線で消し,新規担当した患者名や問題リストの追加・深化は手書きで記入します。1週間の終わりには手書き分をExcelで入力・削除して再度印刷します。以前は手書きでやっていましたが,Excelベースで管理したほうが,前週から入院している患者の情報や自習持ち越しのToDo,「急がないけど重要なことリスト」などを再転記する手間がなく便利でした。また患者情報については,Excel上では退院患者分も削除せずに追記を続け,印刷するのは現入院患者分だけという設定にすれば,数か月後には巨大な担当患者データベースができるため後々の研究にも流用できます。

 印刷した管理シートは,他の重要書類(外来体制表や当直予定表などの医師体制に関する情報や,入退院予定表や空床状況予想など病床管理に関連する情報)とともに書類バインダーに挟んで肌身離さず持ち歩くことで,「院内で発生した業務管理に関連する資料は全部ここに入っている」状態となり,ほかの業務中に突然声をかけられたりPHSが鳴ったりして新規で発生した案件もスムーズに処理できます。

 なお,書類をとじるバインダーについては,自分の白衣のポケットに入るサイズで,かつ重たすぎず,さらに言えばある程度しっかりした作りのものがオススメです。見た目にゴージャス感がある方が,気の進みにくいタスク管理も少しはやる気になります。裏表紙にある程度の硬度があれば,それを下敷きにして立ったまま書き込みができます。落としたときには床にぶつかる音で気がついたり,安易に捨てられずに手元に戻ってきたりすることも多かったです(ストラップを付けて白衣に固定するのが最も手堅いです)。

病棟患者管理シートの雛形は下記をぜひご活用ください。

病棟患者管理シート 雛形(作:Shoei氏)

 

「型」に沿って記載するだけで診療効率&診断推論能力がアップする!

<内容紹介>「週刊医学界新聞」の人気連載を書籍化。「基本の型」の部で,SOAP形式や問題リストなどのカルテ記載法のエッセンスを習得(⇒医師らしい思考過程も身につく)。「応用の型」の部で,外来・救急などセッティング別のカルテ記載法を習得(⇒応用の利く「型破り」な診療スタイルも身につく)。「型ができていない者が芝居をすると型なしになる。型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる」(by 立川談志)。

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