医学界新聞

取材記事

2021.11.29 週刊医学界新聞(通常号):第3447号より

 第29回総合リハビリテーション賞の受賞者が決定した。本賞は,『総合リハビリテーション』誌編集顧問の上田敏氏が東大を退官する際(1993年)に金原一郎記念医学医療振興財団に寄付した基金を原資として発足。今回は2020年発行の同誌に掲載された投稿論文25編を選考対象とし,最も優れた論文に贈られた。なお例年9月に開催されている贈呈式は,COVID-19の影響を考慮し昨年に続いて中止となった。

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写真 長尾恭史氏

 受賞論文は,長尾恭史氏(岡崎市民病院/言語聴覚士)他による「急性期重度嚥下障害患者に対する完全側臥位導入による帰結の変化」[総合リハビリテーション.2020;48(6):567-72.]で,原疾患が脳卒中以外の嚥下障害症例に対し,代償的姿勢の選択肢に完全側臥位法を取り入れたことによる嚥下障害の改善との関連を明らかにしたもの。

 対象は,入院前は摂食状態スケール(ESS)4以上(調整の上経口摂取可)であったものの,脳卒中以外の原疾患により入院後,摂食・嚥下障害重症度分類(DSS)2以下(食物誤嚥レベル)の嚥下障害を認める58人を抽出。嚥下内視鏡検査の評価姿勢の1つとして完全側臥位を導入して以降(2016年4~9月)の37人を側臥位導入群,導入以前(15年4~9月)の21人を未導入群に分類し,両群の嚥下障害改善状況を診療録から比較した。退院時ESSは側臥位導入群が有意に改善し,退院時に経口摂取が主となる症例数も有意に増加した。また,側臥位導入群では82.8%が経口摂取の際に完全側臥位を選択していたものの,うち72.2%は退院時に完全側臥位でなくとも経口摂取が可能になったという。長尾氏らは,急性期重度摂食嚥下障害に対する代償的な体位として,完全側臥位を選択肢に含めることで良好な帰結を得られる可能性が示唆されたと結論付けた。

 『総合リハビリテーション』誌編集委員を代表して藤谷順子氏(国立国際医療研究センター)は,「嚥下障害患者の経口摂取や訓練の代償的姿勢として完全側臥位法の有用性が近年提唱される一方で,急性期施設での利用やその効果についての報告は見られなかった。その有用性を適切な方法で示した本研究は,今後の急性期嚥下障害診療に大きく寄与する優れた臨床研究である」と講評した。受賞の報告に対し長尾氏は,関係者への感謝を述べるとともに「食べる喜びを取り戻せる患者さんを増やすため,今後は急性期医療における完全側臥位の有効性を他院とも共有し,地域連携に力を入れたい」との抱負を寄せた。

 『総合リハビリテーション』誌では2021年にも,同年に掲載された投稿論文から第30回総合リハビリテーション賞を選定する。詳細については,同誌投稿規定を参照されたい。